【2-15】クラス対抗戦と(1)
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クラス対抗戦もだいぶ日程が進み、もう終わりに近づいてきた。
俺たち1年生が出る出番もほぼ終わっており、あとは各学年各クラスで2名づつ選出して行う全学年対抗のマッチが残るのみになった。
いままでの学年ごとの日程に比べて、全学年が選出して行われるこの対抗戦の最終戦は、配点も高く、全校の注目を集める、文字通り最終総力戦とでも言える対抗戦だ。
我らがルブルムクラスは、大変善戦しており、現在総合1位であるアルブムクラスとはわずか50点差。この全学年戦で順調に勝ち進むことができれば、優勝も見えているのだ。
そして、今はまさにその大一番に挑む人員を選んでいるクラス会議の真っただ中である。
「アルブムのこれまでの戦績的には、1年のあの子は出てくるよな。魔術斬った化け物みたいな子」
「それに、あのまじない使いの女の子もなかなか危険な子じゃあないか。今のところあまり活躍してないように見えるけど、全学年そろうと、3年の彼もいるからな」
「ああ、確かに。もうすでに魔術師連盟の赤クラスなんだろう、彼って。彼とまじない使いの子がそろうと、魔術戦では勝ち目が薄いなあ。ありゃあズルだ」
「なら、こちらもそれを上回る技術を見せつけなきゃだな。俺たち4年からは、エーデルが適任の1人だろう。すでに上級校への進学が決まっていて、今は魔術校の講義を受けに行っているぐらいだ。な!エーデル」
「やれるだけは、やってみるけど、うまくいくといいなあ」
「なら、うちら3年からは魔術斬る子に対抗して、冒険者としても活躍しているこの2人だな!」
「お! ルブルムの双子星! エヴィとレミィ!」
「や、やめてよ!」
「そんな担ぎあげられても困る!」
「でも、出てくれるんでしょ!」
「ま、まあ、いいけど」
「じゃあ、4年のもう1人はヨセフだな! やっぱ学年次席には、主席に勝ってもらうべく頑張ってもらわないと!」
「……ああ。主席がいるフラーウムも、全然総合1位が狙える点数だからな。気を引き締める」
「2年は……、結構ロマン枠だからなあ。みんなバカ火力か、バカ脳筋しかいないからなあ」
「そのなかでも、先輩たちから見て今回活躍してた2人を選出します! アルスとベスで!」
「えええ! その心は!」
「んーーーーー、やっぱ一番火力があったと思ったからね! ルブルムらしい、いい火力だった!」
「なら、それで!」
「じゃあ、1年は、スキルとクラウドで!」
「おれたちですか?」
「なんか、みんなバランスがいいのが今回の1年生だと思うけど、やっぱこの2人がわたし的には一番バランスいいとおもうんだよねえ、そうじゃない??」
「まあ、たしかに、そうかも。息もピッタリだしね」
「じゃあ、決定!!」
ほぼほぼ4年のクラス長を務める女子生徒によって決められたが、無事全学年戦に出る生徒が決まった。この決められた8人は、全学年戦を通じて変えることはできない重大な決定なのに、気軽に決められた感が拭えない。
意外と、戦略だとかを決めずに決められた割には、選ばれたメンバーで話し合うと、とんとん拍子で基本戦術が決まった。
イーグル先生が言うにも、他のクラスも誰を出してくるかは大体決まっているし、新しく入ってきた1年の対策だけ考えるパターンが多いそうだ。そうすれば、各個人が蓄積した他クラス生徒の対策と新しい対策を組み合わせて、ある程度は戦えるそうだ。
これまでの4学年分の試合をみて、新しい戦術を思いついたらそれを組み込んでみたり、あのクラスのあの人物が意外と危ないかも、と思ったら、それを対策する案も立案しておくなど、まさにクラス対抗戦の集大成であり、それこそがこのクラス対抗戦の醍醐味であるとも言っていた。
突然という形で選ばれた俺たちではあったが、意外にもスキルは順応していた。先輩たちの会話の中にも気にせず臆せず入っていき、自分の考えた対策や戦術を披露している。ああいうのは俺にはできないんだ。人と話すのが苦手というわけではないが、集団戦に関しては、俺はあまり口を出せることはない。
やはり、俺は剣を振り上げ、剣を振り下ろす。そういう単純で複雑な理合いの中でしか生きられないようだ。集団というのは、少し苦手だ。
「それで、クラウドはどこに配置する? 彼の剣技は前線に出すのが一番効果があるとおもうのだが」
気づいたら、俺の話をしていた。
「もちろん、ルール的には前線の押し上げをするか、拠点を守るかが一番クラウドが光ると思うんですけど、意外と絡め手に弱いところがあるから悩みどころなんです」
「ほう、スキル君。その心は?」
「いや、俺が答えるよ」
なんか、スキルに説明されるのが恥ずかしいような内容を話されそうになったから、自ら引導をわたすことにした。
「スキルの言った通り、俺は絡め手には弱いです。罠を張られていたりしたら、高確率で俺は使い物になりません。だから、俺個人的には拠点を守りたいです。一緒に何人かいてくれると助かるんですけど」
「なるほど。なら、エヴィとレミィが一緒に拠点を守ると良さそうだ。そうじゃないかい?」
「「たしかに、ボクたちでクラウドくんをフォローしてあげれば、盤石だと思うよ」」
双子の2人が、同時に全く同じことを喋った。双子は男女であり、声のトーンが若干違うことから、きれいな旋律のようにも聞こえた。
「じゃあ、決定だね。そうすると、前線は僕ら4年と、アルスとベスの2年で固めようか。魔術主体のベスは若干後ろ気味で、スキルくんは全体を見ながら遊撃手的に動いてくれると一番いいかもしれない。得意だろう?」
「はい、わかりました」
「よっしゃ! これでオレたちの戦術固まりましたね! 先輩! 勝ったも当然っすよ!!」
「アルス、君は冷静に引くべきところはわきまえて行動してくれよ。耐久値減っても気にせず突っ込んだのが去年の敗因だからね」
全学年戦ではそれぞれに魔道具が配付され、それによって受けたダメージ量が蓄積される。それぞれで受けてよいダメージ総量も決められており、それによりフラグを取り合うという戦術もさることながら、どこまでダメージを負っていいかという計算も必要になり、より高度で戦略的な行動をする必要がでてくるのだ。
「あ、はいっす。気をつけるっす」
と、なんやかんやで、大体の戦術も決まり、クラス会議が終結した。
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初戦。
対アートルム戦。
緒戦は若干押され気味ではあったが、アルスの放った特大魔術と、ベスの放った4属性魔術がアートルムの要の選手の耐久値を吹き飛ばし、無事にフラグまでたどり着くことができた。
勝利。
第2戦。
対フラーウム戦。
ずっと押され気味であった。着実にこちら側の耐久値を削り切られ、完封されるように全員倒された。
完敗。
第3戦。
対カエルレウム戦。
耐えに耐え、何とか前線を押し上げ、フラグに到達するも、前線組は全滅された。しかし、拠点組とスキル、ベスの5人で残りの選手を倒しきり、なんとか全員倒す。
勝利。
そして、第4戦。最終戦。対アルブム戦。
他のクラスの勝利状況も鑑みると、ここで勝てば、ルブルムの優勝は堅いというところ。
そんな一大勝負が明日に迫ってきているところだ。
講堂では、まさに祭の真っただ中といった様相で、盛り上がり、明日のルブルム対アルブム戦がどうなるか、クラス関係なく話し合っている。
まさに、今年度のクラス対抗戦の勝者が明日決するということで、みなが湧き上がっているのだ。
しかし、選手である俺たちはというと、極めて冷静であった。
そりゃそうだ。別に、命がかかっていたり、ましてや成績がかかっているわけではないけれど、やはり、クラスの威信だとか、期待だとかは背負っている気分ではある。
盛り上がる気持ちもわかるが、明日の自分の動き方を想像したり、他の選手と作戦を詰めたりするほうがよっぽど大切なことなのだ。無駄なことはしてられない。それだけ、真剣なのだ。
「スキル。明日のことなんだけど、ちょっといいか?」
「ああ、すまん、今2年の2人を探してて、詰めておきたいことがあったからさ。んーー、まあ、いいや。なんだった?」
「いや、そんな大したことじゃないんだけど、思いついたことがあって。できれば全員に伝えなきゃとは思っているんだけど」
そう言うと、スキルは目の色が変わったように俺を見て、沈黙のあと、着いてきてくれ、と半ば強引に俺を引っ張っていった。
「……おれも少し思う所があったんだよ。ここまでは結構順調ではあっただろ? 一応、2回は勝ってる。でも、対策されたら簡単に負けうる配置なのはフラーウムとの一戦で重々わかった。アルブムなら絶対対策してきていると思う。だから、奇をてらったことをしないと、と思って。2年生を探していたのは、それもあってのことなんだ」
「そう、か。やっぱり、そうだよな。俺も思った。やっぱり俺が前線張りたい。スキルと一緒に」
ずっともやもやっと抱えていた考えが今すぐにでも噴き出てしまいそうだった。2度は勝っていたとしても、1度の負けは完敗、惨敗だった。なにも思わないわけがない。本当ならカエルレウム戦で少し変えたかったが、変えるような暇を見つけることができずに、なんとも苦しい勝利しかできなかった。
しかし、最終戦。
変えることができるなら今しかない。
ここまでで思っていた問題点を洗い出して、アルブムに勝つためには、俺とスキルが前線に立ち、それに伴った周りの動きがあると勝てると、そう考え付いたのだ。
「……うん。おれもそう思ってたんだ。みんなに話を通さないと」
そう思っていたのはスキルも同じだったようだ。
詳しい彼の作戦は分からないが、大体は同じなのだろう。
やはり、5年近い付き合いにもなる俺たちだ。言わなくてもある程度のことは通じ合える。
と喧騒の中を先輩たちを探していると、唐突に大きな声をかけられた。
「スキル! クラウド! みなクラスルームに集まってる! 行け!」
と声を飛ばしてきたのは我らがチェルシー・イーグル先生だった。
その声に従って俺たち2人は駆け、赤の門の前にたどり着いた。




