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第六話

「名塚、なんかにやけてる!妄想すんなよ!」

「してないわ!え、にやけてる?そうかー、はははっ!」

「え、なんでそんな機嫌いいの?」

「べっつにー♪」

昨日、あのあと気が付いたら自分の部屋だった。

そして左手のひらには、前より一回り大きめの魔法陣のようなアザ。

夢じゃ、なかった。

今日から仕事が始まるんだ!!また死神さんに会える!!

いや、これからは毎日会える!!

そう思うと、どうしようもなく気持ちが浮かれる。

今日はどんなものも輝いて見える。

死神の仕事は夜の12時からはじまるらしい。ああ、早く夜にならないかな。

地学の授業なんて頭に入らない。とにかく早く時計進んで!!



明日も学校がある。12時から、何時まで仕事が続くのかはわからないけれど仮眠をとっておくことにした。

でも、ドキドキしてちっとも眠れない。

うとうとしはじめたころ目覚ましが鳴った。

11時40分、あと20分で死神さんが迎えに来る!

あと10分・・・。ああ落ち着かない。

あと5分・・・。ジャージでいいよね・・・動きやすいほうがいいはず・・・。

ああ、あと1分しかないっ!!心の準備が・・・・・・。

カチ。

12時になった。

カーテンがはためく。背の高い影が現れた。

「こんばんは」

ああ。会えた―――

「行こうか」

ちょっとニヤっとした表情に目を奪われる。こんなちょっとしたところにも、死神さんにはどこか怪しさがあふれている。とてつもなくすてきな怪しさ。

ちょっとくらくらしそう。

ふわっと体が宙に浮いた。もう、これには慣れそうにない。顔がほてってしまう。

死神さんの黒いローブが風にはためく。今日は昨日と違って、どこに連れて行かれるのかわからないわけではないからまわりを見る余裕がある。

死神さんは昨日はずっと空を飛んでいるのかと思ったけれど、20mごとくらいに建物の屋根などに足をついて、それからまた飛んでいる。

なんか盗賊っぽいな・・・。

「あの、死神さんが見える人は少ないってのは聞いたけど、あたしは他の人から見えてる?」

大変だ。

飛んでるのなんて見られたら相当まずいよ。

「大丈夫だよ。僕といるときは、君の姿はほかの人間からは見えない。まあ死神が見える人間からはみえてしまうけどそういう人間はあんまりいないから問題はないんじゃないかな」

「ほっ、よかった。」

「そうだ、君の名前聞いてなかったね」

死神さんが少し振り向いた。

横顔、きれいだな・・・

「名塚真千子です」

「真千子ちゃんね。よろしく」

うわ、なんか幸せー・・・。

「きょうの一件目はここ」

地面に降りた。

見覚えのある墓地だ。

そうそう、ばあちゃんのお墓があるとこだ。

「これがリストだよ」

渡されたのは分厚い皮表紙の本。小さいがずっしりと重い。表紙にはローマ字でも漢字でもアラビア文字でもない見たことのない文字が書かれている。

「これに、、、死者、の名前が?」

「そう、あと天国行きか地獄行きかもね」

天国と地獄。

思ったより重い役目かもしれない。

本の重みが、命の重みのように感じてしまう。

「ほとんどの人は天国行きだから。真千子ちゃんは鎌を振り上げるとき、リストの金色にひかってるページの名前と行き先を読み上げてくれるだけでいい」

「わかりました!」

「よろしくね」

死神さんが墓地の道を進んでいく。あたしも後に続く。

背高いんだな。担任の熊田(188cm)ほどじゃないけど・・・。

もたれかかってみたくなる。もちろん実行に移したりしないけど。

でも死神さん体温冷たいからやっぱいいかも。今もなんか肌寒い。

夏はいいけど、冬はきついかも。

いろいろ一人で考えていると、死神さんが立ちどまった。新しいお墓の前。

どうやらここのようだ。

リストに目を落とすと、1ページだけ金色に光っていた。ここだと思いめくる。

名前と生年月日、命日と顔写真が載っていて免許証みたいだと思った。

そして、一番下の段には「天国」の文字があった。

心が引き締まる。今からあたしの初めての仕事。

ああほんとに、あたし不思議な世界にいる。

死神さんが鎌を振り上げた。ふわふわっと、よく光るシャボン玉のようなものが見えた。あれが魂なんだろうか?

「山川、ハツエさん。天国行き」

鎌が振り下ろされる。

と、死神さんはあたしのほうに寄ってきた。

「忘れてた」

冷たい手があたしの契約印をなぞる。契約印が、、光ってる?

あたしはぎょっとした。

真っ白な光と一緒にあたしの手のひらから白いきらきらの鍵が引き出されたんだから。

「これが天国の鍵ね。開錠はこっちでやっておくから」

まもなく、光が集まってきて扉の形を作った。死神さんが鍵で開ける。

シャボン玉は扉の中に入っていった。

しばらくすると扉を作っていた光は薄れていって、また夜の闇が戻った。

「これで一件目は終わり。今日は二件で終わるから」

あれで、いいのか。

簡単というか、あたしはいてもいなくても変わらないんじゃないかと思うほどのものだった。

でも、2分もかかっていないだろうに、長く感じた。おとといからありえないことの連続で混乱しているのだろう。

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