【1-10】異変と
異変は突然起きた。
2番街からの帰り道。
2人で並んで歩いていると、何かを感じ取った。
それはおれだけでなく、リオンも感じ取ったらしく、辺りをしきりに見回した。
この感じたことのある違和感は確実にあれだ。
――魔獣。
この世界で脅威となっている存在のひとつ。
発生原因は未だ分かっておらず、どこかからか生まれ、倒すと消滅する存在。
人々を恐怖に陥れ、実際に被害を与えていく存在。
この感覚は完全にそれである。
「なんで……!?」
「わからない! けど、これは……!」
道の向こうから悲鳴が聞こえてきて、急いで駆け寄ると、そこには魔獣がいた。
それも1匹や2匹ではなく、何十匹もいた。
「……やらないと!」
リオンはすぐさま短剣を開放し、魔力をまとった。
すぐおれも帯刀し、抜刀する。
駆け寄りざまに1匹、切り払い、リオンは群れの中に飛び込んでいく。
彼女のスピードを生かした戦闘方法で、これで彼女は魔獣との闘いを乗り越えてきた。
おれは、魔術で牽制を挟みながらじりじりと近づいていき、1匹、また1匹と倒していく。
合間で逃げ遅れている人がいないかを見ながら、状況を確認していく。
これは、どこから入ってきたのだろうか。この城下町には門番が立っており、ならず者や魔獣の侵入を防いでいる。そこらの兵隊ではなく、この国の兵だ。なによりも信頼できる。
だとしたら内部で発生したということになるが、そもそも街の中で発生する例を聞いたこともない。
不可解だ。
「……たすけて!!」
屋台の裏から声が聞こえてきた。
走り寄っていくと、小さく震える少年と少女がいた。10歳前後だろうか。
「大丈夫か? ケガはない?」
「……うん。アニーも無事だよ」
魔獣からかばうように少年は少女を隠しており、小さな勇気を振り絞って彼女を守る決意をしている。そんな目をしていた。
「このまま、ここで隠れていてくれよ。保護魔術はかけておく」
「うん……!」
「……リオン!」
「……スキル!」
1つの群れを蹴散らしたリオンはこちらに駆け寄り、次の獲物を探す。
「……スキル。まだ使わない方がいいよね……?」
「……ああ。周りに見られる」
「うん」
1匹、1匹とそこら中から魔獣は湧いてくる。
犬のようなやつ。猿のようなやつ。様々な形をして襲い掛かってくる。
「リオン、ちょっと大きめなのぶちかますわ。強めに保護呪文かけなおしておいて」
「うん。わかった」
詠唱を始める。この魔獣の群れを一層できるような魔術を選択する。
おれは本来、水属性の魔術が得意ではあるが、得意属性ではない魔術も多少使える。例えば電撃系統の魔術。風属性の魔術ではあるが、きちんと詠唱をし、潤沢な魔力を注ぎ込めば、発動できる。どうしても効率が悪くなってしまうこともあるが、その時その時に必要な魔術を選択できる能力も必要だから覚えた。
「……サンダーボム!」
爆ぜるように辺り一帯に電撃が駆け巡る。その中でも高電圧高電流の電撃が魔獣の身体に突き刺さるように当たり、その一瞬で魔獣は絶命する。魔獣目掛けて狙うように放ったとはいえ、この魔術が辺りにも電撃をまき散らしてしまうため、多少被害が出てしまうが、リオンの保護魔術によって最小限の被害で収まった。
「……これで、全部か?」
「うーん……うん! 大丈夫そう!」
リオンの得意な索敵魔術で辺りを走査すると、魔獣がいないことが確認できたらしく、大きく頷いた。
「とりあえず、兵を待とうか」
「そうだね」
その場に2人座り込み、武器をしまう。
先ほどあんな話をしたばかりなのに、こんなことが起こるとは思ってもいなかった。
なによりも、魔獣が街の中に現れた理由だ。なにが魔獣の発生原因になったのか。魔獣も魔術と同じように、なにか理由がないと発生することはない。街の中にあるとは、と堂々巡りしてしまう。
「……スキル、考えてるね。そんな思いつめないでよ?」
「うん」
「いいところはいいところだけど、今はいいんじゃないかな? わかんないことはわかんないし」
「それも……そうだな」




