第1話:初・お見合い
よろしくお願いします!
「この頭でっかち!」
「なによ、脳筋のくせに!」
うーん、二人とも私の可愛い妹なんだけどなぁ。
遅くなりました。私はこの家、コースワロー辺境伯爵家の長女で一応聖魔法が使える者として、重宝されておりますアイリと申します。
冒頭、言い争っていたのは……私の双子の妹で、運動神経抜群で帝国騎士団にも所属しているのがミリアーヌで、帝国魔術団に所属しているのがリリアーヌ。
冒頭“頭でっかち”と言われていたのが、リリアーヌで、“脳筋”と言い返されたのが、ミリアーヌ。
はぁ、二人とも優秀だし見た目もさほど変わらないし、何故仲良くしないんだろう?と思うけど、だいたい理由って『どっちが姉なのか』なんだよね……。
第3者からすると、「どっちでもいいじゃん」と思うんだけど、本人たちには重要事項なんだろうなぁ。
「アイリ、ちょっと応接間に来なさい」
お父様からの呼び出しなんて珍しいわ。何かしら?
私は侍女に身なりを整えさせて、応接間へと行くことにした。
(ミリアーヌとリリアーヌ、応接間の入り口で仲良く聞き耳立ててるわね?こういう時は仲が良いんだから)
「他でもない、お前に縁談の話だ。このケネス帝国で男子は貴重であるのはわかるな?なおかつ、お前はこの家を継ぐという立場にある。できるだけ、よい人間を選んだつもりだ。この商家の次男殿は才覚もアリ、見目も麗しいという話だ」
(つまり、自分に自信があって浮気癖があるという?)
「どうだ?」
「どうといっても……まだお会いしてもいないですし」
その時、応接間の扉がバーンと開いた。
「アイリお姉さま、いけません。その方は女癖がよろしくありません。王都では有名な話です」
「ナルシストという話もあります。アイリお姉さまには相応しくありません」
「アイリお姉さまのお相手ならいずれは私の義兄になるお方!確かなお方でなくては、私は嫌です。よって、アイリお姉さまのお相手は私が王都にて探して参ります!」
「それなら私が王宮騎士団の中にいるやもしれませんし……」
「あんな脳筋集団にいるわけがありません!あんな義兄は嫌です。もっと視野を広く、果ては商家の次男・三男まで視る所存です!」
「それなら、私は護衛をした国の内部調査までしましょう!」
妹達はギャアギャアと言っているけど、大事になっている……。
私の婚約……大丈夫かな?
実際にお見合いしてみると、なるほど自信家で自分大好き♡って感じだ。世界の誰もが自分を愛している。と思い込んでいるイタイ人間だと思う。
「アイリ嬢も是非王都の夜景スポットを案内したい」
そして女をコロッと自分のものにするのが手管なのかしら?
「申し出は有難いですわ。でも大抵の夜景スポット、観光地なんかは王都で勤めている妹達に案内されていますの」(これで牽制できるかしら?)
「私が案内する夜景スポットは、そんな安っぽい観光地的なものではなく、秘密の穴場のようなものですよ」
リリアーヌにもミリアーヌにも競うように夜景スポットを案内されたから、多分王都の夜景スポットは制覇してるのよねぇ。
「あら?私の妹達が案内した夜景スポットを安っぽいものだと?」
「言葉の綾ですよ」
「妹達の情報によると、貴方は女癖が悪いナルシストという話です。ですので正直わたしはこの縁談に乗り気ではありません」
「貴女の妹達はどこから情報を入手しているのでしょう?そんなことはないのですが、困ったなぁ」
「妹達は、帝国騎士団と帝国魔術団に所属しています。妹達は普段は王都暮らしなのです。王都の事は詳しいですよ?二人とも団員と交流をそれなりにしているようですから」
さすがにこれには恐れをなしたか。多分妹達も辺境に住んでいる田舎者だと思ったんだろうなぁ。残念、ほぼ年中王都で仕事してるわよ。優秀な妹達なのよ?
「あ、なんだか腹痛がするのでこの場はこれで失礼させていただきます」
妹達の話をすると私の話にも信憑性が出てくるのか。自分でも自信家でナルシストだと思ってるのね?本当にイタイ人だわ。
「「アイリお姉様!」」
帰宅と同時に二人に詰め寄られた。せめて、玄関に入れて欲しい。まだ門をくぐった段階だ。
「まさか縁談の話を進めるようなことはないですよね?」
リリアーヌは目に涙まで浮かべて詰め寄る。そんなにあの男が嫌なの?私も嫌だけど。
「アイリお姉様に限ってそれはないわよ。そうですよね!」
ミリアーヌも言葉とはウラハラに目に涙浮かべてる……。
「とりあえず、応接間に行こっか?二人とも。こんな玄関にも入っていないようなところでするお話じゃないわよ?」
私達3人は応接間に行った。
「「アイリお姉様!」」
「もちろん、断ったわよ~。というか、多分向こうからお断りのお話が来ると思うわ」
「こっちから断るのは当然として…向こうから断られるのはなんか腹が立ちますわ!」
「そうよ、アイリお姉様のどこが不満なの?」
私は縁談話が無くなればいいだけなんだけどなぁ。
「あ、あの男を撃退するのに二人の所属とか使ったわ。ありがとう」
私が微笑み二人に言うと、それだけで話は解決する。
「アイリお姉様のお役に立てたのならよかった」
「私も」
私は撃退の方法をかくかくしかじかで二人に教えた。
「えー!夜景を見ませんか?とか誘ってくるの?下心が丸見えでもはや上心?」
「上手いこと言ったつもりかもしれないですけどねっ、ミリアーヌ!夜景なんぞ私もミリアーヌもアイリお姉様を王都に来るたびに案内しているでしょう?もう王都の夜景スポットなんてコンプリートしてるわよ」
「私もそう言ったのよ。で、二人の所属とか言ったら、あの男突然腹痛起こして退席したのよ~」
「アイリお姉さまを夜景を見に誘おうなんて100万年早いですわ!っフン」
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