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拾われ子だって、姫なのです!  作者: 田古 みゆう


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朋友の姫様(5)

 太郎は真剣な眼差しで春陽を見つめる。その顔には理不尽な回答であればどのような相手であろうとも容赦はしないという、強い意思が見て取れた。春陽はそんな太郎に向き直ると、小さく頷く。


「基子様は、此度の婚姻に対するお千代様のご意向をお知りになりたいのです。ご意向如何では今後のお付き合いの仕方が変わろうかと」

「此度の婚姻に対する、わたくしの意向……?」


 春陽の言葉を千代は無意識に繰り返す。その顔色は青白く、今にも倒れてしまうのではないかと心配になる程だ。


「姫様……大丈夫ですか?」


 太郎が声をかけると、千代はぎこちなく頷いて見せた。


「えぇ、大丈夫。少し驚いてしまっただけだから……」


 そう答える千代の声は今にも消え入りそうだ。瞳を忙しなく動かし何かを考えあぐねている千代の様子に、春陽も僅かに目を伏せる。


 しばらくすると、千代は何かを決心したのか一つ大きく息を吸い込み、春陽ではなく基子を真っ直ぐに見つめた。


「基子様。貴女様が高貴な御方であることは承知の上で、それでも、これまで通り言葉を交わすことをお許し頂けないでしょうか?」


 千代は真剣な眼差しを基子に向ける。そんな千代に何かを言おうと口を開きかけた春陽を、基子が軽く手を上げることで制した。基子は千代の瞳を見つめ返しながら無言で頷くことで、千代の願いを肯定の意として伝える。その答えに、千代は心底ホッとしたように息を吐くと、深々と頭を下げた。


「ありがとうございます。ではまず、此度の婚姻についてわたくしの意向をお知りになりたいとのことでしたが、それについては、本心をお話しさせていただくと言うことで宜しいのでしょうか?」


 千代の言葉に、基子は一瞬ポカンとした顔をした後、コクリと頷いた。


「構わぬ。建前など聞いても意味がないのでな」


 基子の言葉に千代は再び小さく頭を下げる。


「では、僭越ながらお話させていただきます。まず、何処かの家との縁組をと言い出したのは、わたくし自身でございます。ですが、心からどなたかと縁を結びたかったのかと問われれば、それは違います。出来ることならばわたくしは婚姻を望みませぬ」


 千代の答えに基子は眉を寄せる。


「婚姻を望まぬのに、何故、縁組を願い出たりするのだ?」


 基子の問いに千代は困ったように眉尻を下げる。そして、これまでの経緯を基子に語って聞かせた。


「つまり、望まぬ求婚を退けるために、其方自身が新たな縁組を申し出たと、そう言うことか?」

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