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第三話

なんとなく、墓地を通って帰ることにした。

あたりが薄暗い。太陽が雲に隠れたからだろう。

ゆっくり歩いていく。

小さな墓地だからこれだけゆっくりでも一分もせずに通り抜ける。

空を見ると、ちょうど太陽が雲の間から出てきたところだった。

「まぶし・・・」

太陽を直視してしまったので、視界に太陽の形の黒丸ができる。

ああ、目に悪いな・・・

視線を前に移した。

黒丸が、人の形に変わった・・・?

いや。

人が立ってる。

目が見開かれているのが自分でわかる。

十年前と一緒。

真っ黒いローブ。大きな鎌。

ただフードは被っていない。

間違いない。

死神さんだ。

うそ・・・本当に?

まさか会えるとは思ってなかった。

心臓のドキドキが止まらない。

「また会ったね」

「死神さん」

思い出とちっとも変っていない。

ということは、、

やばい。かっこよすぎる。

まともに見れないくらい。

「今度はさん付けなんだね」

うわああ、なんか、恥ずかしい!!

死神さんとか呼んでしまった!!

頭の中ではいつも死神さんって呼んでた。さん付けするのが自然に思えて。

でもそれを本人にやったらこんな恥ずかしいのか・・・。

ああ、なんかもうやだ。この人とはうまくしゃべりたい。噛んだらどうしよう・・・

そんなあたしの忙しい思考とは反対に、死神さんのまとっている空気は穏やかで堂々としている。

落ち着いた人なんだな。

まるでいつまでもかわらないような―――

はっとした。

少し背筋が寒くなる。

死神さん、十年前と全く、どこも、少しも変わってない。老けていない。

やっぱりこの人、人間じゃないのかな。

あたしは霊感なんてないと思う。

これまで生きてきて、死神さん以外に不思議なものに出会った経験はない。

だから、ここに人でないものがいるということに少なからず危険を感じた。

でも、死神さんはあたしの心の中でも読めるのか、安心させるように微笑みかけて、「いやー大きくなったねぇ」と言ってくれた。

あたしのこと覚えてたんだ。

顔が熱い。

うーん、どうなんだろう。

本当に死神?

ただのコスプレだったのかもしれない。老けないのも童顔とか。

聞いてみたら早いけど、緊張してしまう。

まともに会話できないレベルのイケメンなんだから仕方ないよ。

でも。

でもでもこれを逃したらもう会えない気がする。

そうなったら一生後悔するだろう。

行け真千子!!!がんばれ!!

「あの」

目を見るんだ!!

「死神なんですか?」

よし言った。

あとは答えてもらうだけ。

「うん」

やっぱりそうなんだ。

でもこれは十年前も聞いたんだった。

あんまり答えがあっさりしすぎているから気になるんだ。

「えっとその、鎌で何かを?」

「ああ、これはまあ魂を持っていくための道具だね」

普通だったら信じないだろう。

でも死神さんの言っていることは少しも不自然でないと思えるのだ。

なぜかはわからないけれど、瞳を見ていると本当に吸い込まれそうで。

それに、暑いはずなのに、死神さんが来てから一気に気温が下がった。少し寒いくらいだ。

「やっと見つけた」

「え?」

ガシャ・・・

「!?なっ、何!?離し」

いきなりだった。

背後に迫ってくる大鎌の光の、残像だけが残った。

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