第7話:俺、チート装備に驚いています。
「よし、これでいいだろう」
そう言って姉貴が渡してくれたのは黒々とした木でできた弓と、執事服を渡されていた。
………何故に執事服?いや、姉貴の趣味だろうけどさ、鎧とかじゃないんだな………
「さぁさぁさぁ、装備してくれ!」
「お、おう?」
一旦装備をしまい、メニュー画面から装備する。
「うんうん!やっぱり似合うぞ!ああ、弓は仕舞っておけ」
「分かったけど………どういう装備なんだ?」
「ふふふ、それなりの物にしたぞ?
まずは弓だが、これはエレメントトレントというモンスターの素材で作った物だ。優月は闇魔法も取っているからな闇属性のエレメントトレントの素材を使っている。闇魔法に少しプラス補正が付くんだ。
弓としての性能はまあ、序盤のモンスターなだけあって弱い。今のルナにはそこそこだろうが」
いや、姉貴、俺からしたら勿体無いぐらいですよ。ていうか鍛冶で木製武器作れるのかよ。鍛冶っていうよりは武器作成スキルだな。
「そして次にその執事服だが、何故鎧にしなかったか分かるか?」
「姉貴の趣味」
「………」
ゴン!
「っっ痛てぇ!?」
「馬鹿者。それもあるがそれだけで決めるわけがないだろう。大事な弟の装備なのだから」
………ふぇ?姉貴?
「少しは私に世話を焼かせろ。お前の姉なのだから」
そう言うと姉貴は微笑んだ。
「あ、ああ」
………恐らく、姉貴は俺に引け目を感じているのだと思う。
家事は全て俺がやっていたからなぁ。姉貴は何も出来ないのが少し悔しかったのだろう………
「よし、それで何故鎧じゃないのか、だが」
「う~ん………あ、体術があるから…?」
「ああ、そうだ。鎧だと動きが制限されるからな。重量もあるし、そうすると動きが遅くなるからな。それに、その服はそこらのプレートメイルよりよっぽど性能がいいぞ?」
「え!?」
急いで執事服のステータスを見る。
〈執事の心:上半身、下半身、装飾品〉
・防御:30(合計)
・アビリティ:鷹の目、属性耐性[小]、状態異常耐性[中]、反射無効
・セットボーナス:破壊不能
「………は?」
「ふふふ、それは先月のイベントアイテムなんだ。なかなかの物だろう?」
「いやいやいや、これ、そんなレベルじゃないだろ………」
普通のプレートメイルは大体50~60前後の防御力で、特殊効果があったとしても単体属性に耐性があったり、少しステータスが強化されたりといった程度だ。
だが、この執事服は防御力がプレートメイルの半分ぐらいしかないが布装備にしてはとても高い防御力だ。
更に全属性に耐性があり、全状態異常への耐性が高い。鷹の目は視力強化のようだ。弓使いには嬉しい。
そして反射無効。これの効果は相手を攻撃した時、反射系スキルやアビリティの効果を受けない。これはかなりチートである。
例えば燃え盛る敵、サラマンダーなどは殴ったりすれば当然火傷の状態異常になってしまう。
他にも巨大な針ネズミのようなモンスター、ニードルビーストなども殴ればダメージを受けたりする。
後はプレイヤーのスキルでミラーシールドと言うスキルは相手の攻撃を跳ね返す効果がある。
このようなものが反射系スキルやアビリティと呼ばれる強力なものなのだが………このスキルはその全てを無効化してしまうのだ。如何にチートかが分かっただろう。
だが―――
「おい、姉貴。この破壊不能ってなんだ」
「そのままだぞ」
「………おいおいおい」
セットボーナス、破壊不能………本来、SLOの防具には耐久度という物がある。これがなくなるとその防具は壊れてしまうのだ。なので耐久度が減ってきたら大抵職人プレイヤーなどに頼んで回復してもらうのだが………この執事服にはセットボーナスにより、その耐久度が減らないらしい。まさに破壊不能という訳だ。
「ヤバいだろこの装備………」
「装飾品はその手袋とモノクルだ。しっかり付けるんだぞ?つけないとセットボーナスが発動しないからな」
「了解………」
こうして俺は姉貴からトンデモ装備をもらった。姉貴、有難いけど何だか釈然としないよ………
ちなみに、反射無効と、破壊不能は両方かなり珍しいが(と言うより破壊不能は他に見た事がないそうだ)それ以外は別にそれ程でもないようだ。後半になればもっといい装備が普通にあるそうだが、中盤ぐらいまではそのままでいけるぐらいの装備、だそうだ。
「もうこれチートだろう………」
「あはは、頑張れよルナ!早く強くなって私の欲しい素材などを取りに行くのを手伝って欲しいのだから!」
「はいはい………」
ルナ君のお姉さんは過保護でもあるようです。ただし、ルナ君は中盤になる頃には自分で装備を整えて貰った装備は返すつもりのようです