禁秘の姫様(6)
「何者って……。それはつまり、わたくしのことも貴方は何か知っているの?」
千代の問いに、太郎はゆっくりと頷いた。
「はい。姫様はずっとご自身の根源を知りたがっておられましたね。今からそれをお話しようと思います」
千代は太郎の答えに小さく息をのんだ。太郎がようやく全てを語ろうとしている。緊張した面持ちでじっと次の言葉を待つ千代に、太郎は優しく微笑みかけた。
「V?XJF、BBTOS&HFU+Q=DK*ED9$D7UKW ‘R)」
「え? ちょっと待って。貴方、何を言っているの?」
「#UQF+⚪︎GSDQV?UKW‘R)。CDW、□QDF#UQ0&JMLR>UESW‘#>S、$J+QSGTOXQ‘?O+WE>KW‘R」
そこで言葉を切った太郎は困惑気味の千代の顔を見て、やはりまだ伝わらなかったかと困ったような笑みを見せた。しかし眉根を寄せていた千代の口からは、太郎の予想に反した言葉が飛び出す。
「本当に何を言っているの? 本来ならわたくしたちの間に主従の関係はないと言っているでしょ。生まれたときからわたくしを守ることを定められているって、一体どういう事なの?」
千代が頬を膨らませて太郎に食ってかかる。太郎はそんな千代の様子を目をぱちくりさせながらしばらく見つめていた。しかし、やがて堪えきれないといった様子で笑い出した。突然笑いだした太郎に、千代は訝しげな視線を投げかける。
「どうしたというの?」
「いえ……申し訳ございません。そうでしたか。姫様は既に覚醒されておいででしたか」
「覚醒? もう本当に何を言っているの?」
千代は太郎の言っている意味が分からず苛立ちを滲ませる。そんな千代を今度は太郎が訝しむように見つめた。
「何って……姫様は、覚醒されたのではないのですか?」
「だから、何よ覚醒って? わたくしは一体何から目覚めると言うの?」
互いが互いの言っていることを理解出来ていないと悟った太郎は、しばらく考え込んだ後、ゆっくりと口を開く。
「……あの、姫様? 覚醒されていないのだとしたら、何故先程の言葉を理解されたのです?」
太郎の言葉に千代はますます困惑気な表情を浮かべる。
「理解も何も、貴方、普通に話していたじゃないの? 貴方は生まれた時からわたくしの騎士だと」
千代の言葉に太郎はゆっくりと首を横に振る。千代はそんな太郎の態度にますます訳が分からなくなったのか、眉間に皺を寄せた。太郎はそんな千代に驚くべきことを告げる。




