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朋友の姫様(12)

 基子の言葉に千代は小さく首を傾げる。基子はそんな千代を見て苦笑した。


「まぁ、其方の輿入れ先はいろいろと面倒な関係に縛られる所だということだ。大奥は、私にとっても其方にとっても……あまり良い場所とは言えぬ。だから、私は其方の輿入れには反対だ」


 基子は面倒な場所に友を閉じ込めたくないと言うのだ。彼女らしい優しさが垣間見える言葉に千代は思わず微笑んだ。基子に向かって深々と頭を下げる。


「わたくしのことを案じて下さっているのですね。わたくし、そのように心配してくださる友が出来たこと大変嬉しく思います。ですが、だからこそ大奥へ参るのも良いかもしれません」


 千代の放った言葉に基子は目を丸くする。


「其方、私の話を聞いておったか?」


 呆れ顔を見せる基子を見つめたまま、千代は頷いてみせた。


「ええ。もちろんしっかりと聞いておりました。基子様がわたくしを案じて下さっていることも承知しております。ですが、基子様はそのような場所にいらっしゃるのでしょう? だからこそわたくしも大奥へ入っても良いと思えたのです」

「な、何故だ?」

「だって大奥へ行けば、基子様と今よりもお喋りできる機会が増えるのではありませんか?」


 ふふふと笑いながら呑気にそんな事を言う千代を基子は呆然と見つめる。


「大奥へ入っても良いなどと、其方、気は確かか?」

「ええ。これから友と頻繁に会ってお喋りが出来るなんて、なかなか良い環境だとわたくしは思うのです。とても楽しそうだと思いませんか?」


 千代の好奇心に満ちた目を見て基子は思わず頭を抱えた。しかしすぐに顔を上げる。そしてどこか諦めたように小さくため息を吐いた。


「良いか? 大奥は其方の思うような場所ではない。仮に其方が大奥へ入ったとして、今はまだ私はその地位に就いていないので其方とも比較的気軽に会うこともできるやも知れぬが、将軍職に付けばそういう訳にもいかぬ」

「まぁ、そうなのですか? ですが、そうかも知れませんね。基子様には将軍様としてのお勤めがございますものね。お喋りばかりに興じてはいられませんよね」


 基子の話を聞いて千代は少し寂しげに目を伏せる。基子は千代の見当違いな解釈に思わず苦笑いを浮かべた。


「そう言う事ではないのだが……。まぁ、大奥へ入ったからといって私と気軽に会うことはできぬ。それどころか、其方が離れたくないと言った親御とも簡単に会うことは叶わぬ。太郎に至っては金輪際会えぬかも知れぬのだぞ」

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