番外編 過去ゆえの現在(いま) 後編
やっぱり前回から時間経っちゃいました
後編です
今更ですが、本小説に起こる展開は定番が多いです。
「たっだいま~!お姉ちゃ~ん、帰ったよ~」
家に着いたわたしは早速お姉ちゃんを呼んだ
「あれ?お姉ちゃ~ん?」
お姉ちゃんが居ない。
まだ帰ってないのかな?
「そういえばわたしは大丈夫だったけど、お姉ちゃんのテストは?」
もしかして、わたしに使ってくれたような手で補修中かな?
お姉ちゃんは遅くなったりする時には、絶対誰か家に居る人に伝えていく律儀な人だ
誰も居なかったら置き手紙でもすると思うんだけど…
「無いもんねぇ~」
なら、まだテスト中かな
テーブルの上には紙一枚無い。
あ、みかんがある。
「あ~あ、なんかテンション下がっちゃったな」
伝えたい相手が居ないというのが分かると一気にテンションが下がる
「っていうか、頑張ったよ!って伝えるより、○点取れた!っていう方がビックリするよね…」
そうとなれば
「また明日まで秘密だ!!」
お姉ちゃんビックリ作戦は明日にしよう。
『ただいま~、美紀帰ってるの~?』
なんてことをやってたら、お姉ちゃんが帰ってきた
「帰ってるよー!」
扉を開け、お姉ちゃんが居間に入ってくる
「あれ、まだ着替えてないんだ?」
「わたしも今帰ったところだし。どこかいくの?」
「ちょっと買い物にね。今日の夕飯と明日のご飯とで買っちゃうから美紀も来てくれない?」
「荷物持ちですかい?」
「報酬はお菓子2個でどうだ」
「さ、行きましょうお姉さま」
「はやっ、私まだ着替えて無いんだけど…ちょっと待っててね」
「うむ」
お姉ちゃんから誘われるってあんま無いから嬉しいな
なんかお菓子に釣られたみたいになってるけど、大丈夫
いつもだから
「お待たせ、じゃあ行こうか」
「あいさ!」
・
・
・
・
・
さて、強力粉事件のあったスーパーまでやってきました
重いです
仮にもまだ小5に商品が半分詰まったカゴはキツイです
「お姉ちゃん、この量はなに?なんかあったっけ?」
「ん~?内緒~」
なにかの商品の裏面を必死に読んでるお姉ちゃんは生返事だ
「お姉ちゃ~ん」
「ん?」
「何見てるの~?」
「美紀が嫌いなのが入ってないかチェック」
「え、嫌いな物?」
「うん、入ってない。購入決定」
「お惣菜?」
「揚げ物は面倒くさいからね。暑いし」
「ふーん。それでお姉ちゃん?」
「ん?」
「この量は?」
明らかに今日の分だけじゃないと思うんだけど…
「明日まで内緒」
明日?
「明日って何かあったっけ?」
「さぁ?なんでしょう?」
お姉ちゃんが楽しそうに笑う
「えー!教えてよ~」
「明日をお楽しみに。ほら、帰ろう?」
「う~」
「拗ねない拗ねない。お菓子買ってあげたでしょ?」
「えー!ズルイ!」
「早く来ないと先帰っちゃうぞ~」
そう言ってお姉ちゃんは先にスタスタと行ってしまった。
追っかけないと
「え、待ってよー!」
急いでお姉ちゃんに追いつき、そのまま楽しく話をしながら帰り道を歩いた。
・
・
・
・
・
・
・
・
「瀬川~、瀬川美紀~」
「は、はい!!」
日付は変わり、翌日のテスト返却。
ついにわたしの番だ
「今回は良く頑張ったな。前回より平均15点アップだ」
「ホントですか!」
先生から渡されたテスト結果表を見る。
ほ、ホントに点数上がってる…
これは本当にわたしのテストだろうか。
疑って名前欄を見るけど、ちゃんとわたしの字でわたしの名前が書いてある。
「ほら瀬川。うれしいのは分かったから、早く席に戻れ」
「は、はい。すいません」
やった!これならお姉ちゃんに自慢出来る!
いつもならほとんど40点前後だけど、今回は全部50点以上だもん!
「美紀?テストどうだったの?」
後ろの席のさとっちが小さく聞いてくる
「うん!いつものわたしに比べたら全然良かったよ!!」
そう言い、さとっちに結果表を渡す
「あら、ホントに凄いじゃない。全部50点越えるなんて」
心底驚かれるとちょっとショック
「でしょでしょ?これならお姉ちゃんもビックリするよね!」
「泡吹いちゃうかもね」
え?
「そんなにわたしのいつもの成績って悪い方なの?」
「自覚あったから今回頑張ったんじゃないの?」
「え?」
「え?」
そんなにわたしの成績悪いほうだったんだ……
「さ、さとっちは?」
「私はいつも通りよ」
今度はさとっちの結果表を受け取る
「相変わらずさとっちは頭良いなぁ~」
全部70点越えてるし…
「授業ちゃんと聞いてれば普通よ」
「普通じゃないよ~…」
「あなたのお姉さんに比べたら普通でしょう」
「お姉ちゃんはもう例外だよ。」
お姉ちゃんと比べるのは自殺行為だ
壁が高すぎる
「あら、妹に言われるなんてお姉さん可愛そう」
「妹だから言えるんだよ~。なんで毎回テストでほぼ満点だせるの?」
「私と同じ事言いそうだけれどね」
「話聞いてて点数良くなるならずっと聞いてるよ~」
話を聞いてて悪いんだから謎なのだ
「瀬川~、内原~。もう少しで終わりにするから、ちょい静かにな」
「すみません」
「ごめんなさい」
さとっちと一緒に謝る。
「えー、じゃあ、今日はこの辺で終わりだ。今日はテスト返して終わりだったが、
明日からは通常授業に戻るからそのつもりでいるように」
はーいとクラスの所々から返事が聞こえた
「よし、それじゃ気を付けて帰るように」
そう言い残し先生が教室を出て行った。
「よし!わたしも帰るよ!!」
早く結果表をお姉ちゃんにみせつけてやるんだ!
「ふふ、終わったとたん元気ね。今日は、私用事があるから一緒に帰れないわ」
「あれ、そなの?」
「ええ。ごめんなさいね」
「いいよいいよ!それじゃあね!」
「また明日ね」
「バイバーイ」
さぁ!帰って今日こそお姉ちゃんを驚かせるぞ!!
・
・
・
・
・
「ただいま~」
あ、お姉ちゃんの靴ある
「お姉ちゃ~ん!聞いて聞いて~!」
駆け足気味になりながら居間に駆け込むが
「あれ?居ない。」
靴はあったし部屋かな
そう考えたわたしは、
二階に上がりお姉ちゃんの部屋をノックする
「お姉ちゃん、起きてる?」
………あれ?
「…鍵開いてるし」
お姉ちゃんが鍵掛け忘れるなんて珍しいな
「開けるよ~?」
お姉ちゃん寝てるかな?
「もしも~し」
中に入りもう一度声を掛ける
「あ、居た」
ベッドの布団が盛り上がっている
「お姉ちゃ~ん。起きて~」
声を掛けつつベッドに寄っていく
さすがにこの距離で声を掛ければ起きると思うんだけど…
「お~姉ちゃん。」
ベッドのすぐ側でもう一度声を掛ける
「む、眠りが深い。」
こんなにお姉ちゃんが寝入るなんて珍しい。
今日は珍しい事だらけだな
「お姉ちゃん、起きて」
揺さぶる、起きない
え、ちょっと待って
「お姉ちゃん?布団めくるよ?」
さすがに心配になり布団をめくる
「っ!、お姉ちゃん!?大丈夫!?」
ベッドに横になっていたお姉ちゃんは、呼吸が荒くて、視線も合ってなかった。
「み、美紀?……いつ、帰ってきたの?」
「さっきから声掛けてたよ!!大丈夫なの!?」
「大丈夫って?…ああ、ちょっと体がダルイけど大丈夫よ。」
「全然大丈夫そうに見えない!救急車呼んでくるからちゃんと寝ててよ?」
「そんな大事にしなくても大丈夫よ。…それに今日は…」
「こういう時のお姉ちゃんの大丈夫は信じない!」
「美紀…」
早く救急車呼ばないと!
急いで一階に下りて119に電話をしてお姉ちゃんの部屋に戻る
「お姉ちゃん?救急車呼んだからもうちょっと我慢しててね」
「ちょっと体がダルイだけよ。」
「ちょっとダルイだけの人がそんなに息荒くするわけないよ…
昨日まで元気だったのに、急にどうしたの?」
「分からない。朝からちょっとダルくて、学校から帰ってきて、
ちょっと休もうかと思って横になったらこの有様だったの」
「酷い病気じゃないよね?」
「さすがに医療はまったく分からない」
「そう…だよね」
「うん」
「…」
「…」
それきり、救急車が到着するまで、お互いずっと無言だった。
・
・
・
・
・
・
・
・
病院の待合室でお姉ちゃんの結果を待ってるとき、お母さんもやってきた
「美紀、優樹奈は?」
「まだ検査中みたい。」
お母さんもかなり急いできたみたいで、息が切れている
「そう。…ふぅ~、そんな大事じゃなさそうで少し安心したわ」
「そう…だね」
結果が出るまでわたしは不安なままだけど、
そこらへんは経験の差なのだろうか
「多分喘息が久しぶりに出ちゃっただけだとは思うんだけどね」
「お姉ちゃんって喘息持ちだったの?」
「知らなかった?」
「うん…」
「あの子がホントに酷い発作起こしたのって、小学校上がるか上がらないかくらいだったからね
あんたはまだ幼稚園だったし、知らなくても当然か」
「そんな前だったんだ?」
「小学校に上がってからは、大きな動きをする事とか、煙の多い場所は自分から極力避けてたみたい。」
「じゃあなんで今日は急に?」
「まだ喘息と決まったわけじゃないけど、もし喘息なら、ちょっと頑張っちゃったのかもね」
「頑張った?」
「そ。あの子頑張るっていう経験が少ないから、限界が分からなかったのかも。あたしも頼りすぎちゃったのかもね」
「そんなこと…」
「あの子は自分からやってるだけって言うかもね。それでも、出来る子供を持つと親は頼っちゃうのよ」
「そういうものなんだ」
「そういうものよ」
お母さんとの話が一段落ついたとき、丁度検査室から、担当のお医者さんが出てきた。
「どうも。えーっと、妹さんと…お母様ですか?」
「はい、優樹奈の母です。それで、あの子は?」
「一通り検査をしましたが、これといった特別な病気とかではなく、喘息ですね。」
「良かった…あの、これで喘息が酷くなったりはしないですよね?」
その話を横で聞いてて、やっとわたしも安心出来た。
喘息が軽いわけじゃないけど、何か重い病気とかじゃなくて良かった…
「今の所、そういった兆候は特に見られませんね。数年間大人しくしてたのが良かったですね。
喘息も大分落ち着いてるようです。今回はたまたまでしょう」
「そうですか…」
お母さんも今度こそ安心しきったみたいで良かった…
「ですが念のため、今日一日だけ入院して、安静にしていただきたいのですが、大丈夫でしょうか?」
「はい、宜しくお願いします。」
「承知しました。では手続きなどもありますので、私はこれで。」
「お世話になります。」
そう言い残し、お医者さんはどこかに行った
「お姉ちゃん入院するの?」
「今日一日だけね。はぁ~…良かった~」
「お母さんもやっぱり心配だったんだね」
「当たり前でしょ、自分の子供よ。…さて、ほら帰るわよ
といっても、優樹奈の着替え届けに一回戻ってこなくちゃ」
本当に安心しきったような雰囲気のお母さんが先に歩き出した
「分かった」
なんか、今日は凄い一日だったなぁ
でも、お姉ちゃんが無事で良かった。
そんな事を考えながらお母さんに着いて行った
・
・
・
・
・
・
「…き」
「……ん?」
なんだろうこんな夜中に…
今日はお姉ちゃんの事でかなり疲れてるのに…
「…みき、おきて」
…ん?
「美紀、起きて」
…お姉ちゃん?…っ!
「お姉ちゃん!?」
「しーっ!お母さんが起きちゃう」
「あ、ごめん」
でも、なんでお姉ちゃんがここに?
「あ、ビックリしてる?」
「だ、だって、今日は病院に入院だって先生が」
「抜け出してきちゃった」
抜け…
「いいの?そんなことしちゃって。それに喘息だって…」
「いやいやいや、こんなこと駄目だよ。喘息は大丈夫。激しく動いたり、煙吸っちゃったりしなければ」
「じゃあどうして。」
「それよりさ、美紀。私に何か報告があったんじゃないの?」
「え?」
「お姉ちゃん、聞きたいなぁ~」
なんでお姉ちゃんがそれを?
「ん?どうかした?」
「いや、なんでも…」
「そう?それで、何を伝えたかったのかなぁ?」
なんかお姉ちゃんがずっと笑顔だ。
何がそんなに楽しいのだろう?
「えっとね、ちょっとそこのランドセルとって」
「ん?はい」
「えーっと。…あった。これ」
「うん?テストの結果だね」
「点数見てみて」
「わ、全部50点越えてる!凄いじゃない美紀!」
「え、えーっと。えへへ」
お姉ちゃんに褒められた!
なんか目的は違った気がするけど、凄い嬉しいからいいや!
「うん、これなら」
ん?
「どうしたの?お姉ちゃん」
「ちょっと待ってて」
そう言ったお姉ちゃんは、タタタっと、自分の部屋に駆けて行った。
「あ、走ったりしたら…」
大丈夫なのかな…
「ん?どうかした?」
何かを片手に戻ってきたお姉ちゃんが不思議そうにしてる。
「いや、走ったりして大丈夫なのかなって…」
「大丈夫だよ。ありがとう」
「い、いや、別に」
なんでお礼言われただけで顔が熱くなるんだろう?
布団に居るからかな
「さて、美紀」
「なに?」
「テストを頑張った美紀にご褒美があります。」
「ご褒美?」
「うん、はいこれ。」
綺麗に梱包された長方形の箱を手渡してくるお姉ちゃん。
「開けていいの?」
「あげたんだから、美紀の好きにしていいよ」
「じゃあ……あ!!これって!」
箱から出て来たのは、少し前に、お姉ちゃんと買い物に行ったときに見かけて、
わたしが欲しがったネックレスだった
「それ、ホントに欲しがってたでしょう?だから、今回頑張った美紀にご褒美。
良く頑張ったね、美紀」
「あ、ありがとう!え、でも、これ結構高かったよね?」
わたしが諦めたのもそれが理由だったりする。
月に2千円のお小遣いを貰ってはいるけど、
さすがに3万は無理と思って諦めたのだ。
「美紀は値段なんて気にしなくていいの。それで?受け取ってもらえる?」
「う、うん!もちろん!」
「そう、良かった。…お手伝い頑張った甲斐があったかな」
「お手伝い?」
「ううん、何でもないの。さて、バレるとマズイから、私病院に戻るね」
「うん、分かった。」
「ちゃんと早く寝なさいよ?」
「お姉ちゃんに起こされたんだよ~」
「そうだったね、ごめん。」
「お姉ちゃんも早く寝ないとだよ?」
「そうだね。じゃあそろそろ本当に戻るね。それと、明日のご飯は美紀の好きなオカズが結構出るからね、楽しみにしててね?」
「もしかしてお姉ちゃん知ってたの?」
「さぁ?どうでしょう?」
また楽しそうに笑う。
「え~、答えてよ~」
「な~いしょ。それじゃあ、また明日には帰ってくるから。バイバイ」
「う~…バイバイ、お休みお姉ちゃん」
そうして、お姉ちゃんは病院に帰って行った。
・
・
・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ごめんねお母さん。無理言っちゃって」
病院に向かう車の中でお母さんに謝る。
ホントに突然言っちゃったから、迷惑掛けたかな
病院を抜け出したいなんて我が侭を言ったりしたのは、
なんでなんだろう。
明日帰るまで美紀の顔が見れないっていうのを理解したときに、
とっさに病院を抜け出したいなんて口走ってた。
「いいのよ。今回のはあたしもあんたに頼りすぎちゃってたのも悪いし、これぐらいはね。駄菓子屋のお婆ちゃんもありがとうって言ってたわよ。」
「そっか」
「にしても、なんで倒れるまで駄菓子屋の手伝いとあたしの仕事の手伝い
しちゃうのよ」
「私がやりたかったからだよ」
「そういうと思ったけどね…もう少しあんたは自分の限界を知っときなさい。美紀なんかもうこの世の終わりみたいな顔してたんだからね」
「そっか…美紀にも悪いことしちゃったかな」
「まぁ、あのネックレスで全部チャラっぽいけどね。3万なんていわれたから何事かと思ったわよ」
「あはは…どうしても美紀にあげたかったんだ。あの美紀がホントに頑張ってたから」
「頑張りすぎよ…そういえば美紀が頑張ってるってどうやって知ったの?
あたしでも知らないくらいに隠してたのに」
「ちょっとね。貸しを作ってある友達から教えてもらった
あなたの妹さん、凄く頑張ってるわよって。そこから何やってるかは、ほとんど推測」
「はぁ~、ホントあんたって、あたしとあの人の娘か疑いたくなるくらい
頭良いわよね」
「そうかな?」
「そうよ」
その後は他愛も無い話をお母さんとして、病院に帰った。
お母さんは私を頭がいいって言ってくれたけど、どうしても分からない
なんで私は美紀の顔が見れないってなっただけで、病院を抜け出したくなったんだろう。
・
・
・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「わぁ~!ホントにあのネックレスだー!」
お姉ちゃんが帰って10分くらいしたけど、わたしはネックレスを見て
まだはしゃいでいた。
「でも、本当、お姉ちゃんこれどうしたんだろう」
少し前といっても2月くらい前だから、そこから貯金しても間に合わないし、
いくらお姉ちゃんでも、3万円なんてなかっただろうし…
『まだ喘息と決まったわけじゃないけど、もし喘息なら、ちょっと頑張っちゃったのかもね』
そういえば、お母さんがそんなこと言ってたような…
「頑張ったって…」
『そう、良かった。…お手伝い頑張った甲斐があったかな』
「もしかして…」
『それでも、出来る子供を持つと親は頼っちゃうのよ』
「このネックレスの為にここ2月くらいずっとお母さんのお手伝いで貯金してたの?」
うちのお母さんはお手伝いを自分からやると、時々お駄賃といって500円くらいくれたりする。
理由を話してお手伝いとかだと、言った金額で貰えたりもする。
「わたしのために?」
だとしたら、お姉ちゃんが喘息の発作で倒れちゃったのって…
「わたしのせい?」
そこに思いたったら、さっきまで浮かれてた気持ちが一気に沈んでしまったような気がした。
「そんな…」
お姉ちゃんはどうしてそこまでして、わたしにこのネックレスを買ってくれたんだろう…
「わたしが喜ぶからかな」
いつか、お姉ちゃんに酷い事を言ってしまった時に言われた言葉をふと思い出した。
『大嫌いでも構わない、美紀が私を避けても構わない。
でも、私はお姉ちゃんだから、美紀が怒られる姿は見たくない。』
あの時は、どうして酷い事を言ってしまったんだっけ?
そうだ。
わたしはドジをしてお母さんに怒られてばっかりで、
お使いとかも毎回失敗して怒られてた時に、そっとお姉ちゃんが手伝ってくれる事があった。
その度にありがとうを伝えてた。
けど、それが続いていったらだんだんと、わたしが頼まれ事をされることが減ってきた。
そして、その反対にお姉ちゃんが頼まれることが多くなっていった。
その光景が多分気に入らなかったんだ。
お母さんの関心をお姉ちゃんがわたしから全部持っていこうとしてるように見えていたんだと思う。
自分のことなのに、あのときのわたしがわからない。
それで、『わたしから全部奪わないで!』なんて言葉が出たんだと思う。
考えてみればすぐ分かることだったのに。
お姉ちゃんからしてみれば、怒られてるわたしが可愛そうだったんだと思う
それで、手伝って手伝って手伝って…それを続ければわたしへの頼み事も減って、
結果怒られることも少なくなる。
それで続けてたことだったんだと思う
勝手な想像だけど。
「わたしの為に…か」
なんだろう
お姉ちゃんがわたしの為にって思うと、胸が温かくなる。
だけど、『お姉ちゃんだから』っていう言葉は胸が痛くなる。
なんなんだろう。
そういえば、結構前にさとっちに貸してもらった本で、
幼馴染が、好きな主人公からプレゼントを貰ったり、褒められて
凄い嬉しがってる場面があった。
今のわたしはそれに似てるっていえば似てるけど…
「でもお姉ちゃんだよ?本当の血の繋がったお姉ちゃんなんだよ?」
そんな人に好意を持つようなものなのかな。
それはただの家族に向ける好意じゃないのかな
「なんか、こればっかりはお母さんとかさとっちには聞ける事じゃないよね…」
お姉ちゃんには聞けるわけが無い。
「取り合えずもう寝よう!!これからも時間はあるんだから、じっくり考えて行けばいい!!」
そうしよう。
ゆっくり、自分の気持ちを整理していけばいい。
もし迷っても、このネックレスを見れば大丈夫な気がする。
お姉ちゃんがわたしの為に買ってくれたネックレスだもの。
大丈夫。
お姉ちゃんはどこにもいかない。
ゆっくり考えて行けばいい。
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
バチッ!!っと火が弾ける音で意識が戻ってきた。
そうだ、ゆっくりなんてしてたから
あの時にこの気持ちをちゃんと認めてれば、こんなことには…
「美紀?」
こんな時間に誰だろうと思い後ろを向いたわたしの目に入ってきたのは、
今一番愛おしい人の姿だった。
「あぁ…お姉ちゃん…お姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃん」
お姉ちゃん、わたしのお姉ちゃん。
私が遅かったから。
私が認めなかったから。
「み、美紀?どうしたの?」
あんな訳の分からない女になんかお姉ちゃんは渡さない。
絶対に渡さない
「お姉ちゃんはわたしのお姉ちゃん…わたしだけのお姉ちゃん…」
絶対に絶対に絶対に絶対に………
「美紀!」
突然肩に手を置かれた
「っ!…お姉…ちゃん…?」
なんでお姉ちゃんがここにいるんだろう?
そんなことを考えながら、わたしの意識は真っ暗になった。
これにて番外編終了です!
次回からは本編に戻ります。