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潜入01

作者: LJ6

「依頼だ。」

「ああん?何だよオヤジ。」


この時代には全く似合わない葉巻を吸っている小太りの男と、長めの金髪を黒のヘッドバンドで書き上げている男が向き合っている。


煙がやや部屋に充満してきた。

金髪の男は煙が苦手なのか、周りの空気を手袋がはめられた手でかき回した。


「本日の依頼人は・・・」

「あ~、もう!そんなんどうでもいいから!どこ?」

「あそこだ、某工場。」

「なんだよそれ・・・。ま、俺は分かるからいいけどよ。」


引き出しからびっしりと文字と図面が書き込んである紙切れを取り出した。


「これが工場の見取り図だ。」

「サンキュー。貰っとくぜ。」

と言って、その紙を四つ折りにして懐にしまう。


「そして報酬は・・・、んまあ2億が妥当だろう。」

「ん?いつもより多めじゃないか?」


男は葉巻の煙を揉み消し、続けた。

「今回はかなり広いからな。潰すのにも時間がかかるだろう。それに・・・」

「それに?」

「いや、何でもない。とにかく、頼んだぞ。」

「Le consentement!」


金髪の男は部屋を出た後、その足で『調達屋(ちょうたつや)』に向かった。

調達屋とは、その名の通り必要な物資を揃えてくれる店だ。


「おう、仁じゃねえか。今日はどうした?」

無精髭を生やした大柄な男が尋ねる。


「いつも通り、仕事だ。いちいち聞くなって、店長(マスター)。」

金髪の男は仁と呼ばれている様だ。

「自動小銃を一丁、サバイバルナイフ二本、ワイヤー、グレネードを十個貰おう。」

「おいおい、いつもより注文が多いな。」

「なんだ、無理なのか?」


そうではないことを前提で聞く。


「そんな訳ないだろ。料金は銀行からだな。」

「ああ、そうだ。」


注文通りの武器がカウンターに並ぶ。

それを全てアタックケースに詰める。


「よし、確かに貰ったぜ。んじゃ。」

「また頼むぜ。」



翌日。


某工場の前に一台のトラックが停まった。

門番が歩み寄る。

「えっと・・、連絡は聞いているよ。通ってくれ。」


工場内に入っていくトラックの座席で、()は笑った。

「日本の警備も相変わらずダメダメだな。」


人目のつかない場所でトラックを降りた。

そして荷台に入り、運送会社の作業服から迷彩柄の服に着替える。

装備を身に着け、ヘッドバンドを被った。


「潜入開始。」

静かにそう呟いた。




「さあてと、そろそろ交代の時間か。」

警備員は大きく伸びをした。

時刻は既に午後10時、夏場とはいえ外は闇に包まれている。


彼は最後に周囲を見渡した。何も変わった所はない。

が、更衣室の鍵を取り出したとき、出入り口の扉のドアノブが僅かに回った。

「ん?」


振り向くが人の姿は無く、気配も感じられない。

不審に思いながらも扉に近づく。

よく見ると、鍵はかかったままだ。ゆっくりと鍵を開け、ドアノブに手をかける。

きいっ、という金属のこすれる音。

闇夜へと身を乗り出した瞬間、後頭部に鈍い衝撃を感じた。

何が起こったのかも分からず、そのまま気を失った。






仁は倒した男の所持品を探った。

製造ラインに入るためのIDカード・この1階のものと思われる鍵の束。

必要と思われる品が次々と出てくる。

警備の甘さはここでも露出している、と仁は思った。

とりあえずIDカードをベルトの裏に、鍵の束はベルトのフックに取り付ける。


さらに衣服を探り続ける。

予想通り、新品同様のハンドガン『ベレッタ』が出てきた。

弾数は二十一発。安全装置を外し、六発式のリボルバーに銃弾を詰める。


準備完了。

と、思いきや出入り口の扉が開いた。

「やべっ。」


物陰に素早く隠れる。


「おーい、三柴。交代の時間だ。」

三柴、というのは先程倒した男の名前らしい。


懐中電灯を振り回している。

静かにハンドガン(ベレッタ)をリロードした。


「み~し~ば~。」

だんだんと隠れ場所近づいてきた。


あまり乗り気ではないが、覚悟を決める。

横っ飛びで一気に相手の前に躍り出た。

「なっ・・!」

すかさず引き金を引く。


交代で来た警備員も呻き声と共に倒れた。

ちゃっかりと弾を回収。


「まずは探索だな、うん。」

忍び足で移動を開始した。


長い廊下を進むと、階段とエレベーターが見えた。

迷わず階段を選ぶ。

上の階から機械音のような物音が聞こえた。

ハンドガンをホルダーにしまう。

切れかかている蛍光灯がこれからの未来を暗示しているように思えた。


2階に到着した。

頑丈な扉が目の前に現れた。

「おう、あい はぶ IDカード!」

備え付けの認証機械にカードを通す。

ゆっくりと扉が開いた。

「潜入~!」

「潜入は早くもお終いだ。手を挙げろ。」


迷彩服を着た男がショットガンを構えている。

「どこまで俺の潜入を邪魔するわけ、(そら)!」

「依頼なんだよ。今度こそは負けやがれ。」

「ん~、無理!」


ハイキックで的確に相手のショットガンを蹴り上げる。

その衝撃で弾が暴発し、上空にショットガンがはじけ飛ぶ。

ようやく作業員も異変に気付き、扉付近は一気にパニック状態に陥る。


「くそっ、仁!どこ行きやがった!」

辺りを見回すが、姿は無い。

その時、奥の方で爆発が起こった。

エネルギータンクが火柱を上げ、破片が飛び散る。

「ちいっ、逃がさねえぞ、仁!!!」

落下してきたショットガンをリロードした。


4階。

もはや誰もいない、と思ったが・・・。

武装した警備員が周囲を徘徊していた。

「っしゃ、一丁プレゼントしてやるか。」

グレネードの安全ピンを引き抜いた。

見事なアンダースローから放たれたグレネードは、警備員の群れに突っ込んだ。


2階。

再び地響きが鳴る。

「奴か・・・?」

4階にいると思われる警備員に無線を入れる。

が、全く応答は無い。

空は慌てて非常階段を駆け上った。


4階。

この階にいた警備員を片付けた。

ここで、改めてこの工場の見取り図を確認した。

この階より上にはエレベーターを利用しないと上がれない。

ボタンを押した瞬間、銃声が轟いた。

空が階段を上ってきた。

「ギザうっとうしす。」

自動小銃を乱射。

空はT字路の死角に隠れこんだ。

エレベーターが到着した。

R(屋上)のボタンを押す。

扉が閉まると同時に大きくへこんだ。


「あっぶっねえ~っ!!」

仁は上昇するエレベーターの中で深く息を吐いた。


4階。

あの場で仁を仕留められなかったことを悔しく思い、地団太を踏んだ。

この先からは階段が無い。

エレベーターの扉をこじ開け、脇の梯子を上っていった。



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