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拾われ子だって、姫なのです!  作者: 田古 みゆう


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朋友の姫様(4)

 千代は困惑を深めた。


 そんな千代の様子に春陽は小さく息を吐き、基子の方へと視線を向ける。


「よろしいですね?」


 念押しをする春陽の言葉に基子はビクリと肩を揺らした。しかし、すぐに表情を引き締めると大きく一つ頷く。それを確認した春陽は、千代の方へと向き直った。


 千代の喉がゴクリとなる。千代の緊張が伝わったのか、太郎も無意識に息を止めていた。そんな二人の傍へ春陽は静かに移動をすると、懐からさっと懐刀を取り出した。その行動に千代は思わず身を固くする。背後でザッと太郎の衣擦れの音がした。


「ご案じめさるな。危害を加えるつもりはございませぬ」


 そう言うと春陽はその懐刀をスッと千代の前に差し出した。


「お千代様。こちらの家紋をご存じですか?」


 差し出された懐刀を千代は困惑顔で受け取った。しかし、家紋を見つめる目はやがて驚きに見開かれた。


「これは……っ! この御家紋を知らぬ者など、このお江戸におりましょうか」


 そう答える千代の声は震えていた。千代の手の中を覗き込んだ太郎もすぐに息を呑む。二人がその家紋に見覚えがあるのも当然のことで、その家紋はまさにこのお江戸で一番有名と言っても過言ではないものだった。


 知ってはいるものの、おそらく一生のうちで一度たりとも関わることなどないはずの、雲の上の存在。その家紋(しるし)に驚き固まる千代の手から春陽は懐刀をスルリと抜き取ると、再びそれを自身の懐へと忍ばせた。


「基子様はこの家紋を持つ家の御方であらせられます」


 春陽の言葉に千代と太郎は息をするのも忘れて呆然としていた。あまりにも驚きが大きすぎて言葉が出ないのだ。


 そんな二人を気にするそぶりも見せず、春陽は淡々と話を続ける。


「そして、お千代様の輿入れ先なのですが、おそらく基子様のお家かと……」

「な……っ!?」


 春陽の言葉に千代は思わず声を上げた。


「やはり驚かれましたか」

「驚くに決まっているではありませぬか! 何故(なにゆえ)そのようなことに……っ!? 」


 千代は信じられないと言った様子で激しく首を振る。あまりに激しく首を振ったため挿していた簪がシャラシャラと音を立てて揺れた。


「それは……吉岡殿がいろいろと手を尽くされた結果……とだけお伝えしておきましょう」


 春陽の言葉に千代は言葉を失う。言葉もない千代に代わり、太郎が春陽に問いかけた。


「先ほど、姫様と基子様が友好を深められるかどうかは、姫様の返答によると言われていたはず。あれはどういう意味なのですか?」

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