第四話
体が重い。
動けない。
セミがうるさいな・・・
セミ?
あたしはがばっと起きた。
まぶしい太陽の光が目に飛び込んでくる。
あたし、鎌で―――
死神さんがいない。
なんで・・・?
なんであんなこと?
あれは全部夢?
ケータイで時間を確認する。学校を出てから30分しか経ってない。
気を失っていたんだろうか。
ずいぶん寝たような気がする。
まさか丸一日寝てたってことはないだろうな!?いや、日付も今日のままだ。
不思議で仕方なかった。
それよりも、悲しみの方が大きかった。
なんで死神さんは鎌であたしを斬ろうとしたの?
殺そうとしてた?
十年も待ったのに。
こんな仕打ちあんまりだ。
いや、あたしが勝手に浮かれて待ってただけか。
バカみたいだ―――。
「ただいまー」
ふらふらとした足取りで、それ以上にふらふらした心で、ボロアパートにあたしは帰ってきた。
墓場の近くにこんなボロアパートがあるから、近所の人でなければ気味悪がるかもしれない。今はもう全部どうでもいいけど。
「おかえりー、真千子見てこれ鈴木さんからもらったの!にあう?」
「あーうん、きれいきれい。いいよすごい」
「・・・あら」
機嫌悪いって思われたかな。違うんだよ、これまでにないほど沈んでるんだよ。
このまま寝よう。
なんか疲れた。
起きたら真っ暗だった。
「うそっ、一時!?あっちゃー、明日数学の小テストなのに・・・」
うーん、でもワーク仕上げる気力も無いよ。明日休もうかな。
部屋はほんのり明るかった。満月だ。
(きれいな月とか見たら、余計切なくなるし・・・)
大きくのびをする。
「ん?なにこれ」
左の掌によく見ると黒い模様みたいなのがある。
月明かりにかざしてじっと見てみた。
細かい。外国語?
魔法陣ぽくも見える。
直感で、死神さんだと思った。
それ以外に理由が考えられない。
ちょっと気味悪いよ。
なにこれ?
「もうホント、なんなのよ・・・」
またなんにも掴めないまま置いて行かれた。だいたい、再会できたからってなんなの。どうなるの。
なんであんなに期待してたんだろ。
ああでももう一回会いたい。
でもどうにもならない。
どうやったら会えるのかなんてわからない。無力さでものすごく苦しい。
墓地に行ったら会えるかな、とふと思ったが、さすがに真夜中に墓地に行く気にはなれない。
お願い、もう一回でいいから。
祈るような気持ちで、左手の魔法陣を見つめた。
「はいそこまでー回収ー」
白紙。0点決定。
5点ならとったことあっても0点ははじめてだな。
今日はきっと何も手につかない。
頭の中ずっと昨日のことがぐるぐるループしっぱなし。あと、この手のひらのと。
いつのまにか学校が終わっていた。
親友のミサキに大丈夫?と聞かれたからうなずいておいた。
もう今日は墓地は通らない。
忘れよう、ぜんぶ。死神さんのこと。
全部忘れたらいいんだ。
でもじゃあこのアザはどうしたらいいの。
「はあ・・だめだなあたしくよくよしてて・・・」
昨日寝すぎたせいか全く眠れない。何も手につかないから仕方なくふとんに入っただけであって。
ラジオをつけて気を紛らわせていた。
0時の時報がなる。
何気なくピッ、ピッ、ピッ、ピーーーッっという時報を心の中で言ってみた。
「ピーーーッ」のとき、0時ちょうど。
急に部屋の中が寒くなった。
最初は何かの具合で冷たい風でも吹いたのかと思った。最近異常気象とか言ってるし。
でもあたしはこれを知ってる。
まさか!
なんでこんなとこに来るの!?
跳ね起きた。
「し、死神、さん・・・」
「こんばんは」
あたしは鎌に目がいった。
あたしあれで抱え込まれて斬られかけたんだった!!
後ずさる。敵うはずがないのはわかっているけど、距離を取らずにいられない。
「ちょっと連れて行くよ」
「わっ、ちょ、うわわ!!えーーーーーーー」
ちょ!
おんぶとか心臓が!!
てか近いって!!!!
「あ・・・!飛んでる?」
目の前の、死神さんに背負われている状況も十分びっくりだけど、あたしは自分の体が宙に浮いて、スイスイ移動しているのに心を奪われた。
「もう少しで着くから」