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最後のばいばい

作者: あかに

「また一緒に行こ!」

「またここ食べに行こうね!」

「あのさ……やっぱなんでもなーいっ!」

「こっち向いて。かわいいな。」


 もう一回言って欲しかった。もう一回会いたい。もう一回ありがとうって伝えたい。

 今日で三回忌。最期にくれた言葉にはどんな意味があったんだろう。なんで神様は幸せな人には大切なものを奪うのか。



 

 この日私は、いつもに比べて素っ気ない態度を取ってしまった。少し宿題とか上からの圧力とかで。

 もう一回やり直せるなら何気ないことにも「ありがと。」って言いたい。



 

 朝、一緒に乗った誰もいない朝一番の列車。田舎だから朝一番って言っても六時ぐらいだけれども。初めて行った、大都会東京・渋谷。映像でしか見たことなかったけれど、本物は感動するものがあったな。一緒に朝からスタバ飲んだっけな。その時の彼の顔とセリフが思い出せるな。

「いいよ。俺が買ってくる。だからここで待ってて。」

 かっこよかった。満面の笑みだった。

「美味しそうにな飲むな。俺もそうやって飲めたらなーっ。」

「そんなことないよ。俺くんも十分美味そうに飲んでるよ。」って言いたかった。

「ありがと。うれしいわ。」とも言いたかった。





 その後に原宿行ったけな。電車長かったな。あとあれ「今度の列車は、短い十一両でまいります。」十一両で短いは流石都会だなって思った。あと、山手線。二分に一本あるのね。すごく多い。

 初めて通った竹下通りは人混みがすごかった。

「竹下通り本当に行くの?人混みが凄いよ?」

 って気遣ってくれた俺くん。かっこよかった。

「ぜんぜん!うち人混み行けるし。」

「松本の人混みと同じ勢いだとだめだぞ?」

 あいにくというか、当たり前だが人混みは凄かった。俺くんのいう通りだった。




 次は有明行ったけな。東京ビックサイトに豊洲市場。どれも大きくて凄かった。ここで寒かったから暖をとりがてら、遅めの昼ごはんに行った。

 一緒にナポリタン食べたな。「ここのナポリタンは、具材はシンプルながら、ケチャップの方に奥が深い風味を感じれた。コーヒーかなんか入ってるんだろうな。」って自慢げに解説してたっけ。実際店員に聞いたら入ってなかったけれど。

 食べ終わった後に少し夕陽が沈みかけた東京湾眺めたな。

「あのさ、言いたいことがある。」

「なに?」

「付き合ってよ。」

「……いいよ。」



 

「次、俺の行きたいところ行っていい?」

 って聞かれた時「いいよ」って言ってれば亡くならなかったのかな。あそこで俺くんの言う通りにしてれば。どれだけ良かっただろうか。行きたかった場所はどこなのだろうか。

 結局うちの要望で東京スカイツリー行った。ここがまずかった。駅から上がって信号渡ろうとした。

「ドーン。」

 うちの体は誰かに包まれてる。包んでいるのは俺くん。

「ねぇ!俺くん!ねぇ!ねぇってば!」

「す、好きだよ。お前は俺にとらわれ……」

 これが最期に残した言葉だった。




 こないだ、三回忌の前に遺品整理をしようとした。その時に日記が出てきた。

「十二月二十日。今日はそっぽむかれた。好きなのに。心にくるものがあった。」

 「十二月二十七日。日曜日。明日、絶対に告白する。自分の好きな気持ち伝える。」

 これには工程表もついてた。

「六時 電車に乗り、渋谷のスタバでスクランブル交差点を見下ろす。

十二時 前々から行きたがってた原宿に行き、一緒に過ごす。

十五時 お昼を食べる。このあと、海を見ながら告白する。

十八時 一緒に銀座に行って、する。 」


「するって、なによ。」と言いたくなる。泣かせるなよ。アホ。けど好きだよ。

 

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