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青眼の姫様(11)

◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 こうして千代は井上家の養女となり、太郎は高山家の養子となった。二人は両家へ引き取られた経緯を幼少の頃より知っている。隠そうにも、その眼の色のせいで二人の出自はすぐに周囲に詮索されるだろうと考えた正道が、誤ったことを吹き込まれるくらいならばと、物心ついたばかりの千代と太郎に語って聞かせていたからだ。志乃に隠し続けている不思議な光のことは、もちろん二人にも伝えなかったのだが。


「わたくしたちは、ここで拾われたのよね」


 千代は太郎と連れ立って河原へやってきていた。何かあるとここへ来てしまうのは、千代がこの場所に自身の原点となる何かを見出そうとしているからだろうか。


 河原の石に腰掛ける千代の横顔は寂しげだった。そんな様子から目を逸らすように太郎は遠くを見ている。


「ねぇ、太郎」

「……なんですか、姫様?」

「実は、わたくしたち、血を分けた兄妹だったりしないかしら」


 千代の言葉に、太郎は呆れ顔で応える。


「姫様。それは以前にも言ったではありませんか?」

「血は繋がっていない。わたくしは井上の姫で、太郎はその家臣だというのでしょう?」

「その通りです」


 太朗が明後日の方を向きながら答える。そんな彼を千代はジトリとした目で見据えた。暫く沈黙が続いた後、千代が再び口を開く。


「いつもいつも、太郎はそればかり。どうして、わたくし達の血が繋がっていないと、あなたは言い切れるの? 周りの誰とも違っても、わたくしたち二人だけは同じ青眼なのよ。それなのに、どうして……」


 千代は太郎の手を掴む。しかし、彼はどこ吹く風といった様子で答えた。


「姫様、それは違います」

「何が違うというの? 太郎はいつもそう!  何か知っているのなら、わたくしにも教えて頂戴。あなたは、わたくしたちの出自について何か知っているのでしょう?」


 千代は太郎に詰め寄った。だが、太郎は答えず目を伏せたままだ。


 暫くの沈黙の後、静かに太郎が口を開いた。


「……私と姫様では立場が違うのです。兄妹など……。そんなことは決して」


 太朗に更に詰め寄ろうとした千代だったが、その肩をそっと太郎に押さえられた。


「そろそろ帰りましょう。お身体が冷えてしまいますよ」


 道すがら、二人は言葉を交わすこともなく歩いた。やがて屋敷が見えて来た頃、太郎がぽつりと呟いた。


「……姫様。……私は姫様の求める者にはなれません。……ですが、姫様が私を必要とされる限り、私は貴女のお傍におりますので……」

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