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第九十四話:帰還

謀反人ギリアス一行を討ち取った事に成功を収め、ラーニャを救出した事をユリアとアシュリーに知らせた。勿論、ギリアス一行の無惨な最期も含めてである


「か、閣下、その娘はその惨状を目の当たりにされたと・・・・」


「えぇ、奴等を逃すわけにはいきませんからね。」


「賢明な判断よ。貴族になりたいというあの娘には良い薬、いや劇薬になったでしょうね。」


「そ、それでラーニャはどうなされたのですか?」


「あぁ、ラフィトと感動の再会をしている事でしょう。」


「まぁいいわ。それでどうするの?」


「どうするとは・・・・」


「陛下への御報告よ。」


ユリア曰く、謀叛人ギリアス・ガルグマク元大公とその一味を討伐した事の報告について尋ねてきた


「あぁ、その事ですか。陛下には奴等が仲間割れを起こして全滅したと報告致します。我等が駆け付けた時には全員死亡していた。それ故、褒美はいらないと書状に認めます。」


「か、閣下!」


「理由を聞いてもいいかしら?」


「ええ。」


アルクエイド曰く、此度の謀反人ギリアスを討伐した事を報告すれば間違いなく褒賞を賜る事は必然となる。ただしロザリオ侯爵家、特にアルクエイド・ロザリオに妬み嫉みや存在を危険視する貴族が現れて国王に讒訴する可能性がある。また王族も力を増しているロザリオ侯爵家を警戒し、潰しにかかる可能性があるため保身のための方便だという。それを聞いたユリアとアシュリーはというと・・・・


「アルクエイド、臆病すぎるほど用心深くなったわね。」


「お褒めの御言葉として受け取っておきます。」


「閣下はそれで宜しいのですか?」


「ええ、私は褒美よりも自分の命の方が大切ですから。痛くもない腹を探られるのは御免ですから・・・・」


「まぁ、貴方がそう決めたのならそれでもいいんじゃない。」


「アシュリー嬢、この事は他言無用にお願いします。」


「あ、はい。」








「お姉ちゃんのバカ!」


「ご、ごめん。」


「パパとママの次にお姉ちゃんが・・・・お姉ちゃんが・・・・」


「・・・・ごめんなさい。」


無事に救出されたラーニャはというと(ラフィト)と再会を果たし、怒られていた。ラフィトは唯一の肉親であるラーニャの無事を内心、喜びつつも積もりに積もった怒りを爆発させたのである


「ううう、ぐすっ。」


一通り怒ったラフィトはえぐえぐと泣き出した。そんな弟にラーニャは本当に申し訳ない思いでいっぱいあった。先程の惨劇を目にして貴族の世界の恐ろしさを身に染みたラーニャはもう2度と貴族になりたいと思わなくなったのである。ラーニャは遠くを見るように黄昏れていた


「ラフィ、あたしがバカだった。今になってパパとママが駆け落ちしたわけが分かった気がするの。」


「えぐ、えぐ、お、お姉ちゃん。」


「貴族になりたいと思ったけどあんなものを目にしたらなりたいと思わなくなったよ。それに・・・・」


一息ついた後、ラフィトの方へ目線を向けた


「あたしが死んだらラフィが1人になると気付いちゃったよ。」


「えぐ、お姉ちゃん。」


「ラフィ、これからはずっと一緒だよ。」


「うん!」


ラーニャとラフィトは仲直りの抱擁を交わした。そこへジュリアが2人の下へ尋ねた


「旦那様の御呼びだ。」


無表情で淡々とした口調で話すジュリアに2人の全身に悪寒が走った。特にラーニャは散々に渡って迷惑をかけた事や先程の惨劇を目にしており、アルクエイドに恐怖心を抱いていた。2人はジュリアに従ってアルクエイド等のいる広間へ向かった。その道中でラフィトはラーニャを励ました


「僕も一緒に謝るから・・・・」


「う、うん。」


尾頭との励ましにラーニャは少し肩の力が下りた心地であった。そんなこんなで広間に到着し中に入ると神妙な面持ちで出迎えるアルクエイド、アシュリー、ユリアの姿があった。ラーニャとラフィトは覚悟を決めて3人に向き合うとアルクエイドが「まずは座れ」と侍女たちが用意した椅子に座るよう促した。ラーニャとラフィトは「はい」と返事をして椅子に座った


「さて・・・・ラーニャ、何かいうことはあるか?」


「「御免なさい!」」


ラーニャとラフィトはすぐに謝罪した。それを見たアルクエイドはラーニャの方へ視線を向け、尋ねた


「ラーニャ、今でも貴族になりたいか?」


「なりたくありません!」


ラーニャはギリアス一行が1人残らず討ち取られる様を目に焼き付いており、アルクエイドの口から「これが貴族の世界」という言葉が耳に残っており、もう懲り懲りであった。本心から言っている事を確認したアルクエイドは「はぁ~」と溜め息をつき、次のように述べた


「弟に感謝しろ。お前がギリアス捜索に無断で加わった事を謝罪しに来たのだからな。」


アルクエイドがそう言うと、ラフィトは「ありがとうございます」と礼を述べた。ラーニャは深く頭を下げて「ありがとうございます」と礼を述べた


「分かれば良い。」


アルクエイドがそう言うと2人に「下がって良い」と言うとラーニャとラフィトは深く頭を下げて広間を退出した。その様子を傍らから見ていたアシュリーとユリアは・・・・


「閣下、本当に大丈夫でしょうか?」


「心配いりません。荒療治ではありましたが効果はありました。」


「荒療治にしては些か刺激が強すぎるわよ。」


「こればかりはラーニャの自業自得です。」


「そうね。」


「安心しました。」


「安心したとは?」


「あれだけの事をしたから、本当は処罰すると思っていました。」


「私はそこまで狭量ではありません。」


「流石は閣下♪」


「褒めても何も出ませんよ♪」


「私を無視しないでよ。」


「「御免なさい、母上(御母堂様)。」」


2人のイチャイチャぶりにユリアは面白くなさそうに言うとアルクエイドとアシュリーは何とか宥めるのであった






「そうか、届いたか。」


謀反人ギリアス・ガルグマクの首は王都に届けられた。首が腐らないように塩漬けにして国王グレゴリーの下へ届けられたのである。勿論、手紙も添えてである。アルクエイドの認めた手紙を見たグレゴリーは宰相のレスターを呼んだ


「御呼びにございますか。」


「うむ。此度、謀反人ギリアスとその一味がロザリオ侯爵領にて内輪揉めを起こし、全員死亡したとロザリオ侯爵が手紙を寄越して来た。」


「内輪揉めにございますか。」


「うむ、王都での謀反を聞いたロザリオ侯爵が手配書を作成して騎士と領民たちに探索させていたという。ギリアス一行の手元には手配書があって恐らくそれが内輪揉めの原因だと報告してきおった。」


「左様にございますか。」


「それだけではない。此度は偶然、ギリアスとその一味を見つけただけなので褒美はいらないと認めておる。」


「何と、ロザリオ侯爵がそのような事を・・・・」


「うむ。見つけただけでも大手柄なのに欲のない男よ。もしくは褒美を受け取れぬわけでもあるのかもしれんな。」


「畏れながら受け取れぬわけとは?」


「うむ、ロザリオ侯爵家はアルクエイド・ロザリオによって大きくなった。これ以上、ロザリオ侯爵家が大きくなる事を恐れたのかもしれぬな。」


「あぁ~、確かにロザリオ侯爵は色々と活躍されましたからな。彼の御仁の活躍を快く思わない御歴々にとっては面白くないでしょうな。」


「ふふ、出る杭は打たれるを熟知しておる・・・・アルクエイドめ、ますます狡猾になりおったわ。」


「誠に。」


「うむ。願い通り、褒美はなしとするか。」


「御意。」


グレゴリーとレスターはアルクエイドの政治手腕を褒め称えた。これ以上、大きくなれば間違いなく排除されるのを見越してアルクエイドから辞退する旨を聞き入れるグレゴリーであった







「では母上、我等は王都へ出発します。」


「道中、気を付けていってらっしゃい。」


「御母堂様、色々と御世話になりました。」


「アシュリー嬢、初孫楽しみにしているわよ♪」


「母上、結婚が先でしょう。」


「いいじゃない、別に。」


「あはは。」


「貴方たちも元気でね。」


「「ありがとうございました。」」


「旦那様、お気をつけて。」


「ジュリア、母上を頼んだぞ。」


アルクエイド等は王都へ出発する準備をしていた。アルクエイド、アシュリー、ラーニャ、ラフィット、ロザリオ&ゴルテア侯爵家の騎士隊、従者たちは出発する前にユリアとジュリアに別れを告げていた


「アルクエイド、結婚式が決まったら連絡をちょうだい。私も王都へ向かうから。」


「はい。」


「ではいってらっしゃい。」


別れの挨拶を済ませた後、アルクエイドとアシュリー、ラーニャとラフィットが別々の馬車に乗ると同時に騎士が「出発」と号令をかけ出発した。馬車窓を開けてアルクエイドとアシュリーは「お元気で」と挨拶を述べた。ユリアも「そっちもね」と再度、別れの挨拶をして互いに見えなくなるまで手を振り続けた。そしてユリアの姿が見えなくなったのを確認し、2人は馬車の中へ入った


「アルクエイド様、御母堂様、少し寂しそうな顔をしておりました。」


「母上は父上が亡くなられてから哀しさのあまり王都に居づらくなって領地へ赴いた。久し振りの家族水入らずの日々を送って幸せであられたのであろう。」


「次に会う時は私たちの結婚式ですわね。」


「ああ。」


アルクエイドとアシュリーは別れを惜しみつつ無事に王都へ帰還するのであった

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