第21話:俺、山登りです!
「てぇぇぇやぁっ!!!【ナックルエッジ】!」
「ブモオオオ!!」
牛と鹿を足した様なモンスター、ホルンバイソン。その横腹に俺はテクニックを叩き込んでいた。このモンスターは恐ろしい攻撃力と速さを合わせ持ったモンスターであり、何よりそのタフネスが面倒だ。中ボス一歩手前と言った所だろう。そしてそのモンスター相手に俺は一人で戦っていた。そう、1人で。
「リオ!そっちのはどうだっ!?」
「もうすぐだ!耐えろ!」
「ちっくしょー!!なんで3体同時に出てくるんだよ!?」
そう、リオはなんと2体同時に相手にしていた。
「っしゃらぁ!【ハウル】!」
「「「ブモオオオ!!!」」」
「お、おい!?俺の分の奴もそっち行ったぞ!?」
「いい!見てろよ!【トライソード】!」
「「「ブモッ!!?」」」
リオがテクニックを発動すると、3体のホルンバイソンの目を切り払った。そして―――
「終いだっ!【ブレードサークル】!」
円を描くような刃に3体のホルンバイソンは首を切り落とされ、光の花弁になった。
「・・・」
「ふぃー、疲れたなぁ」
・・・すっかり忘れてたけど、初心者の俺と違ってリオは熟練プレイヤーだった・・・
「リオ、凄いなお前」
「いやぁ、俺からしたらお前の成長速度が異常に感じるぞ?お前、戦闘の恐怖ってのが全くないからなぁ・・・かなりのアドバンテージだろ、それは」
「そうかな?確かに戦闘は楽しいけど・・・」
そう言うとリオは苦笑しながらいった。
「そもそも、1週間ちょいで第2の街のフィールドって、かなり早いぞ?」
「そうなのか」
「ああ、この調子ならいつか追いつかれそうだなぁ」
「あはは・・・」
たわいない事を話ながら進んで行ると休憩地点についた。
「もう出てきていいぞ、リーラル」
「クィー♪」
リーラルが俺の執事服の胸元から顔をだす。危険だから今まで隠れて貰っていたんだ。
「クィックィッ♪」
「わっ、くすぐったいな」
「クィ~♪」
「ひゃっ!?何処舐めっ!?やめっ」
ぶばァっ!!!
突然休憩地にいたプレイヤーが血まみれになって倒れた。
「ど、どうしたんだっ!?」
「クィー!?」
「ル、ルナ………」
声がする方を見ると、リオまで倒れていた。
「リオ!?大丈夫か!?」
「ルナ………グッジョブバァッ!!」
「リオーーーっ!?」
何故か幸せな顔をして倒れていた男性プレイヤーを女性プレイヤーが汚い物を見る目で見ていた。一体何なんだ!?
▼△▼△▼△
「さて、それじゃどうする?このままFボス行くか?」
復活したリオはそう聞いてきた。うーん………
「なあ、一回ソロで行ってもいいか?水晶人形の時みたいに何か貰えるかもしれないだろ?」
「ソロか………ここのボスはかなり強いぞ?マウンテンゴーレム。とても高い防御力と体力を併せ持つ奴だ。当然攻撃力もそれなりにあるしな」
「まあ、一回だけやってみたいんだ。それにZRC/KもLv6になって新しいテクニックも増えたしな」
「まあ、いいか。そしたら俺ももう一回倒してみるか。ソロで」
「ああ、そうしてみようぜ。なんか悪いな。せっかくのPTなのに」
「気にするなよ。さて、それじゃ行こうぜ」
「ああ、リーラル、また隠れていてくれ」
「クィー!」
▼△▼△▼△
山頂には、いかにも、といったような巨大な石像があった。恐らくあれがマウンテンゴーレムだろう。とんでもなくデカい。
「………?石碑?」
マウンテンゴーレムの前には石碑があった。手形のくぼみから察するに、これがボス戦の合図だろう。くぼみの下には謎の文字が書かれている。恐らく演出だろうな。
「うーん、少し周り探してみるか。他にも何かあるかも」
「クィ、クィ」
「ん?なんだリーラル。駄目じゃないか隠れてないと」
「クィー」
「あ、リーラル!?」
リーラルは俺の胸元から飛び出して石碑を嗅ぎ始めた。
「?どうしたんだ?」
「クィー?」
リーラルは石碑の謎の文字をじっと見ている。演出じゃ、ないのか?
「リーラル?読めるのか?」
「………クィッ」
リーラルは頷くと俺の胸元に戻ってきた。
「何なんだ一体」
「クィー♪」
………何言ってるかサッパリ分からないな。
「はあ、とりあえず、ボス戦行きますか!」




