ススメ→根性論[初ライブ②]
前回までのあらすじ
全員、骨折
東京ドーム 関係者席
[New Desires 初ライブまであと10分]
社長「やあ竹内くん」
P「あっ、社長。いらしていたんですか?」
社長「もちろんだとも!アイドル界に一石を投じる、ウチの新生アイドルの初ライブだからな。プロダクションの社長として、新たな歴史が生まれる瞬間の立会人とならなくてはならん!」
P「そ、そうですよねぃ・・・」
社長「それにしても・・・他のアイドルのパフォーマンスはどれも凡夫だな。どれもありきたりの量産型アイドルだ。ウチのニューデザには到底敵わんよ。なぁ、竹内くん」
P「も、もちろん・・・!」
社長「・・・」
社長「どうした。何か浮かない表情をしているが、なにかあったのか?」
P「いいえ、なにも・・・?」
社長「とぼけるな。私は、何十年にわたって何百人という人間を見てきたから分かる。君は何かを隠している。一目瞭然だ」
P「ぅ・・・」
社長「言え。歴史的瞬間を前に、わだかまりを残しておくのは互いに好かんだろう」
P「・・・」
社長「それに、あくまで我々の心の問題だ。言おうが言わまいが、彼女たちのパフォーマンスに影響など出んのだから安心して・・・」
P「骨折しました」
社長「」
社長「は?」
P「New Desires、3名全員・・・骨折しました!!!」
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1時間前
メディカルルーム
真織「さっき骨折してきた」
P「」
ルナ「骨折してきたって・・・自分で折ったんですか!?」
りんね「そうじゃが?」
P「ぐにゃあっ・・・!」
ルナ「あぁっ、プロデューサーさんがカイジみたいな顔に!?」
※カイジ・・・某ギャンブラー。よく泣く
りんね「ざわ・・・ざわ・・・!」
P「な、なにやってんですかあなたたちは!?なんでわざわざ骨を折りにいくんですか!?」
真織「だって、ルナが骨折したから・・・」
P「だとしても自ら折りにいく必要がどこにあるんですか!?ていうかどうやって折ったんですか!?」
真織「私はハンマーで」
りんね「わらわは階段から落ちて」
P「仮にもアイドルが取る行動じゃない」
真織「でもなプロデューサー。これが私たちの覚悟なんだぜ」
P「えっ?」
真織「本番前に、ルナが怪我をした。だがそれはルナの怪我じゃねぇ、私たち3人の怪我だ」
りんね「うむ。同じ痛みを共有できない限り、わらわたちはライブで1つになることはできん。この痛みは、わらわたち3人が1つになるための痛みであり、3人でライブに出るという覚悟の証明じゃ」
P「・・・」
真織「だから安心しろよ、ルナ。お前は1人じゃない」
ルナ「お2人とも、私なんかのためにここまで・・・」
真織「こうでもしないと、お前が胸を張ってライブに出られないだろ?」
ルナ「うぅっ、真織さぁん・・・!!」
りんね「ふっ。ライブの前に泣くやつがあるか、莫迦者」
ルナ「りんねさぁん・・・!」
医者「ちょっ、待ちなさい君たち!なんか勝手に話進めてるけど、そんな重傷でライブに出られるわけがないだろう!?」
真織「出るから言ってんだよハゲ」
医者「誰がハゲじゃ貴さっ・・・いや、今はキレてる場合じゃないな。オホン!あのね、出るか出ないかを決めるのは君たちじゃないんだ。少なくとも、目の前で骨折しているアイドルをライブに出させるなんて、医者として許可できない!」
りんね「ちとやかましいぞ、ハゲ」
医者「ぐぁぁぁっっ一度ならず二度もハゲと・・・しかし今は落ち着け、私。まだ怒るな・・・今は冷静に、だ・・・!とにかくやめなさい!怪我が悪化して、今後に影響が出ることになるぞ!」
真織「いま大事なのは未来じゃない。『今』だ」
医者「グェェェなんじゃそれぇ・・・というか、プロデューサーさんからも言ってやりなさいよ!ライブに出るのは無茶だって!!」
P(・・・。)
P「そうですね。とてもじゃないが、3人ともライブに出られる状況ではありません」
真織「んだよ、私たちが信じられねぇってのか?」
P「当たり前です。あなたたちが言う解決策なんてものは、ただの机上の空論。現に、今あなたたちは左腕を挙げることすらできない。そんな状態でパフォーマンスになるとでも?」
真織「やるっつったら、やるんだよ!」
P「はぁ・・・理論もへったくれもない、根性論の極みですね」
医者「ほら見なさい!責任者である彼がこう言っているんだ。分かったら黙って、安静にしておくんだ!!」
真織「ぐっ・・・」
P「・・・でも、嫌いじゃありませんよ。そういうの」
ルナ「っ!」
P「後先のことなんて何も考えないで、今をがむしゃらに突き進む・・・根性論とは、あなたたちのためにあるような言葉かもしれません」
医者「な、何を言っているんだ君は!?」
P「金木さん、西覇王さん、園田さん・・・」
P「覚悟は、できているんですね?」
真織「当然だ」
ルナ「がんばりますっ!」
りんね「以下同文じゃ」
P「では、戻りましょうか。楽屋に」
医者「ま、待てっ・・・骨折している患者に無理をさせるなんて、医者として許すわけにはいかない!!!」
P「いいえ。彼女らは、患者ではありません」
医者「・・・?」
P「『New Desires』です」
医者「は?」
P「では、失礼します」
医者「・・・」
医者(この道20年。医者として多くの患者を診てきたが・・・どうやらこの世界には、患者なんてカテゴリーで分類できないバカがいるんだな。型にはまっていては、見えないものもあるのかもしれない・・・)
医者[タバコに火をつける]
医者「ふぅ・・・」
医者「・・・」
医者「美味ェ」
~~~~~~~~~~~~
P「・・・ということがありまして」
社長「・・・」
P「最終的に許可を出したのは私です。もしもこのライブで何かあったら、それは私の責任で・・・」
社長「もういい」
P「っ!」
社長「今はステージに集中しろ。長々しい謝罪は、あとでたっぷり聞いてやる」
P「ですが・・・」
社長「今更何をどう言ったって、結果は変わらないだろう。我々にはもうどうしようもない。『Show must go on』だ・・・!」
P「・・・」
社長「それに、君は見たんだろう。彼女たちの覚悟を」
P「!」
社長「そしてプロデューサーである君は、その覚悟を信じた。ならば、何も問題はないだろう?」
P「・・・はい!」
社長「ふっ、それでいい。君が信じたアイドルたちの姿、しかと目に焼き付けようじゃないか」
P「・・・」
P(頼みましたよ、3人とも・・・!)
司会「続いてのアイドルはぁ~~~~なんと今日が初の舞台!!!結成からわずか2ヶ月!!!456プロの期待の新星、『New Desires』だァ~~~~!!!!!」
観客「おおおおおおおおお!!!!」
真織「・・・よし、いくぞ。せ~の」
真織「金!!!」
ルナ「暴力!!!」
りんね「S〇X!!!」
3人[舞台下からステージに飛び出す]
観客「「「うぅおぉぉおおおおおおお!!!(大歓声)」」」
ルナ「ほっ(着地)」
りんね「はっ(着地)」
真織「へっ(着地)」
「グキッ」
真織「ぎゃあああああああ!!!」
観客「!?」
真織「足グネったあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
次回、満身創痍ダンス・・・!




