【1-5】魔力測定と(2)
「次、クラウド・ローバー。前へ」
呼ばれてクラウドは講壇へ向かう。
機器に手を当て測定を始めた。
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属性:火
特性:合成
量:45-65
質:硬い
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「まあ、そんなもんだ」
「うん。可もなく不可もなくだね」
「それでいい」
満足げにクラウドは頷き、帰ってきた。彼は平均であることをひとつ目標としており、自分の魔力測定の結果も達成したので気分がよさそうだ。
そのあとも続々と生徒が講壇に呼ばれていき、新入生全員が測定を終わらせた。
おれたち5人の結果はというと、
ベル・デュー・ナイト
属性:土
特性:操作、付与
量:40ー55
質:硬い
ニア・ボー・ビースト
属性:土、光
特性:付与
量:30ー50
質:柔らか
といった結果になった。
ベルもニアも、おおむね想像通りの結果で、自分の観察眼が結構精度が高かったと一種の自信がついた。魔術に関しては、もともと故郷にいるときからいろいろ試していて、使用人に頼んで他国から本を取り寄せてもらったりもしていたので、その成果かと思う。
同卓になった残りの3人は、戦ったり魔術を使ったりするところは見たことなかったが、なんとなく発しているものの感覚と結果が一致しているところがあった。
女子2人と寮が同じになったカレンは、
属性:土
特性:操作、付与
量:45-60
質:やや滑らか
そして、エドウィンは、
属性:火、水
特性:操作、合成
量:50ー70
質:やや粗い
最後に、もう一人の同卓についたアレクサンドル・イリイチは、
属性:火
特性:操作、分解
量:40ー75
質:粗い
となった。
アレクサンドルは、大陸最大の面積を支配するアリーシア帝国の第2階位の貴族の出身の少年だ。北方諸国を取りまとめる宗主国であり、第2階位貴族というと、どこかしらの大きな都市を収めている領主貴族だったと記憶している。と、肩書は立派だが、とても接しやすく、変に擦れていない素直な性格であることは、昨日の数時間でわかった。
「いやー、やはりこんな感じだったか! 父上にもさんざ言われていたが、このムラがある感じをこの戦技校で矯正していきたいものだ! スキルよ、君はどのようにその魔力の多さに反して安定できるようになったんだ!?」
「そんな偉ぶれるようなことはしてないよ。日ごろからこうやって魔力を練っている」
これは旅を始める前からやっていることだ。
魔力を通わせている生物は、勝手に魔力を放出してしまう。これは呼吸をするのと同じで、大地や大気から魔力を受け取り、それを身体に取り入れると、古い魔力を吐き捨てるようなものだと言われている。この体内を通過した魔力を用いて魔術を行使しており、この魔力の質で魔術の質も変わってくると書かれていた。
なので、日ごろからこの放出されている魔力を練り上げる訓練をすることで、自分の魔術の質を向上できるようにと、これを日常にしている。文字通り、寝ても起きても行うようにしている。
「…………なんと……! 認識できる魔力と測定結果とが食い違っているように見えていたが、そういうことだったのか……」
「そうなんだよ! スキルはそこらへんの魔術師よりも魔力の錬成はすごいんだよ!」
「おお、リオンよ! まことその通りだな! 我が領地にもここまでの練り上げができる者は片手で数えられるほどしかいなかったものだ!」
「でしょー!」
リオンはまるで自分のことかのように自慢をしているが、それに乗っかれるアレクサンドルはさすがだ。彼はノリがリオンに若干近い。
「さて、新入生諸君! 魔力測定はこれにて終了だ。そのままオリエンテーションに移行するので、楽にして聞いておいてほしい」
講壇に立つ測定を担当していた教員が、拡声魔法をつかって講堂全体に話しかける。
オリエンテーションの中身としては、今後の授業の取り方についてだった。
普通学校とは違い、中等学校では選択制がとられることが多い。自分たちで取りたい授業をとっていき、必要単元を満たすようにして、卒業を目指していくかたちだ。
その過程で、自分の得意分野、専門としたい分野が見つかったなら、それを突き詰める道に進んでもよいし、将来に役立てるための実学を学んでいき、身を立てることもできるといった塩梅だ。
以前、この戦技校でとれる授業について調べたが、魅力的な授業もたくさんあったので、結構楽しみではある。必修科目である魔術概論から派生していく魔術理論系統の授業もそうだし、古代魔術やまじない、魔法史なんかも楽しみだ。