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拾われ子だって、姫なのです!  作者: 田古 みゆう


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旗本の姫様(13)

 千代たちはそれを慌てて追いかける。


「あ、あの……基子様」

「なんだ?」


 千代の問いかけに基子は足を止めずに応えた。


「お着物は乾きましたらお届けに上がりますので、お屋敷の場所をお教え頂いても?」


 千代の言葉に、基子は一瞬何か言いたげな顔をしたが、すぐに前を向き直した。


「いや、良い。あれはそちらで処分してくれ」


 基子の言葉に千代は「え?」と思わず声を上げるが、基子は歩みを止めずスタスタと歩いて行く。そして、玄関先で待っていた従者らしき者に向かって声をかける。


「お前にしては来るのが遅かったな」


 基子が迎えの者にそう声をかけると、従者は申し訳なさそうに頭を下げた。それから、千代たちの方へ向き直る。


「この度は我が主がご迷惑をおかけ致しました。誠に申し訳ありません」


 従者の言葉に千代は恐縮したように頭を下げる。


「いえ……こちらこそお引き留めしてしまいまして申し訳ございませんでした」


 千代も従者に向かって頭を下げた。そんな二人のやり取りを気にすることなく、基子はさっさと外へ出て行く。


「基子様!」


 基子の背中に向かって千代は慌てて声をかけた。訝しげに振り向いた基子に千代は駆けより、その手を取る。


「お屋敷をお教え頂くことが難しいのならば、これ以上はお聞き致しません。ですが……その……」


 千代はその先の言葉を言い淀んだ。そんな千代を基子は不思議そうに見つめる。


「なんだ? はっきり申せ」


 基子の言葉に千代は躊躇いつつも口を開く。


「……また我が家へおいでいただけませぬか? わたくしと……友になっては頂けないでしょうか?」


 千代の言葉に基子は驚いたように目を見開く。そして、すぐに視線を逸らした。


「いや、私は……」

「無理にとは申しませぬ! ですが、基子様とのお話がとても楽しかったのです。あ、あのっ……わたくし……歳の近い友がこれまでおりませんでしたので」


 しどろもどろになる千代の言葉に基子がピクリと反応する。基子は少し困ったように眉を下げた。


 千代はそんな基子の表情に慌てて言葉を探す。しかし、上手い言葉が見つからない。二人の間に気まずい沈黙が流れると、それを見兼ねたように従者が口を開いた。


「基……子様、そろそろお戻りになりませぬと」

「あぁ」


 従者の言葉に基子は頷く。


「……また来る。その時は、この者を事前に遣わす」


 それだけ言うと基子はサッと身を翻した。その後ろ姿に向かって千代は嬉しそうに返事をした。


「お待ち申し上げております!」

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