第三十四話
今日でやっと、グリムとは最後だ。
今は、グリムのことが死ぬほど嫌いというわけでもない。
あれ以来普通に接してくれたし。
でもやっぱり死神さんのほうがいい。
長い一週間だった。
死神さんが帰ってきたら、謝らなきゃ…。
「これでおーわりっ。お疲れ様ー」
グリムが伸びをしながら言う。ちょうど四件目が終わったところだ。
「今日で最後になるんだよなぁ…」
「うん~」
「なんか嬉しそうだし…酷いな〜、オレ、もっとなつかチャンと一緒にやりたかったよ」
う、またこんなこと言ってる。
まあいいか。これで最後なんだし…。
こいつは誰にでもこんなことをポンポン言ってるんだろう。
特に気にしなかった。
「あのさぁ~、、。」
グリムの声の調子が、一段だけ低くなった。
どしたんだろ…?
「これ、口先だけじゃないんだけど」
うわ、何言ってんの??
焦った。
グリムはあたしのほうをまっすぐ向いている。
なんでこんな、真剣な空気になってんの…
なんかまずいことが起こりそうだ。
「なつかチャンってさ、真面目に助手やってくれるよね。一日も休まないしさ」
「そんなの、当たり前だよ…もう帰ろうよ」
できる限り明るい口調で言った。
この空気を払拭するために。
でもグリムは変わらない。
そして、案の定とんでもないことを言ってきた。
「オレの助手になってくんない?」
「は…はあっ!?それは、できないよ!」
「できるんだよね~、それが」
ぞくっとした。
グリムの目が、死神特有の妖しさを帯びている。
チャラチャラしたかんじの目しか知らなかった。
こいつもれっきとした死神なんだ。
今日は月がない。弱々しい街灯だけが唯一の灯りだ。
闇より暗い、死神のローブがはためく。




