異世界への道はどこに隠れているかわからない
君のためなら死ねる!
よし、これでいこう。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
扉を開くと彼女は天使の微笑を浮かべて出迎えてくれた。
彼女に促されるまま椅子に座り、いつものように紅茶とケーキを持ってくるよう口にする。
「お待たせいたしました」
シルバートレイからウェッジウッドのカップをテーブルに運び、そして戻っていく白いたおやかな手を両手で包み込むように攫い、彼女への思いを口にする。
「君のことが大好きだ、付き合ってくれ。君のためなら死ねる!」
一世一代の告白、心臓がばくばくいっている。
「まぁ、嬉しい。ほんとうですか?」
「武士に二言はない!」
てんぱって武士とかいっちゃってる、ちょー恥ずかしい。
「それではこちらに来ていただけますか」
「うむ」
頭の上には黒い猫耳、そしてレースのついたピンクのふりふりの短いスカートの裾から細長い黒い尻尾を覗かせている彼女に店の奥へと案内される。
厨房を抜け、そしてそこは、こ、更衣室!?
香水と女の子の香りに部屋中がピンク色に染まっているように感じる。
そして彼女の優しく握った手に引かれ、大き目のロッカー??? へと入っていく。
まっすぐに見つめた彼女はおもむろに両手を伸ばし、目の前にある頭を胸に抱き寄せ、そしてなにやら呟く。と、床が眩しく光った。
「勇者様、ファンネランドへようこそ」
眩しさで瞑っていた目をゆっくりと開いていく。
目の前にはふわふわのファーのビキニをつけた今まで一緒にいたのとは別の猫耳の女性が立っている。横には犬耳のビキニ、そしてうさ耳、色違いの猫耳、たくさんの美しい女性に囲まれていた。
ロッカーが別のメイド喫茶に続いてたのか? もしかしてこれがVIPってやつなのか?
俺の困惑を他所に猫耳の女性の顔が近づいてくる。
カチリ
ん? 首に手を当てると細い輪っかのようなものが首に嵌められている。
「勇者様、先ほどの言葉通り彼女のために死んでください」
「えっ?」
「先ほどあなたと一緒にいたのはこの国の第二王女様で、異世界へ勇者を探しに行っております」
「はぁ?」
ガキン、ザシュッ
刃を受け止め、払い、そのまま腹に突き刺す。
これで何度目だろう、もう何も考えなくとも機械的に体が動いてしまうくらい日常となった。
この世界ではこちらの身体能力があがったのか、それとも相手の身体能力が低いのか、大人が子供を相手にするように楽に相対することができてしまう。
ぷぉ~
角笛の合図により野営地へと戻る、夜は戦わないのがこの世界の戦争のルールらしい。
「よぉ、今日も一日終わったな」
馴染みの戦友が声をかけてくる。『おい、あっちみろよ』その言葉に従い顎で示したほうを見ると、新兵らしきものが3人立っていた。
「新しい勇者様のご登場だぞ、おれたちと同じくな……」
「あぁ……」
「あそこであんな言葉さえ口にしなけりゃなぁ。君に全てを捧げるなんてさえ言わなければ……」
「俺のは君のためなら死ねるだ、臭いな……」
「臭い、お互いにな……」
けも耳の姫たちは今日もメイド喫茶で新たな勇者様からの言葉を待っている
Fin