表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/100

第八十六話:ラーナの最期

婚約破棄から歳月が経ち、アルクエイドとラーナは再会を果たした


「お懐かしゅうございます、アルクエイド様・・・・」


「先程、墓参りをしていたところだ。」


「は、墓参り?」


「あそこにお前の夫であるシリウスが眠っているぞ。」


アルクエイドが指差した場所に花束が置かれていた。ラーナはシリウスが亡くなった事を知り眩暈を起こした


「「ママ!」」


ラーニャとラフィトはラーナの下へ駆け寄り、ワガは倒れぬようしっかりと抑えた


「・・・・やっぱり夢じゃなかったのね。」


「夢?」


ラーナ曰く、シリウスが自分を奈落の底へ道連れにしようとしたという


「夢であってほしいと思っていたのにまさか、こんな事になるなんて・・・・」


ラーナはまるで悲劇のヒロインぶる自分自身の不幸をアピールするかのように絶望に浸っていた。それを見ていたアルクエイドとアシュリーは内心、自業自得だろうと毒づいた。するとアシュリーはラーナの前に現れ、自己紹介をした


「御初に御目にかかりますわ、閣下の元婚約者様。」


「・・・・どなた?」


「私はアシュリー・ロザリオと申します。アルクエイド様の妻です。」


「え。」


ラーナはギョッとした表情でアシュリーを見た。本当は結婚していないけどアルクエイドは何か考えがあるなとあえて何も言わず様子を見ていた。従者たちもアルクエイドと同じ考えか成り行きを見守っていた


「あ、アルクエイド様の奥方様・・・・」


「はい。」


「そ、それは本当なのですか。」


「その通りだ。」


アルクエイドはアシュリーの考えに乗り、アシュリーを紹介した


「我が妻、アシュリーはゴルテア侯爵家の令嬢だ。」


「ご、ゴルテア侯爵家・・・・」


「ゴルテア侯爵家の事は流石のお前も知っているだろう。」


ラーナは目の前にいる令嬢がガルグマク王国創設以来の譜代の名門貴族だと知らされ、茫然としていた。ラーニャとラフィット以外の町民たちもゴルテア侯爵家の事は知っていたようで再び平伏した


「こ、これは御無礼を・・・・」


「いいえ、むしろアナタには感謝しているわ。」


「か、感謝?」


何故、感謝されているのか分からずラーナは戸惑っているとアシュリーは続けざまにこう告げた


「貴方がシリウスと真実の愛で結ばれた事ですわ。そのおかげで私はアルクエイド様という素晴らしき御方と結ばれた事ができた事に私は貴方に感謝しているのですわ。」


ラーナは思わず目を見開いた。アシュリーの言い分はラーナがシリウスと結ばれたおかげで自分は幸せになれたとはっきりと自慢しているようなものだ。それと同時に男を見る目がない自分への皮肉も込められており、目の前にいる小娘(アシュリー)に小賢しさと小憎らしさを感じた


「アシュリー、それではあまりにも身も蓋もないぞ。仮にも未亡人の前で。」


アルクエイドに窘められアシュリーは「口が過ぎました」とラーナに謝罪した。ラーナはというと内心、ショックを受けていた。まさかこんな小娘に馬鹿にされるとは思っていなかったようで腸が煮え繰りかえるような気持ちだった。しかし今の自分は平民であり、子供たちの行く末を託すために我慢するしかなかった


「アルクエイド様。」


「何だ、ラーナ?」


「子供たちの事でお願いがございます。」


「予め申しておくが貴族にはできないぞ。」


「分かっております。この子たちを預けてくれるところを探してほしいのです。」


「孤児院か。」


「「やだ!」」


自分たちを預けると聞いたラーニャとラフィトは駄々を捏ね始めた


「ラーニャ、ラフィト、私はもうすぐで死ぬわ。シリウスが死んだ今、貴方たちを引き取る親戚がいない。そのためにロザリオ侯爵閣下に貴方たちの行く末を託すようお願いしているのよ。」


「「死んじゃやだ!」」


「ママだって死にたくはないわ。でも天命には逆らえないわ。」


「「やだ、やだ!」」


「お願いだから言うことをきい・・・・ゴホッ、ゴホッ!」


ラーナは咳き込むと口から鮮やかな鮮血が出てきた。ラーナの様子にアルクエイド等は驚愕したのは言うまでもなかった


「「ママ!」」


「ラーナ!」


「すぐに家に入れろ!」


アルクエイドがそう命じるとすぐさま、家に引き返した。ベッドにラーナを寝かせ、町医者のワガが治療にあたったがもう既に全身に病魔に蝕まれていた。それからどれくらい時が経ったのか分からないほど長く、外はすっかり暗くなっていた。ワガが寝室から出るとアルクエイド等はラーナの病状を尋ねるとワガは溜め息をつき、正直に話した


「残念だが峠を越す事が無理だ。」


それを聞いたアルクエイドとアシュリーは複雑そうな表情を浮かべ、オルコ等は「やはりか」と諦めの表情を浮かべた


「「ママ!」」


「こら!」


ラーニャとラフィトはワガの制止を振りほどき、寝室へ入った。アルクエイド等は2人の後を追い、寝室に入るとそこには先程とは比べ物にならないほど窶れたラーナの姿があり、一見すると老婆に見えた。当のラーナはというとベッドの上で静かに寝息をたてていた。ラーニャとラフィットは眠っている母の側にいた


「「・・・・ママ。」」


「ラーニャ、ラフィット、ラーナは今は休んでいるんだ。部屋から離れなさい。」


「「嫌だ!」」


オルコが寝室から出るよう告げたが2人は頑として動かなかった。子供たちの声に反応したのか、ラーナはふと目を覚ました


「こ、ここは。」


「「ママ!!」」


「ラーニャ、ラフィット。」


ラーナは腕を動かそうとしたが力が入らなかった。目の前には涙目になっている我が子がいるのに抱きしめる事もできないほど衰弱している自分に情けなさを痛いほど感じていた


「ラーニャ、ラフィット・・・・ママはもうすぐ死ぬわ。」


「「やだ!死んじゃやだ!」」


「も、もう遅いわ・・・・」


「「やだ!」」


「お願いだから・・・・言うことを聞いて・・・・ちょうだい。」


息も絶え絶えな状態で子供たちのを説得する姿に周囲にいた人々、特にアルクエイドとアシュリーは駆け落ちした後の結末をマジマジと見せられ、複雑な心境になっていた。ラーナは子供たちを宥めつつ、アルクエイドの方へ目線を向けた


「こ、子供たちを頼みます・・・・はぁはぁ!」


「「ママ!」」


「お前たち、離れていろ!」


ラーナはそう言い残した後、苦しみ始めた。ワガが治療に取り掛かったがラーナはもがき苦しんだ後、静かに目を閉じた。ワガがラーナの腕を取り、脈を測った。そしてその腕をベッドに入れた


「御臨終です。」


「「ママ!!」」


ラーナは26年の生涯を静かに閉じた。子供たちは死んだ母親にすがりながら泣き続けた。オルコたちはというと、すぐさま葬式の準備を始めた。アルクエイドとアシュリーは死んだラーナを眺めるしかできなかったのである。それから次の日に簡素ながら葬式が行われた。子供たちはずっと泣き続け、オルコたちはラーナの入った遺骸を棺に入れてそのまま火葬した。アルクエイドとアシュリーはその様子を眺めていた


「アルクエイド様。」


「何だ?」


「この御方は人生って何だったのでしょうか。」


「こればかりは私たちには分からないわ。」


「私も一歩間違えれば彼の御方と同じ道を歩んでいたかもしれません。」


アシュリーの言動にアルクエイドは何も答えず、燃える棺を眺めていた。その後、ラーナの遺骨は骨壺に入れられ、シリウスの隣に埋葬された。アルクエイドはラーニャとラフィトの下を訪れ、今後の事を伝えた


「ラーニャ、ラフィト、これから君たちは私の経営する孤児院で生活する事になる。」


「こじいん?」


「君たちと同じく何らかの理由で身寄りを亡くした子供たちが生活する場所だ。」


「ママと一緒にいちゃダメ?」


「ラーナの頼みだからな。」


アルクエイドがそう告げるとラーニャとラフィトは子供ながらも自分たちの置かれた状況に少しばかり理解したようだ。ラーニャとラフィトは沈痛な面持ちで俯くしかなかった。そんな2人にアルクエイドは何とか励まそうと言葉を並べた


「ラーニャ、ラフィト、私の経営する孤児院は3食食事も出るし、しっかりとした教育も受けられる。そして君たち同じ立場の子供たちと一緒に暮らす事になる。皆、子供ながらに必死に生きようと希望を胸に日々頑張っている。君たちもラーナやシリウスに彼の世で笑われないように励みなさい。」


「「はい(小声)」」


「うむ、では参ろう。」


アルクエイド一行はラーニャとラフィトを連れて一旦はロザリオ侯爵領に向けて旅立つ準備をし始めた。その間はオルコを始め町の大人たちはラーニャとラフィトに別れの言葉や餞別等を渡した。そんな2人にアルクエイドとアシュリーは2人を引き取ろうとする大人がいない事を知り、その薄情さと町の貧困さをマジマジを見せらせたのである


「アルクエイド様、これで良かったのですよね。」


「ここにいるよりはマシだ。」


出発の準備を済ませるとアルクエイド一行はオルコ等の町民たちの見送りの下で出発した


「しゅっぱーつ!」


騎士隊長のバニーの号令の下でアルクエイド一行は出発をした。ラーニャとラフィットはアルクエイドの計らいでもう1台の馬車を用意したのである。ラーニャとラフィットは馬車に乗りつつ、馬車窓を開き故郷であるアポロ町を見続けたのであった





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ