【1-6】五色の門と
翌日。
新入生にとっての初めての授業が始まった。
一番最初の授業は、昨日の魔力測定とオリエンテーションと同様で、新入生全員がそろって受ける授業になった。4年間通年で受ける必要のあるゼミナールの初回授業だ。初回授業では、まだどのクラスルームに配属されるのかが決まっていないため、今回はそれを決めるための授業である。
「みんな一緒のクラスになれるといいね」
リオンが7人に向かって言う。
今日も最初に同卓した8人で集まっており、授業の準備に集まる教員たちを横目に見ながら駄弁っている。
クラスルームは、1学年5クラスある。このデール王立学園戦技校は、1学年が200人定員であり、各学年20人づつで分けて、組み分けされる。このゼミナールクラスでは、この学園で行われる催事の際のグループになっており、クラス対抗で順位を競いあうらしい。
各クラスは、ルブルム、カエルレウム、アルブム、アートルム、フラーウムの5クラスで、最初に配属されたクラスは変わることはない。上下関係も若干あるらしく、同じクラスの上級生との交流もあるそうだ。
クラス対抗イベントでは、学年を横断した全クラス対抗戦ともなっているらしく、学年1位だけでなく、全校1位も決めるらしい。
ちなみにこのクラスを決める方法は事前の情報が全然なく、うわさ程度のことしか言われていない。いわく魔力の属性であるとか、本人の性格を見てだとか、なんとかかんとか。教員が秘密裏で決めるので、明るみになることないのだろう。お金を積んだとしても外部の人間には融通させることはできないらしいので、この学園がいかに権力に靡かない教育機関としての矜持をもっているかがわかる。
「でも、さすがに誰かは別になりそうだよな」
「5クラスに振り分けだからね。ワタシたちが一緒になる確率なんてそうとう低いんじゃないの?」
「まあ、そうだろうな」
そんなことを話していると講壇では準備が終わったようで、教員たちが注目を促した。
生徒の視線が集まると、順番に教員の自己紹介が始まった。それぞれ、どのクラス担当なのか、担当科目の紹介などをして、最後に自己紹介をした教員がクラス分けの発表をするようだ。
各クラスの担任の後ろに、各クラスの色をした大きな投影板が現れ、その一番上にはクラスの名前がそれぞれ表示されている。
向かって左側から、赤色にルブルム、青色にカエルレウム、白色にアルブム、黒色にアートルム、黄色にフラーウムとなっている。これも開校したときからの伝統であり、当時は寮と結びついて設置されいたそうだ。しかし、生徒数が増えたことと、寮とクラスが結びついていたことで起きた事件があったそうで、それ以来、寮は寮、クラスはクラスとして扱われるようになったそうだ。
「おお、なるほど……」
「あそこに順番に表示されてくるんかな」
「あの先生が順番に読み上げていくんだろうな。それに伴って表示されていくんだと思う」
「なるほどぉ」
そうして順番に発表された。ニアがそうとう低い確率だと確認していたが、そのそうとう低い確率にあたってしまった。なんと8人がみな、同じクラスになった。
向かって一番左にいる教員の後ろの投影板に映し出されているのは、赤色。
おれたち8人はルブルムクラスになった。
そのまま、ルブルムクラスに配属された生徒一同は担任の教員につれられて、ルブルムのクラスルームに案内された。講堂の位置する1階からは結構距離があり、同じ1階ではあるものの、城の端まで歩いた。大きな天窓があり、日光が注ぎ込む明るい城内で、赤を基調とした調度品が点々と飾られている。
案内された部屋の入口、扉の上部にはルブルム色の紋章が飾られており、完全にこのクラスのために用意されているように感じた。部屋に入ると、廊下と同じように光が差し込んでおり、明るくきれいだ。
「改めて、チェルシー・イーグルだ。このルブルムの担当教員をやっている。4年間、よろしく」
教室の正面に立つ教員がそう言った。長く伸ばした黒い長髪を高めに縛る女性だ。目鼻立ちもよく、整った顔をしている、いわゆる美人だ。そんな顔とは反比例して口調にはどこか棘があり、愛想とかは感じられない。
「この学校の仕組みをどの程度知っているかは知らないが、このゼミナールクラスについての説明をしておく。知っての通り、4年間、君たちはそれぞれ5色のクラスに分かれて互いに磨きあってもらう。君たち20人はルブルムに所属が決まったが、これは卒業時までずっと同じだ。卒業までクラスメイトとして交友を深めていってほしい。半年間はこの学園になれてもらう期間ではあるが、それが過ぎたらルブルムの先輩たちとも同じ講義をうけることもあるから、ぜひ先輩方からもいろいろ学ぶといい」
まずはルブルムに配属された記念に、と、クラス全員に何かが回される。小さな袋にはいっていて、取り出してみるとピンバッチが入っていた。ちょうど制服の襟にワンポイントでつけれるようなサイズで、赤色の丸で中央にRが刻まれている。
「これが諸君らのルブルムである証だ。わたしも学生時代このルブルムに所属していて、ある種の誇りの象徴のように感じていた」
そういいながらイーグル先生は手のひらに乗せたピンバッチを見せた。
「歓迎する! 我が後輩諸君! ともに鍛えあおう!」