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13 イケメン美女


「ファイアボール!」

「ウィンドカッター!」


 私達は簡易的な魔法を二人の顔面に当てる。その衝撃で二人は気を失い檻の前で倒れる。


「出るよ!!」


 私達は魔法で女の子の拘束具を壊し檻の外に出す。


「何をやってる貴様ら…!!」


 だがアグノスに勘づかれてしまいすぐ部屋に入ってきて化物の姿へと変貌する。


「くっ…くらえ!!」


 私は特大の火の玉を奴に向かって放つ。だがそんな安直な攻撃は奴には通じず身を捩り容易に躱す。


「ふっ…」


 だが私は避けられること前提で放ったのだ。火球は壁を貫き外への出口を作る。


「風よ!!」


 女の子の周りに柔らかい風が発生する。


「逃げて助けを!!」


 風は女の子を持ち上げ外へ運んでいく。


「しまっ…」

「させるか!!」


 追いかけようとする奴の背中に炎を噴射させそこを風の刃が斬り裂く。


「貴様ら…!! もう奴隷市場はやめだ。ズタズタにして内臓を売り捌いてやるわ!!」


 奴は翼を広げ明確な殺意をこちらに向ける。もはや捕まえる気などない純粋な怒りだ。


「ティミスちゃん避けて!!」


 奴の突進をギリギリ躱す。やはり武器なしでは反撃に出れずこのままではいつかあの鋭い爪や牙が私達に致命傷を与えるだろう。


「きゃっ!!」


 そして数分防御や回避に徹するがやがて限界が訪れる。鋭い爪がティミスちゃんの胸を裂く。


「ティミスちゃん!!」 


 血が溢れ出し血溜まりを作る。そこまで深くはないようだが早く手当てしないと出血死の危険性がある。


「ぐっ…!!」


 逃げる隙はない。奴に与えられる有効打もない。


「ここか…」


 しかし私達が粘ったおかげで助けが来る。一人だけ。黒髪の中性的な美しい人だ。


「ガ…ペーラ…」

「えっ、あの人が!?」


 その人は出血するティミスちゃんの方をチラリと見ると冷たい視線をアグノスに向ける。


「一人人間が現れたところで変わらん!!」


 しかし奴はガペーラさんのことなど屁にも思わず容赦なくその首を掻っ切ろうとする。


「ふんっ!」


 だが完璧にタイミングを合わせられ奴の鳩尾にガペーラさんの膝がめり込む。


「ぐぐっ…」

「耐えるか…普通の人間なら内臓が破裂する威力なんだけどな…」


 彼女はアグノス相手にも冷静に、容赦なく対応する。


「やっぱりこれを使わないとな。アグノスには」 

   

 ガペーラさんは腰に付けたアイテムボックスから対アグノス用の武器を取り出す。


「はぁっ!!」


 そしてバチバチと雷を纏わせた紫色の斧を出現させる。私達よりも質が良く、お姉ちゃんに近い魔力だ。


「なんであなたがその武器を…?」

「ティミスを傷つけたな…この化物が」


 彼女は斧を構えジリジリとアグノスへ距離を詰めていく。


「すぅぅ…」


 その時奴は一発逆転を狙い大きく息を吸い込む。


「まずいガペーラさん耳を!!」


 私は手当てしていた手を止めて声を荒げる。あの攻撃を喰らったら強さ関係なく動けなくなってしまう。


「ふん…」


 しかし彼女は耳を塞ぐのではなく手から紫の雷を放ちそれを奴の首元に的確に命中させる。


「ぐあっ!!」


 奴は喉に強いショックを受けたことで怯み、怪音波は出ず空気が口から漏れる。


「トドメだ」


 彼女は斧を振り上げ奴の脳天をかち割ろうとする。


「くっ…!!」


 奴は苦し紛れに戦闘中に割れた檻の破片を私達の方へ放つ。


「ちっ…!!」


 私は大丈夫だが動けないティミスちゃんがまずい。今の私の体勢では庇おうにも間に合わない。ガペーラさんが地面を強く蹴り斧で破片を弾き落とす。


 だがこの隙に奴は窓から飛び立ち逃げ去ってしまう。


「逃げられたか…まぁいい今はティミスの怪我だ」


 ガペーラさんはアイテムボックスからポーションを取り出し、傷口の上から振りかける。胸の傷はみるみるうちに治っていき、服が破れてしまっているので彼女は上着を一枚脱ぎティミスちゃんにかけてあげる。


「ほら君も手出して」

「あっ、はい。ありがとうございます」


 中性的で整った顔を近寄せられ、こんな状況だというのに私の胸は一瞬高鳴ってしまう。


「はいこれで治ったから」

「それより助けてもらってありがとうございます。えっと、ガペーラさんですよね?」

「そうだね。ボクがガペーラだよ。君はフェートくんかな?」

「あ、はい! 私が手紙で書いてあったフェート・アゲインです!」


 それから軽く自己紹介し盗まれていた道具を回収した後、騎士団の人達が来たので事情を説明する。


「なるほど…そいつらは悪名高い人身売買グループだな。捕まえられたのは二人か。とにかく君達のおかげで捕まっていた女の子も保護された。感謝する」

「いえ…感謝なら私ではなくこの人に…」

「そう謙遜しなくてもいいんじゃないかな? 君が時間を稼いだおかげでボクが間に合ったんだし」


 とはいえやはり逃してしまったあのアグノスが心残りだ。しかししばらくは悪事を働けないに違いない。


「騎士団から解放されたし、改めて自己紹介もしたいから三人で落ち着いたところに…あ、向こうにあるカフェにでも行こうか」


 歩きながら話していると良い感じの雰囲気のカフェが目に入る。私達は昨日の夜から食事を取っていないので腹ペコだ。断る理由はなくそのまま席に案内される。


「とりあえず何があったか…より君達には先に食事だね」

「ごめんねガペーラ。昨日の夜から何も食べてなくて…」


 私達は運ばれてきた食事をかき込むようにしてお腹の中に放り込む。


「そろそろ話せるかな?」

「あ、はい。すみません…」


 私は水を一杯飲み干し話す体勢を整える。


「改めて自己紹介させてもらうよ。ボクはガペーラ・ラビィ。まぁティミスの幼馴染のお姉さんと言ったところかな?」

「あっ、女性なんですね…」

「ふふっ、よく言われるよ。胸の成長が全部身長に持ってかれたからね。冒険者をやるには力もあっていいんだけどね」


 座ってみてもガペーラさんの方が頭一つ以上高い。それに足も長くスタイルも良い。


「ふふ…触って確かめてみる?」


 ガペーラさんはすーっとない胸に手を添わして撫で下ろす。服を肌に押し付け貼り付けて、些細にある膨らみが私の視界を支配する。


「い、いえいえ大丈夫です疑いませんよ!」


 私は何かイケナイことをしている気分になりサッと視線を逸らす。


「もうガペーラ! からかったらダメだよ!」

「ふふ…こめんね。聞いてた話通り可愛かったから」


 彼女が女性であると意識しても中性的な見た目のせいでつい照れてしまい顔がカーッと赤くなる。


「もぅ…あたしが居ない間もそうやって男女構わずたぶらかしてたの?」

「まさか…ティミスが居るのにそんなことしないよ」


 ティミスちゃんから聞いてた話通り、この人から感じるイメージは可愛いや美人というより、イケメンやかっこいいが先にくる。


「その…それで次に聞きたいことなんですけど、ガペーラさんが使ってた武器…あれは対アグノス用の武器ですよね? それをどこで…」


 私は一旦盛り上がりを鎮め次の話題へと進むのだった。

 

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