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最後のクエスト  作者: 水凪瀬タツヤ/AQUA
第2章 ー峰雲に臨みてー
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【2-16】クラス対抗戦と(2)


―――


「待ってたよ、2人とも」


 赤色の扉をくぐり通いなれた部屋にはいると、自信なさげな声で話す、くすんだ金髪の4年生、エーデル・ローレルが声をかけてきた。

 彼以外のメンバーも勢ぞろいしていて、各々が話し合って連携を確認していたみたいだ。


「すみません、遅れて」

「いや、そもそもみんなで集まる予定ではなかったしね。大丈夫」

「いきなり本題にはいってもいいですか?」

「スキルくん。もちろんだよ。僕たちも意見をすり合わせたいとおもっていたんだ」

「はい」


 そこからはスキルが主導となって話し合いが進んでいった。

 エーデルと、もう1人の薄い黒髪をした4年生、学年次席であるヨセフ・ベールイがと、スキルの出す案に対して問題点を上げたり、対応策を考えたりして話が進んでいき、最終的には、最初にやっていた作戦とは全く違う形になって仕上がった。


「……結構1年の2人には負担がかかってしまうけど、この形が一番僕たちの力を発揮できるんじゃないだろうかなあ」

 と、後ろ髪を掻きあげながら呟くエーデル。


「自分もそう思う。堅実。質実剛健。1つづつ積み上げた作戦があるからうまくいくと思う。皆がしっかりと自分の役割を果たせれば、着実にかてるのではないだろうか」

 アリーシア出身らしい堅い話し方で頷くのはヨセフ。


「「……」」

 無言で見つめ合い気合を入れ合っているように見えるエヴィとレミィのデュモイ双子。


「よっしゃああああ! やってやるっすよおおおお!」

 低めの身長にたがわぬ大きな声で喝をいれるのは、赤毛の2年、アルス・ノーウィン。


「ウチもやってやるんだから!!」

 同じように盛り上がるのは暗い茶髪の2年、ベス・ゴーウェン。


 ルブルムのクラスルームに入って1時間程度だろうか、今までよりも洗練された作戦が考えつかれ、同時に互いの信頼関係みたいなのが強まったように感じられた。



―――



「スキル。やっぱお前はすごいわ」

「……どうした、急に」


 会議も終わり、寝るだけになったが、少しだけ動きを確認したいと思った俺は、スキルを誘い裏広場まで行った。ここなら今見たいに皆が盛り上がっている時期でも、比較的人気も少なくて無駄な気疲れみたいなものもしないと思ってだ。


「旅、してる時もそうだったけどさ、なにか壁にぶち当たると、決まって最初に動くのはスキルだったよなあって」

「そうか?」


 カン。カン。

 と、木剣を打ち合わせながら身体の動きを確かめるように型を行う。剣の基本であるシラサギ型。1から6番まで順番に通しで行う。


「……最近、思い出話ばかりしているから、どうしても昔のことばかり思い出してしまうんだ」

「うん」

「アウェシスで剣の修行ばかりしていた時。ポーターさんの道場での稽古の日々。リンと交わした剣」

「……」

「……父が死んだ時。キールを探している時。キールを見つけた時」

「……」

「……復讐には意味がなかったと知った時」


 それを知った時、なんとも言えない気持ちになった。

 やるせなさというのか、無力感というのか、ここまでの自分の人生に、価値がなくなってしまったように感じた空虚感というのか。


 ただ愚直に剣を振っているだけでいいのなら、どれだけよかったのだろうか。

 ただ周りの剣士と共に、剣の高みを目指すだけなら、どれだけよかったのだろうか。


 人生っていうのはそんな簡単にはいかないのだと、あっさりと現実を突きつけられてしまったのだ。


「……クラウド」

「いや、いまは違うな。スキルの話だ」


 シラサギ型を一通り行ったので、そのままタカ型に移行する。この型は攻撃的な型を集めたもので、仕太刀打太刀どちらもが勉強になる型稽古だ。


「旅を始める前、アウェシスの街中で魔獣が現れたときも、スキルは率先して動いていた。旅を始めてからも、慣れない異国の地であっても、いろいろと動いてくれていた。別にベルに任せてもいいのに」

「……ああ、まあ、そうかもしれない」

「だからすごいなって」

「でも、クラウド、おれはそんな難しいことをしているとかではないんだ」

「と、いうと」

「んー、あんまり自分のやっていることを話すっていうのも恥ずかしいものだけど、単純にいうと、世界っていうのはそう簡単に変わってくれるものじゃないから、なら一番変わる、いや変えるのが簡単なところから変えてやろう、っていうのが基本的な考え」

「一番変えるのが簡単なところ?」

「自分だよ。人のことを変えようとするのは難しい。

 貴族社会に生きてきたからすごくわかるんだ。みんな自分の財や権力を守ることに必死だし、そのために持てる力を総動員してくる。より大きな力を持つ人がさらに大きな力を持てるようになるんだ。

 でも、歴史上ではそういうのを打破してきた人たちもいっぱいいる。アーリア以前、まだフルネル王国が王国でないころから、虐げられる立場だった人たちの中から力を蓄えて、強くなって、国を、世界を変えてきた人たちだっている。最初はか弱い存在だったとしても、自分が変わると決めて実際に行動してきたから、歴史はそうやって変わってきた。

 彼らにできておれにできないことはないだろう? だって同じ人間だ。四肢満足で、魔力は人よりもちょっとは多いけど、筋力はあんまりない。他と同じように悩むし、立ち止まることもあるけど、前提条件はそんなに変わらないはずだ。なら、やるだけだ。ただ、目の前の問題を見据えて、やるだけ」


 簡単だけど、難しい。でもだからこそ実践することに意味があると思うんだ。

 そう付け加えて、口を真一文字に結び、スキルは押し黙った。


「……そうだな、それが難しいんだよな」


 俺も、何かを変えたいと思ったことはあるはずだ。

 いや、そんなことばかり考えてきた。

 過去を変えたい、と。

 父が殺されたという事実を変えたい、と。

 父が行っていたことを変えたい、と。

 しかし、そんなもの変えること自体が土台無理なのだ。

 スキルがいう所に従うと、過去なんていうものは変えられるわけがないし、肉親とはいえ他人である父を変えることは、もし俺が父と同時代に生きていたとしても、無理に等しいのだ。


 ならば自分を変えるしかない。

 しかし、自分を変えるとは、いったい全体どうすればよいのだろうか。


 俺自身は、剣を振ることで自分を変えてきたとは思っている。

 愚直に自分と向き合って剣を振り続けていた頃。

 好敵手とも言えるリンと出会い、同じ剣でも違う道があるのだということ知った時。

 リンの扱う剣技を少しでも自分の中に取り入れることができた頃。

 虚無感の中でも剣を振り続け、それが人のためになった時。

 そして、その積み重ねが、大きな力を打倒す力のひとつになった時。


 それが本当に自分を変えるという実践になってきたのだろうか。

 もっと大きなものを変えないといけないのではないだろうか。

 過去を変えなくても、自分は満足できるのだろうか。

 本当に、スキルの言うような、フルネルの歴史を切り開いてきた英雄のように、自分を変えることで世界をも変えることができるようなことが為せるのだろうか。


 そう考えると、なんだか剣先が鈍くなるような感覚にとらわれてしまった。

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