第五話
ストン。
地面に着いてる。
「ここどこ?」
「ここは、そうだなぁ、、人間は来れない場所」
「え?でもあたし人間、、」
「ああ、それはね」
死神さんがあたしの左手を持ち上げた。
「つめたっ!」
思わず声に出してしまった。
死神さんの手は氷より冷たかった。
人間じゃないから体温もないのか。
そういえばここは何の音も聞こえない。
町の明かりもどこにいったんだろ。
あたしと死神さんだけが世界に取り残されているみたい。
そう思うと、なんだか改めて普通とかけ離れた世界にきたことを実感する。
死神さんの手が左手のひらに触れた。あのアザのところだ。
「これだよ。契約印」
「契約‥‥」
「そう。仮だけどね。昨日はごめん、驚かせて。あれはこの契約印をつけるためだったんだ」
「はあ」
契約って何の?あたしどうなるの??
いろいろ疑問があった。
でもそれ以上に、絶対踏み込めないような、神秘的な世界にいることに興奮していた。
こんなことが、漫画みたいなことがあたしに、本当に起こってる!
しかも、ずっと探してた人が連れてきてくれた。
死神さんが口を開く。
「君には、助手になってもらいたい」
助手。死神さんの?
じゃあ、じゃあなったら、毎日会えるんじゃない!?
「助手の仕事はそんなに難しくないから引き受けてくれると嬉しいんだけど」
引き受ける。絶対。
今すぐ返事しようかと思ったが、怪しまれると嫌だからやめておく。
死神さんの次の言葉を大人しく聞く。
「死神の仕事は、埋葬された死者の魂を切り離して天国または地獄へ送ること。死者のリストってのがあって、それに沿って魂を刈るんだけど、そのリストの管理と、天国の鍵、地獄の鍵の呼び出しが助手の仕事。」
話し終えた死神さんは、鎌をくいっと示して見せた。
「どう?あ、残念だけど、君たちの世界のお金は報酬として出せないんだ。その代わり、運が結構良くなる」
「へぇ~!た、例えばどういう風に‥‥?」
「とりあえず、助手をしてて信号に引っかかることは無いよ」
それって、かなり運がいいよね!?
このへんで引き受けておこうか。
「あの!やります」
死神さんは一瞬驚いたような顔をした。わ、言うの早すぎたかな‥‥
がしゃり。
重い音を立てて鎌が構えられた。
「ありがとう。そう言ってくれると思ってた」
死神さんはそう言って、あたしを引き寄せた。
当然、心臓がドキドキしすぎてはち切れそうになる。
「悪いけど、もっかい契約印押すから。痛みとか外傷はないから、安心して」
背中に冷たい鎌の感触。
その日あたしは、死神さんの助手になった。