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第壱話 プロローグ



初投稿なので、変なところがあればご指摘ください。






俺、土岐藤海人(ときとうかいと)は今、非常に後悔していた。


何故か? 説明しよう。



―『俺と旅しようぜ』



その言葉が始まりだった。


俺の幼馴染である、一ノ瀬の言葉である。


当時、俺は面倒だからと断っていたのだが、一ノ瀬の熱意に負けてしまった。


最初は乗り気でなかった俺も、旅をしている内に旅を楽しむようになっていた。


旅と言っても昔からこの世界には魔物があふれているから危険極まりない。


俺と一ノ瀬が強くなかったら今頃死んでいただろう。


一ノ瀬は『忍』である。


俺は『魔剣士』。


『魔剣士』というのは『魔剣』使いの事である。


そもそも『魔剣』とは何か。


『魔剣』とは、古代の遺産であり、魔術付加が施されている剣の事である。


『魔剣』は世界に十二本あり、その中で最も有名なのが『聖剣』である。


『聖剣』を持った者は『魔剣士』と呼ばれず、『勇者』と呼ばれている。


『勇者』、魔物を統べる『魔王』を倒す戦士の事である。


現在も魔王は健在しているらしい。


それは何も先代勇者が怠け者だったわけではない。


魔王にも子供はおり、次々に魔王が誕生しているだけの話。


話が逸れた。


兎にも角にも、俺はその十二本の中の一本である魔剣を所持している。


俺が持っているのは、最も存在を知られていなかった幻の十二本目、『八咫烏(やたがらす)』という刀である。


まぁ、八咫烏についてはまた今度話そう。


今は何故後悔しているかという話だ。


そんなわけで、俺と一ノ瀬は旅をし続けている。


そして、今から遡ること、数十分。




















































『……目標、北東に二キロ』


俺の左耳にしてある小型機械から、一ノ瀬の声が聞こえてきた。


「了解」


それに俺は短く答え、北東に向かって森の中を走った。


今、俺達が何をしているかというと。

旅費を稼ぐため、ギルドで依頼を受けているのである。


依頼内容。

ある商人がよく使う道に魔物が棲みついてしまい帰れなくなってしまったから、魔物を排除してくれとの事。


一ノ瀬は偵察に向かい、その情報を俺に伝える。

俺はその情報を頼りに敵を見つけ、排除する。

これが、俺達の基本戦術だった。


走ること約十分。

俺は目標であるライオン型の魔物、ライオットを視界に捕えた。


「一ノ瀬」

「おうよ」


俺が小声で呼ぶと、上から声が帰ってきた。


「援護頼むぜ」

「分かってるよ」


俺は刀を抜き、ライオットの前に躍り出た。

ライオットはそれに反応し威嚇してきたが、そんなことにはもう慣れてしまい、まったく気にならない。


「おら!」


一気に踏み込み、ライオットの顔面を斬りつけた。

それをまともにくらったライオットはのけぞり、悲鳴を上げた。

そして、無防備になった喉元にクナイが飛んでき、深々と突き刺さった。

俺はダメ押しに腹に突きを繰り出した。


「グルゥゥ………」


ライオットは地に倒れこみ、そのまま動かなくなった。


「おつかれ」


それとほぼ同時に一ノ瀬が木から飛び降りて来た。


「クナイ、ナイスタイミングたっだぜ。さすがだな」

「そう褒めんなよ」


俺達はこのことを報告するため、街に戻ろうとした。


―その時。


『きゃぁぁぁぁ!!』


女の悲鳴が聞こえた。


「なんだ今の?」

「こっからそんなに離れてないぞ」


俺達は同時に駆けだしていた。


悲鳴を上げた女はすぐ見つかった。

そいつの周りにはモンキー型の魔物、コングの集団がいた。

数にして、十五匹といった所か。


「助けるぞ!!」

「おい、一ノ瀬!」


一ノ瀬は俺の制止も聞かず、デカいクナイを両手に飛び出した。


「ちっ!」


俺も再び刀を抜き、女に飛びかかろうとしていたコングを蹴り飛ばした。


「え……?」


助けられた女は呆然としているようだった。

その間にも、一ノ瀬が次々にコングを倒していた。

そして、分が悪いと見たのかコング達は立ち去って行った。


「おい、一ノ瀬! ああいう時は待てっていつも言ってんだろ」

「す、すまん……」


一ノ瀬は人を助ける時は、いつも周りが見えなくなる。

そのことを窘めていると、女が声をかけてきた。


「あの、ありがとう」

「いや、別にいい。それより、どうしてこんな所に一人でいる?」

「仲間とはぐれた、とか?」

「あ、いや、その」


その時、俺はふと女の腰にある剣に目を移した。


「なるほど、お前があの勇者か」

「うっ……」


俺は一人で納得していた。


「おい海人、どゆこと?」


一ノ瀬が首を傾げていた。


「コイツが持ってんのは聖剣。てことは勇者」

「確か今の勇者って、すげぇ弱いんだっけ?」

「うぅ……」

「しかも、そのせいで仲間もできない寂しい奴とか」


一ノ瀬の野郎、本人の前でよく言えるなそんなこと。


「それが、この子?」

「…………ま、そういうこと」

「うぅ……」


気が付けば、勇者さんは涙目に。


「そ、そうよ! 私は歴代最弱の勇者で、仲間もいない寂しい勇者だよ!! 悪い!?」

「あ、いや、そのなんかすまん」


勇者にキレられた一ノ瀬。

その時、一ノ瀬が俺に小声で話しかけて来た。


「なぁ、海人」

「………なんだよ」

「俺らがこの子の仲間になってやんね?」

「はぁ!?」

「ちょ、大きい声出すなよ」


突然何言ってんだコイツは!


「そう怖い顔すんなって。だって勇者の仲間になったら、あの四天王と戦えるんだろ?」


一ノ瀬が言っている四天王ってのは、魔王の臣下の中でも最も強い四人の事である。

コイツは、その中の一人である『最速のフィリア』と言われているサキュバスに勝つことを目標としている。

一ノ瀬曰く、ソイツに勝って『最速』の称号を手に入れたいそうだ。


「お前だって魔剣士リベルと戦えるんだぜ?」


リベルは現在、魔剣士の中で最強とされている四天王の一人である。

確かに一度は戦ってみたいものの、はっきり言ってめんどくさい。


「それに可愛いしさ」

「………」


まぁ、確かに勇者さんは可愛いだろう。

だが今それは関係ないだろ、と言いたい。

俺が何と答えようか迷っていると、それを肯定とみなしたのか、一ノ瀬が勇者さんに向き直った。


「なぁ、勇者さん」

「……なによ」

「俺達が仲間になろうか?」

「……………今なんて?」

「おい、一ノ瀬……!」

「だから、俺達が仲間になるって言ってるんだよ」

「ほ、ホント!?」

「あぁ」


あぁ、もう取り返しがつかない。

やってしまった。

なんでさっき「めんどくさいから」と言えなかったんだろう。


「なぁ、海人」

「………………………………………………………………………………………………そうだな」

「や、やったぁぁぁあ!!」


こうして、現在に至る。

何故あの時一ノ瀬を止めなかったのか、めんどくさいと言えなかったのか。

俺の中で後悔の念が激しく渦巻いている。


そうして、俺達は勇者の仲間になってしまったのだった。





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