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女性の復讐――それ即ち男女同権

作者: 無機名

 これは、ある討論会で行われた、問題提起人の演説。その速記録。

 ここで演説する提起人――男は10年ほど前、文壇・論壇の世界において多少の話題となり、脚光を浴びたのだが、およそ5年前に男女同権・女権拡張論……所謂フェミニズムに対して反旗を翻す投書したことで、業界を干されてしまった。

 若いながらも、歳に合わぬへそ曲がりな物書きを、どっちにとって幸か不幸かわからぬが、討議・討論会の主催者達が憶えていて、たとえ今は忘れ去られていても、一時の人であった彼がいれば盛り上がるだろうと招集した。

 一方の誘われた食い詰め者な物書きは、悩んだ素振りで「飯のタネに……」と言って、討論会に出てきた。

 これは、それぞれの思惑の中で行われた意見表明の速記録である。


〈速記録〉


 えー、この度、こちらの座談会。ああ、いや、パネルディスカッションにお誘いいただき、まずは主催者様に御礼を申し上げます。

 こちらの会場にいらっしゃる方、大凡はご存知でしょうが、わたくし、かれこれ5年ほど前に、男女同権について物申しましたところ、業界から干されてしまった。そんな、しがない物書きであります。

 仕方なしに風雪に耐え、時間を経て――(これはいよいよ故郷の畑仕事が私のついの仕事に成るだろう)と諦観を抱いていた中、この様な場に呼ばれたことは複雑に思いながらも、発言の場をいただけたことを嬉しく思う次第です。

 まず、弁明をさせていただくこと、お許し頂きたい。

 それは、私にとっての契機と……問題となりました投書についてです。趣旨は皆さんがご存知の通り、フェミニズムへの反旗なのです。が、あまりに制約が……さしずめ、文字数が少なかったがために、きちんと説明できていなかった。という忸怩じくじたる思いがあるのです。


(場内のどよめき)(1分ほどの時間)――と追記されている。(以下略)


 あー、よろしいでしょうか?では、静聴を願います。

 そも、我が国に置いて、男女の仲、その力関係とは、いかなるモノであるか……であります。

 まずは、皆様の歴史に関する認識とはいかがものでしょうか?

 封建的な時代であったとされる江戸時代の様な『女は男より三歩下がって歩くべし。あるいは、夫の影を踏まず……』というような印象をお持ちなのでしょうか?それがずっと続いてきた……と。


 実のところ、それは一時代……あくまでもホンの100年単位の出来事なのです。1000年の単位で営々と続いてきたモノに及びません。その歴史においてはおおよそ、女性の方が強かったのです。

 ……驚かれましたか?けれど、そうなのです。

 その手に関する、ちょっとした論説本をお読みいただければわかります。……それではいけませんね。この場においては、具体的なモノを上げるべきでしょう。

 ここに21世紀に入ってから、海外の留学生がウェブじょうげたレポートがあります。要約をしながら少し読み上げましょう。

『古代から平安時代……男女の地位はいかなるものだったか。家の中心は女性だった。男性は15から17に成ると、婚姻相手を探した。親類が探した事もあった。相手の女性が了承すると、生活は女性の家で行うように成る』

 えー、つまり、家督相続権は女性にあったのです。

 また――『育児、教育は女性、女性の家系、その親兄弟が行った。男性は複数の女性のもとに通うこともあった』……要は、男の役割とは種付けですね。あと、ついでに、野良仕事ですか……これは今の私です。


(場内に苦笑の空気)――と追記


 ようやく『8世紀頃になって、父親が娘の婚姻に口をだすようになった』――畢竟、それまで男には家のことで発言権が、あまり無かったということに思えます。


(再び、どよめく会場)――追記(以下略)


 ……よろしいでしょうか?

 子供の養育、娘の結婚、宗教上の信託を受ける巫女、尼。これらの地位からすると、民草であればあるほど日本社会は母系制社会だったのです。

 先に言ったように、8世紀くらいから少しは男が家の事情に加わるようにはなりましたが、11世紀……平安時代の書物:源氏物語を読めばおわかりでしょう。権力の移譲は男系であっても、やはり男は通い婚であり、家屋の相続は女性でした。――奥様というのは、これらから言われていたことでしょう。

 時の権力者、藤原道長が娘を天皇に嫁がせることで権勢を振るう……それは風習の現れと言っても良いかと思います。

 もう一度、言います。日本社会は母系制社会だったのです。


 そんな社会は、皆様が知る武力による支配。武士の台頭の時代となって、少しずつ変わります。

 戦場という場は否が応でも死ぬことになります。ならば、男はいつ死ぬかわからなくなりました。また、戦場に女性が行くことは力関係で不利でありますし、陵辱りょうじょくの憂き目に遭うことが見込まれる。

 なによりも、女性ならではの出産。十月十日とつきとおかの妊娠を戦闘不能期間と言い換えれば、自ずと当主には男を立てようとする空気が生じます。

 人生が長くて50年、並と言えば30年で十分と言える時代なのですから、その中で約1年と言う期間は、今から見れば損失は遥かに大きく重いモノだったことでしょう。ですから、当主には男が置かれるようになりました。

 さらに言えば、散々戦争に明け暮れた欧州、及び中華大陸は、当然ながら社会基盤は男尊女卑なのですから、これは自然の流れと言って良いかと思います。

 ならば、武士が生じた時代からは男尊女卑だったのか?そんなご意見が有るかと思います。

 しかし、違います。鎌倉将軍、源頼朝の妻、北条政子を思い浮かべてください。彼女は尼将軍と呼ばれ、政治の中心でした。

 戦国時代でもそうです。概ね、男が遠征だので家を開ける時は、その留守を守るのは女性でした。

 かの今川義元の母――寿桂尼じゅけいに。彼女は夫の死後暫くは家を守りました。また、息子の死後も家を守りました。そんな今川家が江戸末期まで続いたのはご存知でしょうか?

 あるいは、井伊直虎は女性ながら当主を務めました。

 はては天下人・豊臣秀吉の妻:北政所・ねねの方も、側室が権勢を振るう以前は家を守っていたこと、こちらはご存知かと思います。


 日本からの視点のみでは、客観性がイマイチですか……。では、戦国時代の日本を観察して本国へのレポートをした宣教師:ルイス・フロイスが書いた【日本覚書】に置いて、この様な記述があります。


『・日本の女性は処女の純潔を何ら重んじない。欧州と違い、それを欠いても、栄誉も結婚(する資格)も失いはしない。

・欧州と違い、日本では夫が後方を、妻が前方を行く。

・日本では、財産は各々が自分のわけまえを所有しており、ときには妻が夫に高利で貸しつける。

・欧州では堕落した本性にもとづいて夫が妻を離別するが、日本ではしばしば妻たちのほうが夫を離別する。

・欧州では妻は夫の許可なしに家から外出しない。だが、日本の娘たちは両親と相談することもなく、一日でも、また幾日でも、ひとりで行きたいところに行く。妻も夫に知らさず、自由に行きたいところに行く。

・日本では、堕胎は、いともふつうのことで、20回も堕ろした女性がいるほどである。

・育てることができないと思うと、乳飲み子の首筋に足をのせて、殺してしまう。

・欧州では女性が文字を書く心得があまり普及していない。だが、日本の貴婦人においては、もし文字書きの心得がなければ格が下がるものとされる。

・欧州では女性が食事をつくる。日本ではそれを男性が作る。』


 ……さて、日本の封建社会における男尊女卑って、一体全体、何でしょうかね?


 日本は欧州と女性への扱いがまるで違いました。だからこそルイス・フロイスは驚いたのです。

 欧州では、女性とは文字通りの箱入り娘であれ。知識・知恵など大していらぬ。飯炊きさえ出来ればいい。財産も大して持たせぬ。子を生むことだけしか求めない。処女こそ至上。処女を失えば修道院にでも籠もっていろ――。


 さて、では男性が強いとされる戦国時代の日本の女性。欧州に比べれば、彼女たちには、性・快楽を楽しむという自由。財産権。好きに一人で歩ける自由。女性が教育を受けることが良いとする価値観。家事の平等。婚姻・離婚の意思決定。

 記述にある『子供を殺してしまう』……と、いうのは少し怖い話ですが、育てることができない、あるいは障害持ちなどならば、やむ無しと思います。

 ともかく、当時の日本には、フランス革命の人権宣言でも明文化されていない……20世紀前中期の頃で、ようやく欧州で認められ始めた女性の人権が暗黙の中に既にあり、性別の権利差において世界で最も公平が進んだ文明・文化・慣習があった。

 ……そう、言えるのではないでしょうか?


 更に、いささかロマンのある話ですが、軍神:上杉謙信は月一日で必ず籠もっていたということ、婦人病を伺わせる記述、遺骸を収めたとされる菩提の調査が断られていることから、女性ではないか?と、ささやかれています。

 仮説どおりに戦国期最強と言われる武将が女性となると、いよいよ男が強い社会などという話は、風前の灯火と追い込まれる次第です。


 ――あ、そう言えば古代日本の伝説では、戦争で活躍した女性:神功皇后じんぐうこうごうがいましたね。身籠った状態で戦場の朝鮮半島へ赴き、その勇ましさに敵は降伏してしまったという女傑が……。やはり、男社会とは儚いものなのでしょうか?


(会場には苦笑の空気)


 話を戻します。

 時代を進め、封建的とされる江戸時代について言っても、離婚……三行半に置いては、夫婦相互の了解を前提としておリ、決して男の一存で決まるものでなかった。妻の許しがなければ男の再婚はできず。財産分与も今現在と同程度で行われていたそうです。

 また、三行半を扱う縁切り寺・役所に、恋人や夫の暴力・放蕩……今で言えばDVなどに悩む女性が訴えれば、役所・両親・仲人・縁切り寺などが御婦人の代理人となり、恋人・夫に対して離縁・離婚を迫る事ができました。

 離婚が多かったのは、紡績などで女性が手に職を持っている地域が多かったということですから、離婚のしやすい状態というのは今も昔も変わらないのかもしれませんね。

 そして……選挙権の問題は横に置いておいて。これらの婚姻に関する制度は、私達の生きる明治期以降……"今"にも、離婚調停制度などで受け継がれている。そう言っても、過言では無いと言えるのではないでしょうか。


 ここまで、歴史的事実、及び学説などの例示を第一遍として、語らせていただきました。

 続けて第二編、生物的な話をさせていただきます。

 こちらでもやはり、主体となるのは男性ではなく、女性になります。

 まずは、最も普遍的でありますが……それ故に多少、気恥ずかしい話題でありますが、夜の営み、房事についてです。

 英国の学者が、ある研究を行いました。

 それは――良い遺伝子。つまり、見た目、身体能力、病気への耐性が強い傾向の美丈夫を相手にした時。対して、平均値以下程度男と致した時……それぞれの女性の感じ方の違いです。

 それによりますと、女性が巷で言われる"イク"……オルガスムスに達する瞬間はいつか……。

 平均値未満の男の場合、射精前に達し。逆に良い遺伝子……美丈夫の場合、射精と同時――あるいは、その後なのだそうです。

 これはどういうことか?ご存知かと思いますが、女性の分泌液には殺性作用があります。先に女性が"イク"ということは、出された精子を殺そうということ。つまり、男を拒否しているのです。平均値未満の男のタネなどいらぬ……と。

 逆に、射精と同時、あるいは以降ならば、出された精を逃さぬと、受け入れているということなのです。

 よく、何人切りだの言ってる好色者がおりますが、この研究では、達するのが同時以降でなければ、実のところ男は拒否されてしまっている。という悲しい現実があるのです。……まぁ、それに耐えられるようなタネを作ろうと男は機能するのですが。

 ともかく、房事とは、女性は組み敷かれるものなのでしょうか?私は、むしろ男が奉仕するものだと思っています。


 さらに、女性の浮気というものについてです。先程、歴史の中で男は種付けが役割だった。と申しました。そのためか浮気に走るというものが男にあります。――では、女性には無いのか?勿論、あります。

 女性が浮気に走るのは30代以降が増えるそうです。その30代以上の女性へのアンケートを、先程上げた英国の学者が行ったそうです。……その質問は概ねこうです。

『性行為に至った浮気をしたことがありましたか?』『あなたの子供は何人ですか?』

 ――この2つになります。

 その割合は、子供の人数が、1人ならば5%ほど、2人は10%、3人で16%、4人以上ならば31%と、産んだ子供の人数が増えるほど、浮気に走る可能性が高くなりました。


(場内の女性、一部男性……パネリストからも怒号が飛び交う)


 あー、きちんと説明させてくれませんか?お静かに願います。説明の途中です。それにコレはデータです。事実です。声を張り上げることで、物事を捻じ曲げようとしないでいただきたい。

 さて、これはどういうことか。女性の理性的かつ極めて狡猾な損得勘定と、生物的な合理性が混在した結果と言わせていただきましょう。


(再びざわつく)


 ……いきり立つのはわかりますが、最後まで聞いてからお願いします。

 先に、生物的な合理性を説明しましょう。男女問わず、浮気とはなにか?

 それは――己の因子を持つ遺伝子を最適な形で後世に残す手段です。

 現在の一夫一妻制度、単婚、一組のつがいで生まれる子供とは、突然変異でも起きぬ限りは、構造が極めて似通っている。ならば、いざ流行り病などが起きた時に、全滅してしまう可能性が高い。だからこそ、浮気という手段で別の遺伝子の組み合わせを作り、己の遺伝子を持つ存在に多様性を持たし、次に繋ぐという生物本能の合理性なのが浮気であります。

 ですので、男性は女性との関係を持とうとするのです。おそらく女性の浮気も同じでしょう。……ただし、男性はここまでです。


 女性の浮気……女性が持つ狡猾な損得勘定とは何か。なぜ、産んだ子供の人数が増えるほど浮気の確率が高いのか……。

 コレは男性脳と女性脳の違いから言えることです。

 男性は一点集中が得意です。しかし、並列作業は苦手になります。女性は逆。一点集中は男に及ばぬながら、並列作業が得意です。

 例えば、女の子が音楽を聞きながら、左手の携帯電話で友人にメッセージを送り、右手では問題集を解いてる。そんな光景を図書館などで見かけますが、男にできるのはせいぜい2つ位で限界となる事でしょう。

 子育てに置いては、当然ながら、それが多産であればあるほど、併行・並列作業に成るのは想像に難く無い。

 ともなれば、多産であればあるほど、男性側に離婚時のリスクが高まるのです。

 なぜなら、男に多数の子供の面倒を見るなど、おおよそ機能的にできないのですから……。

 ――ああ、まるで出来ないというわけでは無いですよ?出来る人はいると思います。例えば戦後ベビーブームなどでは長子が5人6人と居る年下の兄弟姉妹の面倒を見ることがザラでしたでしょうから、経験が有るだろう、その世代なら。

 ただし、今現在の少子化の中では訓練機会がないので、今の男性の大半はおそらく不可能でしょう。その様なマルチタスクな職場に勤めているなど無い限りは……。


 そう――子供が0ならば、男は女房の浮気を咎めて別れればいい。子が1人なら……父1人でも、なんとかなりそうだ。でも……2人なら?3人ならば?

 あー、ひどい言い方をさせていただきますが、女性の……多産の方の浮気というのは『お前に子育ては無理だろう』『お前の子はこれだけ産んでやった』『いっぱいいるから、一人くらい増えても問題なかろう』という方向性の……意識のありなしを問わず、極めて狡猾な打算が女性にはあると、ここから言えるのです。

 つまり、女性が多産であればあるほど、出産適齢期後半の女性は排卵期が終わることを予知し、生物的により良い遺伝子を欲する。夫に対しては男が養育が向かぬことを脅し、間男の子を育てるを援助させる。挙げた英国のデータとは、それを示しているのです。

 まぁ、鳥は種族によっては浮気が80あるいは90%とも言われていますから、それに比べたら人はどれほど慎ましいものか……。


 さて、歴史的、生物的と続いてきましたが、三編目……え?時間が迫ってる……わかりました。駆け足でいきましょう。

 三編目は情緒・思考・経験的なものです。

 女性は極めて現実的です。男の私からみて、女性は本当に現実的です。

 比べて私など、夢想家……お子様……いつまで経っても赤子のようなもの。私の観察でありますが、男が生きる世界など、ヴァーチャル・仮想的なものでしか無いのです。

 時間がありませんので、一例のみ挙げましょう。


 ある官僚・官吏かんりの話なのですが、40,50という歳に来て、退官となり、民間人として己の力を発揮しようと意気込んでいた。彼は仕事づきあいの陳情に来ていた会社に再就職しようとしていたが、それまでの付き合いの者から、ことごとく拒絶されました。

 理由は概ね、こうです。

「――私が付き合っていたのは、ポストについてた貴方なんですよ」

 おわかりいただけますか?彼に対してへりくだって付き合っていた民間人は、彼が官僚として務める国、役所、ポストにひれ伏していただけで、彼個人にはまるで見向きもしていなかった。そういうことなのです。

 また一方で、彼は浮気をしていたのですが、浮気していた女性も同じ理由で身を引きました。地位を持っていて、自分を引き上げてくれる存在だったから付き合っていたのだと……。

 そうなると、彼には、いよいよ長年連れ添った女房しかいなくなって……長く居たんだ大丈夫。

 しかし、女房から下されたのは三行半でした。

 楚々と連れ添った女房が本音とするところ、自分の地位という仮初めに酔っ払い裏切りを行う旦那に、愛想を尽かしてしまっていたのです。結婚した当初、旦那に地位など無く。妻はただひたすら女として男を愛したのに、夫は社会的地位を手に入れるほど、それを家庭内のヒエラルキーと考えたのですから……。

 家庭内なら男と女は夫婦……それ以外に無いのに、浮気まで……許さない。――と。

 一縷の望みとばかりに、男がすがった子供達も同じでした。子どもたちは女房――母親に、夫の裏切りと理不尽に対する怨嗟を吹き込まれていたのです。男が仕事をして金を出していると言っても、毎日毎日、様々な家事――洗濯を行い、掃除、繕い物、炊事……日々の御飯を用意して、優しく相談に乗る。そんな母親の方が子供にとって存在が大きいことは当然の流れでしょう。

 かくして男は、女房に退職金を含めた財産の半分と子供さえも持っていかれてしまい、ただ途方に暮れるばかり。


 このように、現実という中で生きるならば、男性など、女性に比べれば遥かに脆弱なものなのです。男の粗忽な行いで、復讐の念を女性に持たれたら、裏切られたら……男が女性に勝つ術は、ほぼ間違いなくゼロです。仮初めの夢の中に生きる男と、生活という現実を見つめ生きる女性。勝つのがどちらかなど自明の理でしょう。

 昨今、熟年離婚というのが増えてきた。と言いますが、女性から突きつけられる三行半。それはいつまでも夢遊病な、愚かな男に対する女性の恨み言、怨嗟ではないでしょうか……。


 まだまだ語りたいことはありますが、荒削りながら述べるべきことは、だいたい述べることが出来たかと思います。

 ここまでをマトメさせて頂けば、男がどんなに、力が金力が地位が――有る。そんなことを言っても、強いのは明らかに女性なのです。それはこの国の過去・歴史からの慣習、生物的な事例などで証明できる。蛇足ながら、私の少ない人生の見聞からも分かる。

 コレを無視して、西洋輸入の男女同権という錦の御旗で、アレヤコレヤと求めるのは如何なものか……これまでの日本で培われた歴史・慣習を蔑ろにしていいのか……。

 こんなわけで、嘗て私は投書において、男女同権に反旗を翻した次第であります。「女性の皆さん。あまり男をいじめないでくださいよ」……と。


 尤も、私の趣味程度の知識・考えなど、皆様の抱える現実、経験、それらから生まれる知恵。それと比べれば遥かに矮小で貧弱です。それを確信しております。さらに言えば、私が今、挙げた話、考察などにも、多々の錯誤があると思われます。

 なによりも、時代は急速に移り変わっております。だからこそ、皆様の知識、ご意見、境遇を伺い、持ち寄り、より良い道・世の中を見出すため、こちらに参上した次第です。


 さて皆様、有意義な討論・議論をしようではありませんか。

 これを以って私の主張を終わらせていだきます。ここまでのご静聴、感謝致します。


〈速記録・意見表明〉終わり


 主催者は、会場が男女同権を嫌う物書きを指弾する処刑場に成ることを期待していたが、この意見表明後のディスカッションは粛々と意見を出し合って、方向を定めていく議論となったのは言うまでもない。

 落胆する主催者を尻目に、物書きは「楽しい議論だった」と嬉しそうに帰っていった。

あとがき

なんでこんなの書いたんだか………いや、本当になんでだろう。

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