14.偶には家で友達と遊びましょう
1話~13話(番外編含)改訂終わりました。
所々台詞も変えたので、一度全て読んでいただいた方も、
もう一度お読みくださると幸いです。
遅い
トイレに美紀と亜澄が行ってから軽く10分は経ってる
「亜澄ちゃん達遅いね〜」
目の前の藍佐もそう感じてたらしく、そうぼやいてきた
「ホントにね、何やってんのかしら」
「購買でも寄ってるんじゃないですか?美紀ならすぐ寄りそうですけど」
里美ちゃんはやっぱり美紀と付き合いが長いからか、的確な指摘を…
「それならそれで、メールの一つでも欲しい所だけどね」
「あはは、わたしはいちご牛乳が欲しいかなぁ」
「私は…コーヒー牛乳が良いですね」
「いや、二人とも、別に寄ってると決定してるわけじゃないからね?
…私もいちご牛乳が良いな」
「優樹奈ちゃん子供っぽ〜い」
「藍佐には言われたくない」
「優樹奈先輩、子供っぽいですね」
「里美ちゃんまで…」
でもホント、何やってんのかな
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「優樹奈はあたしのものだよ。妹如きなんかには渡さない。
ガキがのこのこしゃしゃり出てくるなよ」
「ガ、ガキ?」
「そうだよ、ガキんちょ。あんたからしたら、あたしがポッと出だと思ってんのかもしれないけど、
あたしからしたらあんたの方がポッと出の邪魔者なんだからね」
「邪魔者って…」
「邪魔だよホント。邪魔も邪魔、妹がいるなんて聞いてなかったからね
思わぬ誤算ってやつだね。」
「…お姉ちゃんの前とは随分と態度が違いますね。お姉ちゃんの前だと、
わたしと仲良くしたいとか言ってましたけど」
「それもホントだよ?友達としては仲良くしたいからね。
ただ、ライバルとしては仲良くしたくないね」
「要するに嫌いなんじゃないですか」
「うん、嫌い。大っ嫌い」
開いた口が塞がらないっていうのは、こういうことを言うのかな
この人の言ってる事がさっきから理解できない
嫌いなら話しかけなければいいのに
「なら話しかけなければ良いとか思ったっしょ?」
「え、どうして…」
「美紀ちゃんは顔に出やすいね、一個覚えた!」
「どうでもいいです…なんで分かったんですか」
さっきの、人を心底邪魔だと思ってるような雰囲気から
一緒にご飯を食べてたときみたいなとっつき易い雰囲気に戻ってる…のかな?
この人のスイッチがよく分からない
「あたしもそう思ってるもん」
「はぁ…ホント、なんなんですかあなたは」
「ん~自分でもよくわかんない!ただ優樹奈が好きなだけだね」
「す、好きなら告白でもなんでもすれば良いじゃないですか、
それもわたしを邪魔だと思ってるなら尚更…」
「相手はあの優樹奈だよ?同性愛なんていきなり言って理解するわけ無いじゃん。
ごめんなさい言われて、友達としても離れていって、ホントのおしまいだよ」
「まるで、体験したかのような口ぶりですね」
「そう?まぁ、想像に難くないような相手だしね」
「そう…ですね」
わたしの場合は、どうなんだろう?
妹なのに、姉を好きになって…
同性愛だけじゃなくて、姉妹同士って垣根もある。
どうなんだろう…
「取り敢えず言いたい事は言ったし、優樹奈達の所に戻ろうよ。
結構時間経っちゃってるし」
「わたしは勝手に連れてこられて、ボロクソ言われただけですけどね…あと20分しかない…」
「購買でも寄って戻ろっか、あの二人にはいちご牛乳でも買っていけば大丈夫でしょ」
「さとっちにはコーヒー牛乳でいいかな…あ、あの!」
さっさと行こうとしてた亜澄さんの背中に声を掛ける
「ん?」
「なんで嫌いって言ってたのに、わたしに親しくしようとするんですか?
ここにはお姉ちゃんも居ないんだから、さっきみたく冷たく当たればいいじゃないですか」
「一週間課題…言ったでしょ?苦手を克服するための自分の目標だって」
「ってことは…」
「そ、優樹奈と藍佐はただ仲良くなるだけが目的だと思ってるだろうけど、
今回の本質は、美紀ちゃんよりもあたし自身だね。美紀ちゃん嫌いを克服する」
この人には勝てない…なんとなくそう思ってしまうくらいに
この人は強く見えた
「それに、本丸を攻めるには、まず外堀を埋めるってのが常套手段だしね!」
「はぁ…折角見直しかけてたのに…真剣な雰囲気を少しは保てないんですか…あすみん先輩」
なんとなく、そう、なんとなくだけどこっちからも一歩前に行ってもいいかな
その一歩はこれにしよう
「おお!?」
「な…なんですか、気持ち悪い」
「い、今なんて言った!?」
「負けた気がするのでもう言いません」
そう言い捨てて、先輩を置いて先にトイレを出る。
そういえば、なんで10分近く誰も来なかったんだろう?
「お願い!もう一回だけ!」
「嫌です……時間無くなりますよ、あすみん先輩」
「おおお!!!…あ、ちょっと待ってよ美紀ちゃん!」
「その美紀ちゃんっていうのも、馴れ馴れしいんで止めて下さい。仮にもライバルなんですから」
「おや?認めるんだ、自分の気持ち」
「…先輩を見ていたら、弱い自分が嫌になりました」
「ふ~ん」
「なんですか、面白そうな声だして」
「いや、別に?ほら、行こ」
「あ、ちょ、待ってくださいよ先輩!」
「早くしないと置いてくよー!」
ちょ、ホントに置いてくき!?
「この間と一緒じゃん!もう!」
そう叫んでわたしも走り出す
…なんとなく楽しい気分なのは気のせいだ
笑顔なのも気のせいだ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「優樹奈~藍佐~、遅くなってごめ~ん!」
前を歩いてた先輩がお姉ちゃんたちを呼びながら教室に入っていった
だからなんでこの人は人をよく置いてくの?
購買に行くときも2回くらい置いてかれたし…
「待ってくださいよ先輩!…ごめんねお姉ちゃん、遅くなって」
「美紀は拉致られただけなんだから気にしないの。こっちのバ澄がいけないんだから」
「バ、バ澄!?優樹奈さん、わたしの名前は亜澄ですよ?」
「知ってるわよ、ワザとなんだから」
「酷い!」
「亜澄ちゃん、遊ぶのも見てて楽しいけど、ご飯食べないと時間無いよ?」
「ありゃ、もうこんな時間か」
「先輩のせいで、わたしまで急がなくちゃいけないじゃないですか…さとっち、ただいま」
「おかえり、随分と遅かったわね」
「亜澄先輩が長くてね」
「ちょい美紀ちゃん!?それだとあたしが長い人みたいな…あ、ちょ、藍佐」
「は~い、亜澄ちゃんは大人しくお弁当食べちゃいましょうね~」
「え、ちょ、その量一気はさすがに…」
何やってんだろうあの人は
「もはや漫才よね、あのお二人は」
「そだね…あ、さとっちこれ。購買で買ってきた」
「ホントに寄ってたのね……あ、コーヒー牛乳」
「ん?」
「いえ、何でもないわ。ありがとね」
「いえいえ~、お姉ちゃんはこっちね」
「え、私も?ありがと…いちご牛乳だ…」
「どしたの?お姉ちゃん」
「いや、なんでもない。ありがとね」
「どういたしまして!」
お姉ちゃんに感謝されるとやっぱり気分がいいなぁ
普段はお礼を言う方だし
「そういえば美紀」
「ん?」
これから食べようという時にさとっちが話しかけてきた
「亜澄先輩のこと、ちゃんと名前で呼ぶようにしたのね」
「まぁ、ちょっとね…さて!わたしも食べちゃわないと」
「あと5分だからね、美紀」
「え、そんだけ!?」
さとっちに言われて時計を見てみたら、ホントに5分と少しで昼休みが終わりだった
「早く言ってよ~!藍佐~!」
「亜澄ちゃん達が戻ってくるのが遅かったんだよ~」
なんか向こうでも似たようなことが起こってるし…
「早く言ってよさとっち~!」
「あなたが戻ってくるのが遅かったんじゃない…」
「「うわ~!!」」
「ホント元気だね、美紀も亜澄も…」
お姉ちゃんのぼやきを聞きながら、わたしと亜澄先輩は弁当を消化した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「やっと授業終わったね…」
ひたすらに退屈だった…特に6限の現文は
よりにもよって、○読み音読なんて…
「お疲れだね、優樹奈ちゃん」
「暇疲れがここまでとは思わなかった…」
「羨ましいなぁ~、授業で暇疲れ」
「そういう藍佐だって、それなりに成績良いんでしょ?テストで60点以下見たこと無いけど」
「ここまで頑張ってその点数だから、優樹奈ちゃんが羨ましいんだよ~」
「二人して優等生ですかこのやろー!!」
「ひゃあ!?」
亜澄が叫びながら後ろから抱き着くとか、
教室で堂々と何やってんのよこの子は
「あたしなんか全部50点台だよー!!このやろー!!」
「い、いや、別に悪い点じゃないと思うけど…」
「優等生このやろー!!」
「はいはい亜澄ちゃん~、優樹奈ちゃん困ってるから離れようね~」
「う、藍佐も優等生~…」
「亜澄ちゃんも優等生優等生~」
あれ、なんか目の前に親子が居る…
「あ、そういえば。優樹奈、今日遊びに行ってもいい?」
藍佐の抱擁から抜け出し、そんなことをいってくる亜澄
部屋汚いし、わざわざ来てもらうのもなぁ…
「駄目」
「そういえば。優樹奈、今日遊びに行ってもいい?」
「…駄目」
「そういえば。優樹奈、今日遊びに行ってもいい?」
「…」
「そういえば。優樹奈、今日遊びに行ってもいい?」
「何も言ってないじゃない…」
「えへへ、顔に書いてあったから先読みしてみました!」
「はぁ~、まぁこれといって駄目な理由もないし…いいけど…」
「けど?」
「部屋汚いから…ちょっと遠慮してほしいというか…」
「部屋の掃除くらいなら外で待ってるよ?」
「いや、待ってもらうのが申し訳ないし…」
「もう、優樹奈は遠慮しすぎだって~」
「いや、亜澄を待たせてると、気配消して部屋に忍び込んできそうだから怖くて…」
「そっち!?え、そっち?いや、そっちってどっちだ?あれ?」
亜澄が自分でぐるぐる目を回しだした
やっぱり馬鹿だこの子は
可愛い馬鹿だ
「じゃあわたしも亜澄ちゃんに着いてくから、それでどう?」
「え、藍佐も来てくれるの?…なら、良い…かな」
「ありがとう、優樹奈ちゃん」
「え~、藍佐だと良いのかよ~この優等生~」
「はいはい」
「んじゃあ、優樹奈の家にこのまま直行ってことで!」
「お~」
「はぁ~…あんまり気乗りしないけどなぁ~…」
「あたし達道知らないから、優樹奈案内よろしく!」
「はいはい…あれ?亜澄昨日知ってるみたいな口ぶりじゃなかった?」
「ん?知らないよ?あの辺で優樹奈見かけたことがあるから、勘で」
「なんだそりゃ…じゃあ、行きましょ」
「「お邪魔しま~す」」
亜澄がああいってたし、部屋掃除のために二人にはちょっと待ってもらおうかな
あ、美紀にメールしとかないと