第9話:俺、リオ、共にグロッキーです………
俺は今、何故か森の中で歌を歌う事になっていた。
「ルナ、しっかりスキルLvは上げないとな?」
「ぐっ、なんだその笑みは………!?他にも闇魔法とか、上げるべきスキルはあるだろう?」
「いやいや、それなら簡単だ。闇魔法を使いながら歌えばいい」
「何言ってんの!?」
頭でも打ったのかコイツ!?
「………いや、実際に並列処理の練習にいいかもしれないな………」
「ちょ!?リオ何言ってんの!?」
「いや、やってみろ。慣れておかないと並列起動は後々辛いぞ?」
結構真面目にリオはそう言ってくる。
「う、分かったよ………まあ、両方鍛えられるしな。やってみるか」
「おう、じゃあまずは闇魔法って何が今使える?」
「えぇと、ダークネスって言う奴が使えるみたいだ」
「よし、じゃあそれを使ってみてくれ」
「了解、【ダークネス】」
スペルを使うと、俺の体が黒い霧の様な物に包まれた。
「おお、何だかカッコイイな」
「それ、本当にただそれだけだぞ」
「」
「多分夜とか洞窟で敵に目視されにくいとか、そんな事じゃないか?情報が少ないから俺も詳しくは知らないが」
そして少しして気付いた。
「これ、少しづつだけど発動してるとMP減ってるぞ………」
「そうなのか、だが大丈夫だ。歌ってる時切れそうになったらMPポーションぶっかけてやるよ」
「え!?本当にこれで歌うのか!?」
「もち☆」
「」
まじかよ………え?拒否権無し?あ、はい、VRギアの借りがありますねやらせて頂きますだからそんな能面で見ないでクダサイコワイデス
▼△▼△▼△
「~~~♪~♪」
はい、絶賛歌いながら闇魔法発動中でございます。
………これ、しんどい。同時って、しんどいよ!出来なくはないけど精神が削られる!
「~~♪♪♪~」
でもまあ、最初よりは楽になってきた。これが慣れだろうが、一体いつまで続くんだ?もう何回かリピートしてるぞ………
「♪~♪~♪」
うぐぐ、耐えてやるぞぉーっ!!!
―――1時間後
「コヒュー、コヒュー………ケホケホ!」
「………よ、よーし、よく頑張ったな」
「お、鬼、悪魔、人でなしィ………ケホッ」
こ、この野郎、1時間ずっと歌わせやがった(勿論闇魔法付きで)………!!!
「リオ、何か恨みでもあるのかよ………?ケホッ」
「い、いや、そうじゃないんだ。その、スマン」
?どうしたんだコイツ。さっきまでめっちゃ真顔で聞いてたのに何だか今は物凄く申し訳なさそうにしている。
「ま、まあ分かれば別にいい」
「そうか、本当に済まなかった」
「いやもういいって。てか、そんな謝るなら何でやったんだよ」
少し呆れながら聞くと、リオは目を反らして言った。
「ああ、いや、1時間もやればスキルLvも上がるし、並列起動も慣れたろ?だから心を鬼にしてだな」
「ん?………確かに。途中からもう殆ど無意識だったな」
「………え?」
「ん?何かおかしなこと言ったか?」
「い、いや、驚いただけだ。相変わらずお前、集中力凄いな」
「いやいや~、それほどでも」
「ああ、スキルLvはどうなってる?」
「えーと………」
・闇魔法Lv8
・歌唱Lv8
おお、結構上がってるな。
「お、闇魔法のスペルが二つ追加されてる。えーと?ダークアイにダークアロー、だって」
「ああ、ダークアイが暗視スコープだ。ダークアローは全属性最低攻撃力の初期攻撃魔法だな、確か他の属性の半分ぐらいじゃなかったか?」
「そんな………」
うあぁ、やっぱり死にスキルなのかぁ………
「歌唱は?」
「特に何も変わってない気がする………」
これもやっぱり死にスキル………ぬあぁ
「まあ、Lvが上がったんだ、よしとしよう!」
「そ、そうか。ところでルナ?隠密はどうするんだ?」
「勿論上げる!他も色々な!」
俺は結局日が暮れるまでスキル強化をしていた。勿論モンスターも狩りながらだけどな!
▼△▼△▼△
「もういいだろう!?」
「そうだな!」
今度はリオがグロッキーになっていた。
「どんだけ長い間狩り続けてるんだよ………」
「あ、いや、ごめんな。ほら俺、集中すると周りが見えなくなるから………」
「お前のその集中力は驚異だよ本当に」
そう言うとリオは力なく笑った。
「それじゃ、俺はそろそろ落ちる」
「ん、分かった。ありがとうなリオ!」
「いやいや、これぐらい当然だろ?またな!」
「お疲れー」
そしてリオはログアウトしたが、俺はまだログインしていた。
「今日はもう先に夕飯作って置いたからな。少し夜のフィールドを経験してみるか」