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禁秘の姫様(12)

 今度は内側からその光を放ち始めた。瞬きをするように明滅を繰り返す。やがてその点滅が落ち着くと、金属塊の面に水滴でも落ちたように波紋が起きた。それは波打つように広がり、そしてそれが落ち着くと、どこかの町らしき絵が映し出されていた。


 千代は驚いて目を(みは)る。映し出された絵は、玉ねぎのような形をしたものを頂く建造物のようだ。しかし、千代の知るどの建物とも似ていない。でも、どこか懐かしい感じがする。


 千代が食い入るようにその絵を見つめていると、絵は薄れるようにして消えてしまった。突然のことに息を呑んでいると、新たな絵がじわりと浮き出るようにして再び映し出された。今度は先程よりも大きな建造物のようだ。やはり、大きな玉ねぎを頂いている。それもいくつも。


 千代が絵を凝視していると、また絵が薄れていき、新たな絵を浮かび上がらせる。今度の絵には人が描かれていた。反物のような布に乗って地面から浮いている。不思議な絵だ。そう思って見ていると、千代は途端に奇妙な感覚に襲われた。絵だと思っていた反物に乗った人物が次第に近づいてくるのだ。


 千代は困惑して太郎を見る。しかし、太郎は何も言わない。ただ黙って絵を見ているだけだ。どういう事なのか全く分からないまま、千代は絵に視線を戻す。ついには、その人相が判別できるくらいまで金属面いっぱいに近づいてきた。その人は、自分や太郎と同じ青眼を持つ女性だった。何処となく太郎に面影が似ているなと千代はぼんやりと思う。その女性は悪戯っぽい笑みを千代へ向けると、そのまますーっと遠ざかっていった。


 千代は目を大きく見開いて、食い入るようにその動く絵を見つめる。いつの間にか手のひらにはじっとりと汗をかいていた。呆然とする千代を余所に、太郎は見慣れているのか落ち着いた様子で映し出される絵を見つめている。千代は不思議な感覚に包まれながらも、その謎の絵に魅入られ、目が離せないでいた。


 目まぐるしく変わる絵を千代はじっと見つめ続ける。やがて、絵はあの大きな玉ねぎを頂いた建造物を再び映し出した。今度は自分がどんどんと建物に近づいていくような感覚を覚え、千代は思わず隣りにいる太郎の袖をぎゅっと握った。


 千代の不安を余所に、絵の中を景色が流れていく。千代が建物にぶつかると思った瞬間、絵の中の扉が開かれた。絵が切り替わり、新たな絵には男性と女性が一人ずつ映し出されていた。千代の心臓がどくりと跳ねる。

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