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拾われ子だって、姫なのです!  作者: 田古 みゆう


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朋友の姫様(6)

 千代の言葉に基子は溜息混じりに尋ねた。基子の言葉に千代は小さく頷く。


「……はい。包み隠さずに申し上げれば、吉岡様の御人柄についてあまり良いお話を耳にしないのです。そのような家へは嫁ぎたくありませんでした。しかし、旗本と下級役人では、まずこちらからお断りすることなど叶わぬと思いました。それであればと、吉岡家との縁組を回避するために苦肉の策で別の縁組を願い出たのです」

「そうであったか……。では、旗本よりもさらに格上の大名に嫁がねばならぬということは、其方の本意ではないのか?」


 基子の言葉に、千代はすぐさま首を縦に振った。


「もちろんにございます。他の大名様でも恐れ多いというのに、もしも本当に彼の御家紋を頂くような御方との縁組となれば、もうどうして良いのやら……。わたくしは、出来ることなら今のまま、父と母と平穏に暮らしていきたいと願っているだけにございます」


 千代の言葉に基子は小さく頷いた。そして、春陽へと視線を向けると、そっと口を開く。


「そういうことだ。吉岡の悪事を洗いざらい調べ上げてくるのだ」


 基子の言葉に春陽はさっと頭を下げる。突然の基子の言葉の意味がわからない千代がパチクリと瞬きをしている間に、春陽は音もなくその場から姿を消した。それをさも当たり前のように見送った基子は、何食わぬ顔で千代の方へと向き直る。その瞳には強い意志と決意の力が宿っていた。


「あ、あの基子様? 春陽殿は一体どちらへ?」

「あの者は私の手足となって動く者だ。普段は私の護衛を兼ねて常に傍にいるのだが、これから少々事を起こすことになるのでな。その準備のために先に動いてもらった」

「事を起こす……? 何かをなさるのですか?」


 驚く千代に、基子は深く頷く。


「ああ、そうだ。……私は、其方の婚姻を破談にしようと思う」

「わたくしの……?」


 基子の言葉の意味がわからず首を傾げる千代だったが、そんな千代に構うことなく、基子は太郎へと視線を向けた。


「其方もそれで構わぬか?」


 基子の言葉に太郎は僅かに驚いた顔をした。


「私はもとより意見できるような立場ではございませぬ。……ですが……お許しいただけるのであれば一言だけ」


 太郎は、表情を引き締める。


「姫様が……千代姫様がお幸せであることだけを私は切に望みます」

「悪いようにはしない。安心しろ」


 太郎の真剣な眼差しを受けた基子は、堂々と頷いた。


「して、当の本人からはまだ返事を得られておらぬのだったな」

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