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17 出会い再会


「それにしても山か…魔物とか出てきたら怖いですね」

「ここら辺は魔物は出ないから大丈夫だよ。街も近いし。それにこの前のアグノスももう倒しておいたから」

「えっ!? そうなんですか!?」


 てっきり逃してしまったと思っていたのでさらっと投下される発言に二度見ならぬ二度聞き?してしまう。


「君達を宿に送った後にね。念の為に魔法でマーキングしといたから」


 なんて用意周到なのだろう。お姉ちゃん同様にアグノスに対する知識が私達とは段違いだ。


「もうガペーラ! またそんな一人で…」

「ボクだけでも十分に倒せる敵だったから。それに心身共に疲弊していた二人に心配させるのもいけないと思ってね」


 か、かっこいい…


 真っ先に出てきた印象がそれだった。ティミスちゃんが彼女のことを話す際に男性の褒め言葉を多用していたのも理解できる。


「あっ! 見て見てフェートちゃん! これ珍しい素材じゃない?」

「え? どれどれ…」


 ここら辺は自然が豊かでマナの質も良く良い素材が多い。今拾ったのも中々に珍しい素材で金属を綺麗にするのに役立つものだ。


「薬草もここら辺なら結構あるね。超過した分はアイテムボックスに入れておこうか」


 薬草も錬金術で使えばポーションの効能を高めたりすることもできる。あって損はないだろう。



⭐︎


 

「よし! こんなもんで良いかな?」


 一時間ちょっと黙々と薬草を採集し依頼には十二分な程の量が集まった。


「これだけあれば良さそうだね。じゃあ山を降りてギルドに…」


 ガペーラさんがピタリと動きを止める。


「どうしたのガペー…ん? 何か近づいて来てる…?」


 ティミスちゃんが何者かの気配を察知する。


「魔物じゃないと思うが…一応二人とも後ろに下がっててくれ」

「は、はい…」


 私達は大人しく後ろに引き下がり音の主を待ち構える。


 だがその心配は杞憂で終わった。草むらから幼い女の子が飛び出してきただけだ。


「なんだ子供か…でも何でこんなところまで…迷子か?」


 ガペーラさんは手にかけていた武器をしまいその子の頭を撫でてあげる。


「これは…」


 しかし緩んでいた彼女の表情は一瞬で険しいものになる。


「どうしたんですか?」


 私は女の子の背後にまで回りガペーラさんの視線の先を覗く。


「この怪我…!?」


 彼女の服から覗かせる肌は傷だらけで、刃物や鞭で傷つけられかのような跡が目立つ。


「助けて…ください…!!」


 女の子は掠れ消えそうな声でこちらに助けを訴えてきた。


「どこに行った!!」

「何としてでも探し出せ!!」


 その時少し離れたところから男性の怒声が聞こえてくる。


「ひっ…!!」


 女の子はガペーラさんの後ろに隠れ抱きつく。その体は激しく震えておりそれだけで大体の事情は察せられる。


「今度は武器を出しておいた方が良いみたいだね…二人とも構えて」


 言われなくても私とティミスちゃんも察知して各々戦えるよう構える。


「…あん? 誰だお前ら?」


 女の子が来た方から出てきたのは三人の屈強な男達だった。


「ひっ…この人達わたしを虐めた…!!」

「あっ! こんなところにいやがった!」


 一人の男が彼女に近づき胸倉を掴もうとする。


「おい待て」


 しかしガペーラの方が素早く彼の手首を掴み捻り上げる。


「いたたたた!」

「何してんだてめぇ!?」


 男の一人が斧を取り出し威嚇するがガペーラさんは気にも留めない。


「男三人がボロボロの女の子を武器を持って追いかけている。止める理由としては十分だ」


 ガペーラさんは手首を捻り上げたまま男にアッパーをくらわして一発で伸びさせる。


「なっ!? 何しやがる!?」

「ごめんなさいねっ!!」


 私は足に重点的に強化魔法をかけ距離を詰め、彼の鳩尾に拳を叩き込む。


「悪いですけど気を失ってください!」


 もう一人はティミスちゃんが起こした暴風に吹き飛ばされ地面に叩きつけられて気を失う。


「お、お姉ちゃん達強いんだね」

「ボクはガペーラ。お嬢さんは?」

「わ、わたしはリロです…普通に暮らしてたのに…ある日大きな蝙蝠に攫われて…」

「なんだって…!?」


 大きな蝙蝠。その特徴に私達三人の頭に先日戦ったあのアグノスがフラッシュバックする。


「もしかしてそいつは灰色だったかい?」

「え、うん…どうして知ってるんですか?」

「まだ仲間が居たか…いや、元締めか?」


 あのアグノス達がしていたのはあくまでも奴隷集めだった。あの人数や規模で市場を開けるとは考えにくい。


 それにあいつは買い取り先を示唆するような発言をしていた。リロちゃんを捕まえていたのはもしかしたらその親玉の可能性もある。


「ねぇリロちゃん。もしかしてだけど…攫われた先で別の灰色の化物見なかった?」

「えっ…? はい。大きな屋敷みたいなところに連れて行かれて、そこでわたしを庇った子が…別の灰色の化物に…ひぐっ…!!」


 リロちゃんはその時の光景を思い出してしまったのか、膝から崩れ落ち涙を流す。


「アグノスによる奴隷商売…か。クズが」


 ガペーラさんはクールな表情を崩し睨みつけるように虚空を見つめる。


「なんとかしないと…これ以上被害が出る前に、アグノスの魔の手にやられる前に…!」

「でもどうしますガペーラさん? まだ場所も相手も分からないし…」


 私もそんな奴は絶対に許せない。アグノスという力を得てそれを私利私欲に使い人を苦しめる奴は私が最も許せないタイプだ。


「リロ…その捕まっていた屋敷の場所は分かるかな?」

 

 ガペーラさんは地図を取り出しリロちゃんの前に広げる。


「えっとここをこう逃げてたから…あっ、ここだ!」


 リロちゃんは地図のある位置を指差す。


「この位置は確か…マーチの別荘か」

「マーチ? 誰なの?」

「有名な商人だよ。貿易とかでも稼いでたはず。まさかあいつが…?」


 まさに吐き気がする極悪人といったところだ。


「まずはこの子を安全な所に送ろう」

「うーん騎士団のところですかね?」  

「いや…それはやめておいた方がいいだろう」

「えっ、どうしてですか?」

「マーチの権力は中々のものだ。もし彼がアグノスで黒幕なら騎士団の人間を買収していてもおかしくない。ボク達ではその区別がつかない」


 うっ…確かに預けた人とかそれを知った人がマーチに買収されてたら一発アウトだ。


「信頼できる知り合いが居るからそこに預けよう。だがその前に衣服を整えて…あと顔を隠せるものとかも欲しいな。とりあえず宿に戻ろう。道中は着心地は悪いだろうがこの布を被っててくれ」


 ガペーラさんは適当な布を取り出しリロちゃんにかけてあげる。


「これなら傷も顔も見えませんね」

「あとは三人で良い感じに彼女を隠しながら歩いて行こう」


 私達は変に怪しまれない程度に彼女を人目から遠ざけつつ宿に戻る。


「ふぅ。なんとか部屋に戻って来れたね」

「とりあえずボクがここを守って見張ってるから、二人は服とか買いに行ってくれるかな? はいお金」


 私達はガペーラさんから硬貨を数枚貰い、それを手に宿を出て街に繰り出す。


「ガペーラが守ってくれるなら安心だね」   

「そうだね。私達も気をつけよう」  


 街を歩いて彼女に合いそうな無難な服を見つけ、それをアイテムボックスにしまい帰路に着く。


「あれ…フェート?」


 しかしある人物に呼び止められる。


「エディアさん!!」


 先日別れてそれっきりだったエディアさんだ。隣には黒い服に身を包んだ中年男性がいる。


「それにティミスも…二人ともどうしたんだい?」

「あーそれは…それよりそっちの黒い人は?」

「オレはガンマっていうまぁ…エディアの知り合いだ。ま、時間はまだある。話したいことがあるなら向こうに居るから好きなだけしな」   


 ガンマと名乗った彼は十メートル程距離を置いて壁に背中を寄せる。


「えっとそれで…」


 私はエディアさんに何があったのかを話し始めるのだった。

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