第2話:初・夜会
翌日、お父様に呼び出され、お見合いが破談になったということを聞いた。私はほっと胸を撫で下ろしたけど、お父様からはかなりの説教をされた。
……ナルシストの浮気者だけど?ともお父様に伝えた。そしたら、お父様は納得してくれた。リリアーヌとミリアーヌも嫌がったという話もしておいた。義兄になるわけだし。
ミリアーヌが縁談話を持ってきた。
「アイリお姉様。この方ならば、義兄でも私はかまいません!」
そんなミリアーヌが持ってきたお見合いの相手は騎士団長様。
騎士団長様は伯爵家の嫡男だったかしら?
「ちょっと!ミリアーヌ!自分の上司をアイリお姉様に紹介しているの?」
「私が義兄と呼べるのはこの人くらいしか思いつかなかったのよ!」
とはいえ、騎士団長様は独身だけど、私よりも10才くらい年上じゃなかったかしら?
「ミリアーヌ、我が家は歴史ある辺境伯よ?アイリお姉様は婿取りをするべきだと思うのよ。騎士団長様は嫡男なのでしょう?婿入りは不可能なんじゃなくて?」
あっ…という顔でミリアーヌは黙ってしまった。
「騎士団長様は嫡男で一人息子のハズ。彼は婿入りできないわね。彼だって家を継ぐって使命があるでしょうから」
「アイリお姉様!私にお任せください!草の根を分けてでもアイリお姉様にふさわしい相手を探して参ります!」
すごく頼りになると言えば頼りになるけど、妹達だって婚約者の一人くらい見つけた方がいいと思うのよねぇ。そんな姉心も知らずに頑張っちゃうんだから。二人とも可愛いんだけどさぁ。だからこそっていうか。
辺境伯に婿入りをしたい!という野望を持つ殿方は、かなりの数いる。貴族の家でも次男以下は爵位を継ぐ可能性が低く少しでも楽に爵位を継げるならば……と思っている方が大多数ですからね。
貴族の家の次男以下の方は、自分の行く末がわかっているので予め騎士団に所属しておくなど、自分の力で生活できるように地盤を作っておくのがセオリーです。
魔力があれば、魔術団に所属しておきますね。
ミリアーヌとリリアーヌは二人とも趣味です。完全に。
リリアーヌはどんな方を紹介しようか考えあぐねていた。
魔術団の団長を紹介するのではミリアーヌの二番煎じとなってしまう。それは自身のプライドが許さない。第一、魔術団の団長はかなりの年上で既婚者だ。
……などと妹達が奔走している時にケネス帝国皇帝主催のパーティーが催されることとなった。
「アイリお姉様を誰がエスコートするの?」
「「私よ!」」
ミリアーヌとリリアーヌが立候補した。
「うふふ、エスコート役はお父様が妥当じゃないかしら?それより!二人は誰にエスコートして頂くのか考えなさいな」
(これを機に妹達がそれぞれパートナーを見つけてくれるといいんですけど……)
「お父様、今度の皇帝主催のパーティーでのエスコートをお願いします」
「うむ。お前なら選り取り見取りだろうになぁ」
お父様は残念そうだけど、現段階で仕方ないじゃない。
ミリアーヌは騎士団長様にエスコートしてもらうようだ。
ミリアーヌは辺境伯に婿取りをするわけではないから、嫡男である騎士団長様にお願いしてもなんら問題はない。騎士団長様の方は辺境伯家と姻戚関係になればイロイロと政治的に役に立つというメリットがある。
リリアーヌは力のある商家の長男にエスコートをお願いしたみたい。
こちらは一見特にメリットが無いように見えるが、リリアーヌが作った魔道具を商家が独占販売するということになれば……商家としてはうま味があるだろう。
ミリアーヌもリリアーヌも選んだ方はイケメンだし。二人ともメンクイなのかしら?