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最後のクエスト  作者: 水凪瀬タツヤ/AQUA
第1章 -集いし者たち-
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【1-7】戦技校での授業と

 入学から3週間後。

 春の花も落ち、少しづつ春の終わりを感じつつある季節。この黒い制服にもだいぶ見慣れてきて、この学園での生活が日常になりつつある。いつものメンバーともいえる7人とほとんど一緒にいて、昼夕食を一緒にとるのはもちろん、授業も同じものをとったりしている。


「んーー……これってどういうことなんだろう……」


 今は魔術理論の授業を受けている。この授業は珍しくあまりとっているメンバーがおらず、おれとリオン、ニアの3人しかいない。他の5人は今季は理論系は取らないと決めていたらしく、この人数になった。教室内も、そういった雰囲気らしく、授業を受けている生徒は10数人だ。春学期は理論の気分ではないんだろう。


 今リオンが取り組んでいる課題は、魔術理論を学び始めると最初にぶち当たる壁のような理論で、これを理解しないと現代の魔術理論を理解することは難しいぐらい基礎となる考え方だ。おれとニアはもともと学んでいたこともあって理解していたので、2人で教えているところだ。


「リオン、だから、これは精霊との契約にかかわることってだけで、そんなに難しく考えなくていいんだよ」

「いや、そんな単純ではないぞ、ニア」

「んーーー??」

「実際にアーリアが契約したものの中で基本的な考え方は等価交換であることなんだよ。今みたいな魔術が一般的になる前から魔法はこの世界の理を変えうるものなんだ。精霊はそれを好ましく思っていなくて、この理論があるんだ」


 だからこそ、この理論が基礎の基礎。すべての基礎になりうるのだ。

 魔力の流れを順序立てて説明しているのがこの理論だ。ヒトが、大地から魔力を受け取り、それを体内で精製して、それを魔術の詠唱・儀式によって魔力を使用して魔術を行使する、というのが魔術の一連の流れだが、この『魔力を使用して』というところが、精霊に魔力を還元するということであり、そこがこの理論の肝である。


 その流れをリオンに説明するが、彼女は未だ頭を抱えている。


「ニア……なんでニアは理解できてるの? あなたも感覚派じゃないの?」

「ワタシは、言葉にするのが苦手なだけで、理解はできてる。意外と理論派なのよ」

「まあ、というか、ニアの場合は付与魔術をよく使っているから、理論の勉強もしていないとなかなか厳しいんだよな。魔力効率だとか、魔術構築とかを組むのに必須な知識だからね」

「そう。それにワタシが理論を学んだのは獣人語でだから、共通語での言葉が出てこないのはしかたないんだと思うよ」

「うーむ……負けないように頑張る」



 なんとか、その授業の時間いっぱいを使って理論の理解が進んだリオンは、満足げに隣を歩く。


「なんとか分かったよ……しばらく復習しないとなぁ」

「でも、さすがリオンだ。きちんと1時限で理解できてさすがだね。な、ニア」

「うん。さすがリオン。ご褒美買ってあげるね」

「やった!」

「今日の授業全部終わったら行こうな」

「うん!」


 2人でリオンのことを褒めちぎりながら、いい気分をさらに乗せていく。この子は気分よく笑顔になっている時が、やはり一番だ。口角をめいっぱい上げ、目も糸みたいに細くなって、しかも、まとう魔力が見るからに楽しそうに跳ねているようだ。


「おつかれ。次は一緒だったよね」

「おう、ベル。魔法史だったな」

「そうそう。一緒に行こうか」


 今まで別の授業を受けていたベルが合流して、次の授業の行われる教室までともに行くことになった。たしか彼は戦術入門を受けていたはず。左手には入門書とは思えないほどの分厚い本を持っており、どうやら読みながら歩いてきたようだ。


「ベルの方はどうだった? 私はまだ頭がパンパンだよ」

「理論だもんね。普段そこまで意識しなくても使えちゃうから、そりゃ難しいよね。僕はほどほどだよ。戦略系の授業と合わせてもっと理解を深めていきたいとは思ってるけど、まだまだ先かなって感じ」

「やっぱ、ベルって2つも上だからか、ずるく感じる。余裕があるよね」

「そんなことないよ。年なんか関係ないさ。ほら、スキル見てみて」

「あー……よくもわるくも、ね」

「ん? なにがわるいんだ?」

「ちょっと年と不釣り合いだよね、ってことだよね、リオン?」

「うん。前からだけどね」


 なんだか褒められているのか貶されているのか分かりづらい反応をされる。


「スキルは大変だな」


 ニアには肩を叩かれて、謎の同情をされてしまう。わからん。


「それじゃあ、ワタシは次は違う授業だから行くわ。また後で」


 ニアはそう言って、曲がり角で違う方向を曲がり、おれたちとは違う教室へ向かう。



 その日の学校終わり、おれ、リオン、ニアの3人で城を抜け出して、リオンのご褒美を買いに街まで出かけた。普段は城内でも夕食をとっているが、たまにこうして城下町まで来て食べる生徒も多いそうだ。門限とかは特に決められていないこの学園ならではだ。


 今回の目的地は城下町でも人気店となっているスイーツショップであり、そこに併設しているカフェで食べよう、ということになった。このデール王国どころか、大陸随一とも名高い有名店であり、客入りがそうとうある店で、最初来店するときに30分ほど待たないと席がないと言われたほどだ。快く承諾し、店の外で用意されていた椅子に座り待つことになった。


 春の終わりを感じるような宵の風を感じながら、3人並ぶ。

 どこか心地よさを感じながら、背後の店から漏れ出す甘い匂いに包まれる。


「なんか、待たされると、余計期待感が上がっちゃうよね。ほんとに楽しみになってきたよ」

「そうね。楽しみ」


 2人とも本当に楽しそうだ。まるで、2人には生えていない尻尾がブンブンと振られているのが見えるかのようだ。


「スキルもこういうところでいいんだっけ?」

「ああ。おれも甘いの好きだから」

「そうだったね。男の子にしては珍しく激甘もいい人だもんね」


 おれも結構甘いものは食べる。コーヒーとともにではあるが、そこらへんの女子ぐらいには食べる。旅の最中での、立ち寄ったところで暇を見つけては食べていた。その際にはこの2人とともに一緒に食べることもよくあった。


「なに食べる? やっぱりこの一押しケーキかな?」

「この前雑誌で見たあのケーキも捨てがたい。このお店って、それで有名になったらしいから」

「あー、あの超積みケーキでしょ? たしかにあれも食べてみたいよね。あれのために遠方から来る人も多いらしいからね」

「そうそう。せっかく来たなら食べてみたいものだよ」

「うーん、たしかにぃ……」

「スキルは決まっているのか? ワタシたちみたいに悩まなそうだけど」

「いんや、おれだって悩んでるよ。あのいろいろ乗ってる特盛パフェも捨てがたいなって思ってる。定番っぽいのは正直いつでも食べに来れるけど、せっかくリオンへのご褒美なら、特別なものたべたいもんじゃないか?」

「わー! それは確かに言えてる! じゃあ、なんにも気にせずにすごいやつ頼まないと!」

「……スキル」

「ん?」

「……さすがだ」


 そんなこんなでメニューとにらめっこしながら何を頼もうか迷っているうちに、店の中から店員に声を掛けられ、入店することができた。店内は外以上に甘い匂いに包まれており、人によってはそれだけでおなか一杯になりそうなぐらいだ。

 おれたちは席に着くなり、決めていたものを各々頼み、提供されるのを待つばかりとなった。その間も雑談をしながらで、デザートへのワクワクを高めあった。

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