汚された少女[不祥事]
前回までのあらすじ
初ライブ、終了
AD「はいじゃあCM明けま~す!3、2・・・・・・」
真織「めざめしテレビをご覧の皆さん、おはようございます!」
3人「New Desiresです!」
初ライブから1週間、New Desiresは多くのメディアから注目されるようになった。新聞やアイドル総合誌、先の早朝ニュース番組への出演もその1つだ。
三者三様の媒体、だが彼らはすべからく同じことを口にする。『重傷だろうが、ステージに立つ』、その意志を讃えるものであった。
New Desiresは、あのライブで圧倒的なインパクトを与えた。アイドルファンだけでなく、業界関係者も注目せざるを得ないほどに。ライブは大成功と言うほかなかった。
番組出演後
P「お疲れ様です。皆さん」
ルナ「ふぅ~緊張したぁ・・・」
真織「なんか、カチコチしてたな。ルナ」
ルナ「だって、生放送に出るなんて初めてなんだもん!」
真織「ま、そうだよな。初めての生放送で恥じらいもなく『いちゃラブ』ってワード発しようとする方が異常だよな・・・」
りんね「む。わらわになにか問題が?」
真織「朝の情報番組で生々しいワードを出すなって言ってんの」
りんね「む。朝から幸せな気分になれてよいではないか?」
ルナ(悪気がないってのがむしろタチ悪いな)
P「次は雑誌の取材です。30分後に出発しますが、皆さん腕の調子は大丈夫ですか?」
3人「大丈夫」
P「そうですか。まだ完治していないので、くれぐれも無理だけはしないでくださいね」
真織「無理するっつーの。だってライブで無理したから、今があるんだろ」
P「っ!」
真織「・・・ありがとうな、プロデューサー。私たちを信じてくれて」
ルナ「ありがとうございます!」
りんね「感謝するぞ。竹内」
P「・・・」
P「私も、皆さんを信じてよかった」
P「あなた方3人を、心から誇りに思います・・・!」
6/17(月)3:00
456プロダクション事務所
ゆとり「ルナちゃん、今夜空いてる?」
ルナ「え、どうかしましたか?」
ゆとり「ごめん。今夜ね、友達が誘ってくれたパーティに行くつもりだったんだけど、急な用事が入っちゃってさ。もう参加費も払っちゃったし、せっかくだからルナちゃん、私の代わりに行かない?」
ルナ「えっ・・・私なんかが代わりでいいんですか?」
ゆとり「全然いいよ!じゃあ詳しい集合場所はまた連絡するね!」
ルナ「は、はい。ちなみに、それって何のパーティなんですか?」
ゆとり「なんか、友達が務める新聞社の会合パーティって言われたんだけど、正直あんまりよくわかってないんだよね。まぁ特に何かしなきゃいけないってワケじゃないよ?ただ会場で美味しい料理でも食べてればいいから!」
ルナ「わかりました。じゃあ一応プロデューサーさんにも連絡しておきますね」
ゆとり「あぁいいよ。私から連絡しておくから」
ルナ「ありがとうございます!」
19:00
都内・雑居ビル前
ルナ(ゆとりさんが言うには、ここがパーティ会場らしいけど・・・)
???「西覇王ルナさん・・・ですね?」
ルナ「っ、はい!?」
幹事「お待ちしておりました。私今夜のパーティの幹事を務めます、渋谷と申します。渋谷幹事」
ルナ「・・・え、『幹事』っていう名前なんですか?」
幹事「そうなんです。この名前のせいでこれまでの人生、幹事ばかりやらされておりまして・・・まったく、親を恨みたいですよ(笑)」
ルナ「そ、そうなんですね。あっ、えと私、形無ゆとりさんの紹介で・・・」
幹事「えぇ、存じ上げております。では、中にお入りください」
雑居ビル・4階[パーティ会場]
幹事「こちらが会場です。開始までもう少し時間がありますので、どうぞご自由になさってください」
ルナ「は、はいっ」
ルナ(・・・。なんか薄暗い会場だなぁ。新聞社のパーティって、もうちょっと明るいイメージだったんだけど・・・『百聞は一見に如かず』ってやつ?)
???「あなたが、西覇王さん?」
ルナ「へっ、そうですが・・・あなたは?」
星井「あぁゴメンゴメン。ゆとりの友達の星井だよ」
ルナ「あぁ。ゆとりさんをパーティに誘った・・・」
星井「そーゆーこと。ゴメンね、急に代わってもらっちゃって。てかギプス巻いてるけど、左腕どしたん?骨折?」
ルナ「はい。先週のライブでちょっと無理して・・・」
星井「そっか、たしかルナちゃんはアイドルやってたんだっけ。まー無理しないで!知らない人ばっかで緊張するだろうけど、なにかあったら私に話しかけてね!」
ルナ「はい、ありがとうございます。あの、たしか星井さんって新聞社の人でしたよね?」
星井「んー、そうだけど。どしたん?」
ルナ「いや、さっきから会場にいる人が男の人ばかりで・・・それもガタイが良かったり、チャラついていたり、言ってしまえば怖そうな人ばっかりなんですが」
星井「・・・」
ルナ「新聞社関連の人たちって、みんなそんな感じなんですか?」
星井「うん、そうだよ。そーゆーもん」
ルナ「そ、そうですか。ちなみに星井さんは・・・」
星井「そろそろ始まるよ、開会のあいさつ」
ルナ「へっ、あ、はい・・・」
星井「・・・」
幹事「それではこれより、三代新聞社創刊50周年記念パーティを執り行います。ではまず、会長の三代より、あいさつがございます」
ルナ(・・・『三代新聞社』?聞いたことないけど、どこの新聞なんだろ。調べてみよ)
ルナ「えーと、み・し・ろ[スマホ操作]」
星井「・・・ルナちゃん」
ルナ「っ、はい!?」
星井「こういう場では、携帯の電源は切るかマナーモードにすること。これ、常識よ?」
ルナ「す、すみません!」
星井「これも社会勉強よ。ほら、早く消しなさい」
ルナ「あ、はい・・・[電源OFF]」
星井「ったく」
ルナ(星井さん、なんか急に怖くなった・・・さっきまですごい優しそうだったのに)
ルナ(それになんだろう。すごく、嫌な予感がする・・・)
パーティ開始より30分経過
ルナ「・・・」
???「ねぇ君」
ルナ「え、なんですか?」
???「いや。さっきから料理にも手を出さないで、ずっと退屈そうにしてるから声かけてみたんだけど・・・」
ルナ「うぅ、わざわざすみません。こういう所、慣れていなくて・・・」
中野「そっかー。ま、何事も最初は緊張しちゃうよね。あ、ゴメンゴメン、名乗ってなかったね。僕は中野。三代新聞社で営業をやってます!(ニコッ)」
ルナ(爽やかイケメンだ。私の前に爽やかイケメンがいる)
ルナ「・・・あ、わたし西覇王ルナといいます」
中野「西覇王・・・あ、もしかしてあのNew Desiresの!?」
ルナ「は、はい!ご存じなんですか!?」
中野「もちろん!最近話題になってるしね。新聞記者たるもの、そういう情報には精通してるんだ」
ルナ「そうなんですね、うれしいです!」
中野「僕も応援してるよ!そうだ、喉乾いたでしょ。持ってくるけど、なにがいい?」
ルナ「あ、はい。じゃあウーロン茶で」
中野「・・・ウーロン、茶ね。じゃあ待ってて」
ルナ(よかった。怖い人ばっかりで緊張してたけど、あぁいう爽やかな人もいるんだなあ)
男A「でよー、先月の儲けたったの500万でよ」
男B「マジ?結構減ったなぇ~」
ルナ(・・・!?)
男A「いい加減新しい『事業』始めねぇとな」
男B「そうだな。でもウチの客には手出すなよぇ~」
男A「あぁ。多分なw」
男B「おぅおぅ『多分』たぁ聞き捨てならねぇなぇwww」
ルナ(後ろの男の人たち、さっきからなんの話をしているの・・・儲けが500万って、まさか1か月の収入が500万円だったってこと・・・!?)
ルナ(新聞社の人って・・・そんなに儲かるものなの?いや、待て。そもそもこの人たちが新聞社関係の人という確信もないし・・・)
???<・・・いや、気づけよ>
ルナ「っ!?」
ルナ(なに、今の声・・・女の人の声だったけど、周りには男の人しかいないし・・・。それにちょっと、聞き覚えがあったような気がする・・・)
中野「西覇王さん」
ルナ「っ、はい!?」
中野「おまたせ、持ってきたよ[ドリンクを手渡す]」
ルナ「っ、ありがとうございます」
中野「大丈夫?顔色がよくないけど・・・」
ルナ「い、いえっ。大丈夫です[ドリンクを飲む]」
ルナ「・・・うっ!!!?」
中野(・・・。)
ルナ「ゲホっ、ゲホ・・・っ!!!」
中野「どうしたの、西覇王さん?」
ルナ「ぅぐっ・・・な、中野さん、これって・・・?」
中野「うん。ウーロンハイだよ」
ルナ「ど、どうして・・・私、未成年なのに・・・!」
中野「あぁ、そうだったね。ゴメンゴメン。取り換えてくるよ。今度こそ、ウーロン茶と」
ルナ「はぁっ・・・はぁっ・・・!」
中野「そういえば、さっきもテレビでやってたよ。君たちNew Desiresの特集」
ルナ「・・・?」
中野「絶好調なのに残念だね。今日でおしまいだなんて」
ルナ「!?」
中野「じゃあね、西覇王さん」
ルナ「・・・」
ルナ(・・・そうか、そういうことね。腑に落ちない点がいくつもあった。でも、ようやく確信した)
ルナ(これは、私たちを嵌めるための罠だったんだ・・・!)
???<気づくのがおせーんだよ。ルナ>
ルナ「っ、誰!?」
ルナ(・・・いや、今はどうでもいい。早くここから出ないと!)
雑居ビル・東エレベーター内
ルナ(あのパーティには、New Desiresを貶めようとしている人がいる・・・あの中野って男が主犯なのか、それとも彼を操っている人物がいるのか・・・?)
ルナ「そうだ、プロデューサーさんに連絡しないと!!」
電話[発信]
ルナ「・・・もしもしっ、プロデューサーさん!!」
電話[ただいま、電話に出ることができません。御用の方は、ピーっと鳴りましたら・・・]
ルナ「どうして、こんな時に限って・・・!」
ルナ(いや仕方ない、一刻も早くここを離れないと・・・)
1階 雑居ビル前
ルナ(事務所に向かおうにも、かなり距離がある。タクシーでも拾おうか?)
ゆとり「・・・あら、どうしたのルナちゃん」
ルナ「っ、ゆとりさん!?どうしてここに?」
ゆとり「用事が早く終わって、心配で様子を見に来たんだけど・・・もう終わったの、パーティ?」
ルナ「いえ終わってません!ちょっ、聞いてくださいゆとりさん、あのパーティには私たちを嵌めようとしている輩が・・・」
ゆとり「落ち着いて。よくわかんないけど、とりあえず場所を変えましょう。さ、私の車に乗って」
ルナ「は、はい・・・!」
プリウス車内
ゆとり「そう、そんなことが・・・」
ゆとり「ゴメンねルナちゃん、変なことに巻き込んでしまって。怖かったでしょう?」
ルナ「・・・はい」
ゆとり「もう心配しないで。私がついているわ」
ルナ「はいっ!!」
ゆとり「・・・」
ルナ「あっ、そういえば。さっきからプロデューサーさんに連絡してるんですが、なかなか繋がらないんです・・・何か知りませんか?」
ゆとり「変ね。あの人は基本、すぐに電話に出てくれるんだけど・・・お風呂にでも入ってるんじゃない?」
ルナ「そっか。そういう時間ですもんね・・・」
ゆとり「・・・」
ルナ「・・・あれっ、事務所って反対方向じゃないですか?」
ゆとり「そうね。反対方向よ」
ルナ「事務所に行くんじゃないんですか。どこに向かっているんですか?」
ゆとり「警察署よ」
ルナ「・・・えっ、どうして?」
ゆとり「だって、未成年飲酒をしている人がいるんですもの。そんな不埒者はさっさと警察に届けないと、いけませんからね」
ルナ「ちょっと待ってください!さっき言ったじゃないですか、間違えて飲まされたって!!」
ゆとり「そうね。でも大人は、そんなこと信じてくれるかしら?過去に少年院にぶち込まれた、あなたの言葉なんて・・・」
ルナ「・・・っ。ゆとりさん、あなたは味方じゃないんですか?」
ゆとり「一言も言ってないわ、あなたの味方だなんて」
ルナ「まさか・・・あのパーティに参加させたのは、このためだったんですか!?」
ゆとり「・・・」
ルナ「あの中野とかいう男を操り、私にアルコールを誤飲させたのはあなたなんですね!?」
ゆとり「あなたがそう思いたければ、そう思っていればいいわ」
ルナ「ちぃっ・・・!!」
ルナ[プロデューサーに発信]
電話[ただいま、電話に出ることができません。御用の方は、ピーっと鳴りましたら・・・]
ルナ「くそっ、こんな大変な時に・・・!早く風呂から上がってよ・・・!!」
ゆとり「無駄よ。プロデューサーさんは電話には出ないわ」
ルナ「っ!」
ゆとり「だって、私が持っているんですもの[Pの携帯を見せつける]」
ルナ「きっ、貴様ぁぁぁぁ!!!」
ルナ「うぅっ・・・!?[倒れこむ]」
ゆとり「ようやく、薬が効きはじめたようね」
ルナ(ま、まさかあのウーロンハイに・・・!?)
ゆとり「残念ね。これであなたは、私に殴りかかることもできない」
ルナ「ちく・・・しょ、う・・・!」
ゆとり「じゃあねルナちゃん。そして、New Desires」
ルナ「ぅ・・・」
ルナ「」
ゆとり「不祥事、成立よ」
翌日、New Desiresのメンバー西覇王ルナが、反社会的勢力の集まる会合に参加し、さらに飲酒をも行っていたという事実が、公に発表された。
嵌められたという彼女の主張は、誰一人信じてくれなかった。そして、誤って上塗りされたNew Desiresにとって都合の悪い情報だけが、世間に広まった。New Desiresは終わったのだ。
結成から2か月。あまりにも早すぎる幕切れであった。
アイドルバスター 印税の偶像
終
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???「不祥事で解散とは、まさかの展開だったな」
???「奴らが現れた時は少し肝を冷やしたが、消えてくれて正直ホッとしてるよ」
???「西覇王くんを陥れた通報者がいるとも噂されているが・・・そいつには感謝しなければならなんな」
???「・・・ところで、こちらの進捗はどうだ。形無くん」
ゆとり「はい。全て計画通りです」
???「よし。New Desiresとかいう不純物に邪魔される所だったが、やはり神は我々に味方してくれている・・・!」
???「そうだ。王道を歩んでいいのは、常に王道だけだ」
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