第八話
夏休みもあっという間に終わり、九月。
まだまだ暑い日が続いているが、日差しは柔らかめになってきた。
死神助手の仕事は順調。まあ順調も何もないほど簡単なわけだが。
毎日が飛ぶように過ぎて行く。今まで何となく一日過ごしていたけれど、毎日死神さんに会える楽しみがあるから常にうきうきしていて、今日も一日頑張ろう、と思える。
なんか名塚変わった?とかよく言われるようになった。
昼休み、いつものようにミサキと話していた。
「みてみて熊さん(担任)の似顔絵めっちゃうまく描けたー」
机に落書きをしていたのだが、いきなりミサキが恋バナをし出した。
「名塚好きな人いるでしょ」
いるよ。人間じゃないけど。心の中で答える。
「いないって。まさかまさか」
「いや、なんか最近変だもん!ニヤニヤしてる率ハンパないし!!ぜ~ーーったいいる!!」
「じゃあ、ミサキは?ミサキこそいそう」
「じゃああたしが言ったら名塚も言ってよ」
「うっわー、やっぱいるじゃん。はっ!あたしいないから言いようがないし!」
「あたしもいないし!」
「はあー??拓馬は?ハンド部キャプテン同士として仲いいんじゃない?」
「ふざけんなよー、部活の連絡くらいしか会話しないし!苗字で呼び合う程度の仲だから」
噂をすれば影、ちょうど拓馬が教室に入ってきた。
げ、聞かれたかな。まあいいか。
拓馬はちらっとあたしの方を見た。まただ。夏休み明けからあいつしょっちゅうあたしのほうチラ見するんだよなあ。何なの?
一応幼馴染なんだから、言いたいことがあるなら言ってくればいいのに。
はあ。もし死神さんに出会ってなかったら、あたしは拓馬に恋とかしてるんだろうか?
確かにあいつはかっこいい。たぶん学年でいちばんかっこいい。
死神さんと比べるからって感覚まで鈍るわけではない。
全くときめかないだけ。
拓馬に恋とか変な想像してしまったので頭からがんばって消した。
あたしには、死神さんだけ。叶うわけがない。
叶わなくて全然構わない。
ただ一緒にいれたらそれでよし。
「まただ。またあいつ、、、。」
夜。
拓馬は窓に張り付いて信じられない光景を見つめていた。
真千子が飛んでる。ありえない。幻覚ってこんなはっきりしたものなのか。
でも毎日見える。
真っ黒いローブの男と一緒に。
「誰なんだよあいつ‥‥」