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禁秘の姫様(14)

 そしてしばらくの間、また大きな玉ねぎを頂いた町並みが映る。そこに先程の男女の姿はなかったが、星の民と言われる人々の生活の風景が映し出されていく。


 千代は知らず息を詰めていた。絵の中の人々はお江戸とは違う生活様式をしているのだろう。至る所で千代の知らない機械や道具が使われている。便利そうな道具が随分とあるのだなと無意識のうちに感心していた千代だったが、ふと、あることに気がついた。


 映し出される人々の表情がどこか疲れ切っていて、活気がないのだ。千代は不安にかられて太郎を見た。千代の視線を感じた太郎が小さく口を開く。


「まもなく私の父と母が出てきます」


 太郎の言葉通り、絵に動きが見られた。映し出されたのは大きな広場のような場所で、多くの人が集まっている様子が見て取れた。甲冑のような硬そうな武具を身に纏った人々が忙しなく行き交い、刀に似た武器であろう物を手にした集団が何やら大声を張り上げる。緊迫した空気が伝わる動く絵に、千代は息を呑んだ。まるで戰場へ赴く前の武士たちを見ているようだ。


 そこへ武装した二人連れが姿を現した。二人の戦士は周りの者に指示を飛ばし、あるいは鼓舞しているようだ。戦士たちがその指示のもと、一糸乱れぬ動きを見せる。


 その時、千代の見ている絵が大きく揺れた。地震のような揺れがあったのだろうか。やがて、絵には先ほどのように戦士たちが映し出された。しかし、先ほどとは違いそこかしこで土埃が上がっている。


「何があったのかしら?」


 思わず漏れた千代の疑問に答えるように、太郎が口を開いた。


「おそらくは敵襲を受けたのでしょう」


 太郎の答えに千代は目を見張った。平和なお江戸で暮らす千代は酔いどれ同士の諍いや、ちょっとした喧嘩を見かけることこそあれど、本格的な争いなど一度も見たことがない。


 今見ている絵が戦なのかと意識した途端、千代の心臓は大きく跳ね上がった。千代は不安にかられて太郎の腕にしがみついたまま、絵を見つめる。


 するとまた大きな揺れが襲ったのか、戦士たちが大きく揺れる。その拍子に幾人かの人々が倒れ伏す様子が見て取れた。千代は堪らず胸の前で手を組んだ。


「どうか、御無事で」


 無意識に祈る千代の手は白くなる程に力が入っていた。すると、祈りが届いたかのように戦士たちは体勢を立て直した。再び動き始める戦士たち。千代は安堵の息をつく。


 絵は甲冑を身に纏った二人の戦士を映し出した。二人が素早く兜を脱ぐ。

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