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第12話 大切な幼馴染

 ―夏織視点―



 結局、芹十と雲上の密談を聞いた私は一人で帰ることにした。

 まさかずっと一緒にいた幼馴染が私を陥れようとして動いているだなんて……。


「はぁ……でも、どうやって対策しよう。こういう時はいつも芹十(アイツ)に頼ってたし。はぁぁ……」


 さっきからため息が止まらなかった。今日はコンデション最悪だし、部活は休もう。

 胸の内のモヤモヤが霧散してくれることなく、私は枷でもついているのかと思うほど重い足取りで帰路を辿るのであった。


 ――翌日。


 昨日のことは夢じゃないんだなぁと思いながら、私は学校へ登校する。

 芹十とは中学に入ってから一緒に登校していないし、会わなくてもよかったのは幸いだ。


 教室に入り、友人にま〜た雲上の武勇伝的なことを語られるのかと思ったが、どうやらそうではなかった。


「ねぇねぇ夏織ちゃん聞いた!?」

「え? 何がー?」

「生徒会長立候補の雲上君、裏でイロイロやばいことしてたらしいよ!」

「え。……へぇー……」


 もちろん驚いたが、やっぱり早々にバレたかと納得する。

 友人曰く、不正紛いな情報操作や暴力沙汰、他にも女性関係などの問題が露わとなったらしい。信頼は地に落ち、今はクラスメイトから避けられているとのこと。当然の報いだろう。


 少し気分は晴れたが、やはり芹十も関わっているということで完全には晴れることはなく、授業もあまり集中できなかった。


 ――そして放課後。

 生徒会選挙に出る友達のため色々と物を運んでいると、デジャヴのように物置教室から怒声が聞こえてくる。 


「松浦!! お前が情報広めたんだろ!!!」

「ひぇ〜怖いな〜〜。まぁ一旦落ち着けよ雲上」

「落ち着いていられるか!」


 覗いてみると案の定、芹十と雲上の姿があった。ただ、雲上が芹十の胸ぐらをつかんで怒っている。


「なんで裏切ったんだ!! 僕らなら成功できるって言ってたくせに!!」

「いや……普通に考えて個人的欲求の公約なんて学校側が許すわけねェでしょ……。恋は盲目って言うが、脳みそまで壊す効果もあるのかなぁ」

「お前ぇえええ!!!!」


 雲上が殴りかかるが、怒りに任せた単純な動きだったため、簡単に芹十に組み伏せられた。

 あそこまで救いようのない人は初めて見るなぁ……。っていうか、芹十が情報を流したんだ。


「初めはまぁ面白そうだから協力してやってたが、夏織に手を出そうとしてんなら話は別だ。徹底的にお前を追い詰めさせてもらった」

「クソがァァァ!!!」

「夏織は俺の幼馴染だ。そんでもって、()()()()()()()()でもある。それ以上でも以下でもない。だから、それに手を出そうとしたクズのお前を、俺は絶対に許さない」


 ――ドクンッ。


 その言葉を聞いた途端、私の心臓が大きく跳ねた気がする。なぜか、芹十から目が離せなくなっていた。


(え、えぇ〜……??? 芹十から私への矢印デカすぎじゃない……? いや、嫌ではないのかもだし、むしろ嬉しいかも……って、何思ってんの私!!?)


 多分、これ以上深く考えて結論に至ってはいけない。

 自分の直感がそう告げていた。多分このままだと、《《止まれなくなる》》気がするから。


 頭の上に浮かぶ妄想を頭を振って振り払い、私はこの場を駆け足で立ち去る。


(どうしよう……明日から芹十と話すの難しいかも……。あ、そーだ! イタズラだったらいつも通りできる気がするし、それでいっぱいお話しよ!)


 さっきの出来事で、一番に安堵があった。

 幼馴染が私のために動いてくれていて、私のことを裏切ったりしていなかったということに。 


「えへへ、明日から楽しみだなぁ♪」


 下がらない口角、鳴り止まない心臓の鼓動、収まらないお腹の奥からの熱……。

 それら全てが恋だと自覚するのは、この時の私は知らなかった。



 # # #



「――……そんなこともあったなぁ」

「ぬ゛ーー……ぬ゛ーー……」


 過去に思いを馳せながら、私は芹十の寝顔をずっと眺め続けていた。

 鼻でも詰まっているのか、いびきがウシガエルみたくなってきている。そこもまた愛おしく、思わず笑った。


 久しぶりに優しめのイタズラでもしようかと考え、ギシッと音を立ててベッドに手を付けると、芹十は寝返りをうって私の腕を掴んでくる。


(そういえば、雲上に掴まれた時は気持ち悪かったけど……芹十なら……)


 私の腕を掴む芹十の手を、さらに上から私が握った。


「芹十になら跡つけられてもいいのに……。というか、つけてほしいかなぁ……。芹十の物って感じられるし♡」

「う、ゔ〜〜ん……」


 私の邪念を察知したのか、唸りながら手を離してしまう。

 少し残念だと思いつつ再び芹十観察を始めようとしたのだが、大きなあくびをした。


「ふわぁあ……なんか眠くなってきちゃった……」


 やっぱり芹十(好きな人)が側にいると安心する。

 眠気がドッとやってきて、脳もあまり回っていなかった。よって本能的に行動をした結果、私は()()()()()()()()()()()()()()()


 ――芹十が起床し、今までのどんなイタズラよりも驚くまで残り数十分……。

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