2話 魔王幼女の平和な日常
ノエルたん(*´Д`)ハァハァ
居候を初めて一年。
お姉ちゃんは聖剣で名前は〈風聖剣・ヴィーシャルシェルヴィス〉人間の姿の時はヴィーシェと呼ばれているらしい。
「ノエルちゃんなにか食べたいものある?」
「カレーがいい!」
私が魔王だなんてこと忘れて姉妹、というか親子のような会話をしながら人間界で平和に暮らしていた。
よく街に出て買い物をしたり遊んだりしているおかげで仲のいい姉妹として少し有名になった。
「ノエルちゃん手伝ってみる?」
「うん!」
初めてのお手伝い。
「包丁はこう持って――」と、色々教えてもらいながら野菜を切った。
魔界では秘書のメフィストが私の面倒を見てくれていて、料理はしたことがなかったのであまり慣れなかったが、まあ楽しかった。
ゆっくりとやって三十分くらいでできた。
「おー、美味しいねー」
「えへへぇ」
どちらかというとお姉ちゃんが私をサポートする感じだった。それでも味は結構よかった。初めてにしては上出来だ。
だが、そんな平和な日常は長くは続かなかった。
コンコンとノックの音が聞こえて来た。
「はいは~い」
お姉ちゃんについていってみると、見覚えのある悪魔がいた。
メフィストだ。
「魔王様、早くお戻りください」
「いやだ!」
「せめて儀式くらいは出ていただけませんかね?」
「絶対行かない!」
「ノエルちゃんはなんでそんなに働きたくないの?」
今回は働きたくないというよりはただ出たくないというだけだ。儀式に出るときは大体正装で出る。魔王の場合その正装は鎧。出たくない理由はその鎧が暑くて重いからというだけだ。
「今日はまだいいですが、一週間後には儀式が行われますのでそれまでには戻ってください」
とだけいってメフィストは帰っていった。
「やっぱりさ、儀式くらいは出たほうがいいんじゃない?」
湯船でお姉ちゃんの膝に座っていると突然聞いてきた。
「鎧が重たいし暑いからいやだ」
「じゃあさ、さっきの人って優しい?」
「うん」
「なら鎧を新丁してくれるんじゃない?」
「それなら、出てもいいけど」
確かにメフィストは私にいろいろと気を使ってくれる。特に仕事に関することでは頼りになった。
私が鎧を着るのを嫌っているのも知っているし、手を回してくれて入るだろう。
「う~ん……考えてみる」
「お?」
「お姉ちゃんが一緒に来てくれるなら」
「当然ついていくよ」
「なら行く」
結局行くことにした。
そして、私が儀式に出たのは一週間後、無駄に天気のいい日だった。