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第1話 生意気な幼馴染

 俺こと松浦(まつうら)芹十(せりと)は、ごくごく普通の男子高校生だ。

 ただ一点、普通とは異なる点がある。


「ふわぁあ……もう朝――もがっ!!」


 平日の朝、窓から差し込む朝日で目が覚めて起き上がろうとしたのだが、顔が半透明なものに包まれた。

 もがもがしながらそれを剥がすと、キッチンラップと気がつく。


「あははっ! 芹十おはよ! 最高のモーニングサプラ〜イズ!!」

「お前っ……朝っぱらからこんなしょうもないことするんじゃねぇ! 夏織(かおり)!!」


 寝起きドッキリを仕掛けてきた張本人は、ベッドの傍でスマホを持ち、写真を撮っていたらしい。

 そんな張本人の名前は汐峰(しおみね)夏織。ミディアムヘアーの茶髪に、青い瞳をしている容姿端麗な美少女。十人中十一人が可愛いと褒めるであろう美貌を持っている。


 そんな彼女とは幼馴染という関係で、それが俺が普通とは異なる唯一の点だ。


「美少女のこの私が起こしに来てあげてるんだよ? もっと感謝してよね〜」

「頼んだ覚えはないっつーの。ってか起こすなら普通に起こせ」

「そんなのつまんなくない?」

「つまらなくて結構だ!」


 面が良くて運動神経抜群、さらにはコミュニケーション能力もハイレベルと、完璧に見える。だが、欠点ももちろんある。

 美少女としてちやほやされすぎたのか、先ほどのイタズラをよく行う生意気な幼馴染に育ってしまったのだ。


「ほら、早く起きて朝ごはん食べなよ」

「わかってるよ」


 やれやれと思いながらベッドから降りたのだが、次の瞬間激痛が走った。

 よく見てみると、床には組み立てて遊ぶ某ブロックが敷かれていたのだ。おそらく……いや、確定でコイツのイタズラだろう。


「いッッてぇええ!!!」

「あ〜あ、ちゃんと床見ないから〜♪」

「お前……! 今日という日は許さんぞ!」

「きゃー! 逃〜げろ〜〜!!」


 ぴゅーっと脱兎のごとく逃げ出す夏織。

 追ってやろうかと思ったのだが、先に玄関から飛び出してそのまま学校に行ってしまったため断念する。


 先程までの騒々しい朝とは打って変わり、朝食は静かに食べ進めることができた。


 制服に着替え、俺も高校へと登校をして自分の教室に入る。


「はぁ……。もう疲れた……」

「おはようセリヌンティウス! 朝からお疲れそうだな?」

「誰がセリヌンティウだ。黙れ、邪智暴虐なメロス」

「邪智暴虐なのは王様だろがい!」


 自分の席に着くと、チャラチャラしている男が挨拶をしてきた。

 コイツは友人である蓮太郎(れんたろう)で、中学生からの仲である。


「まぁな、色々あったんだよ。変わってもらえるなら代わってもらいたいわ」

「めんどそーだから断るぜ!」

「だよな」


 因みにだが、俺と夏織が幼馴染だということはごく一部の生徒しか知らない。同じクラスなのだが、学校ではびっくりするくらい話しかけてこないのだ。

 小学校まではよく話してたが、いつのまにか話さなくなっていた。


(まぁ、あいつにもあいつなりのスクールライフを送りたいんだろうし、気にしていないが)


 まだ少し痛む足の裏を気にしながら、俺は自分の席で友人と駄弁り続けるのであった。



 # # #



 ――放課後。


 自分の家に帰ってきた俺は、タンスの中を漁っていた。

 明日明後日は休日なので、久々に田舎のじいちゃんの家にでも一泊二日で遊びに行こうかと考えていたのだ。なので、色々と準備をしている。


「ルアーがまだ残ってたはずだけどなぁ。おっ、あったあった。……ん? なんだこの紙」


 釣りをするためのルアーを見つけたのだが、同時に謎の紙を発見した。

 その紙にはなんと()()と書かれていたのだ。


「は? 誰の――って俺の!? あー……そういや昔お遊びで書いたような……?」


 内容を見てみると、俺が先に死んでしまってすまないだとか、「実は花壇壊したのは俺です」などの謝罪文とかが書かれている。

 中々幼稚な内容だが、習字を習っていたため今の俺と遜色ないほどの字の綺麗さだ。


「懐かしいな……。昔は死んだらどこいくんだろうとか怖がってたっけ。何も言い残せないまま死ぬのは嫌だったしなぁ」


 昔に想いを馳せそうになったが、ペシッと自分の頬を叩いて中断させる。さながら年末の大掃除中、過去のアルバムを見つけて掃除どころじゃなくなるあの感じが思い浮かんだからだ。

 一旦遺書(笑)は机に置き、明日の準備を進める。


「お泊まりセットヨシ! あー、スマホは……せっかく田舎に行くんだし、電源切っておくか。電子の奴隷からの解放だ」


 いざという時ように一応持っていくが、二日間はつけることは多分ないだろう。


「……あ、夏織のお父さんから連絡来てる」


 俺と夏織の親同士が仲良いのもあるが、なぜか俺は彼女の父親に気に入られているのだ。

 マイナーゲーム(クソゲー)をお互いよくやるし、語り合う仲間が欲しいのだろう。


 明日もゲーム一緒にしないかとお誘いがあったが、お泊まりのことを言って断らせてもらった。


「夏織は……まぁ別に言わなくても大丈夫か」


 そう勝手に決めつけ、俺はスマホを机の上に置いた。


 ――この時の俺は気がつかなかった。

 机上の遺書、スマホの電源、夏織の父親への連絡……。これらでまさかあんなことになってしまうとは……。

第4話からが短編の続きとなります。

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