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第八十三話:シリウスの最期

「大変申し訳ございませんが、どうかアポロ町までお越しくださりませ!」


それから数日後、ロザリオ城にアポロ町から町長であるオルコ・ロッソ【年齢37歳、身長175cm、色白の肌、碧眼、漆黒の黒髪、彫りの深い柔和な顔立ち、亡き地主の息子、ラーニャとラフィトの異母兄】が訪れたのである。応対したアルクエイドはすげなく扱った


「何故、お前たちの町に行かねばならぬのだ?」


「我等としても2人の処遇に困っているのです。」


「それはお前たちの問題だろ。」


「お言葉ながら侯爵閣下様があのような知らせを・・・・」


「おい。」


アルクエイドが呼び止めた瞬間、オルコの首に騎士の抜いた剣の刃が突き付けられた。オルコは「ヒィィ!」と悲鳴を上げ、腰を抜かしたのである


「言葉には気を付けろ。私がその気になれば貴様の首を簡単に跳ねることだって出来るのだぞ?」


「ひ、ひゃい!」


オルコは顔が青ざめ冷や汗をかき、身震いし声が上擦りながらも返事を返した。アルクエイドは「はぁ~」と深い溜め息をついた後、話を続けた


「それであの2人はどうなっている?」


「は、ははっ。し、シリウスは座敷牢にて不気味なほど大人しくしております。ら、ラーナは寝たきりの状態にございます。」


「子供たちはどうした?」


「は、ははっ。」


「ラーナと貴様の父親との間にできた子供2人だ。」


アルクエイドはラーニャとラフィットの事を尋ねるとオルコの目が泳ぎ始めた


「は、はて、何のことやら。」


「恍けても無駄だ。」


「な、何を根拠にそのような・・・・」


「調べがついておる。貴様の父とラーナがただならぬ関係を築いていた事は既に知っておる。貴様にとっても腹違いの身内であろう。」


オルコの背筋がぞっとした。外には漏らさないように徹底しラーナにも手切れ金を渡し、そのまま追い出したというのに僅かな隙間から漏れだしたとは夢にも思わなかったのである


「まぁ、それは置いといて何故、アポロ町に来てほしいのか理由を聞かせろ。分かっていると思うが偽りを申せば只ではすまぬぞ。」


「は、ははっ!実は・・・・」


オルコが訪れた理由は案の定、ラーナの事であった。ラーナは死ぬ前にこれまでの事を謝罪と子供たちの行く末を託したかったようである。前者は分かるが後者については目の前にいるオルコに尋ねた


「オルコ、貴様等が引き取るのが筋であろう?」


「で、出来ませぬ。」


「理由は?」


「は、はい。我が父は普段から派手な暮らしをしており、我等は頭を抱えておりました。特に愛人たちに多額の金を渡しており、我が家計は火の車状態なのです!おまけにラーナだけではなく他の愛人たちとの間に子供もいるのです!」


オルコ曰く、死んだ地主は派手な散財を繰り返していたという。特にラーナを含め多くの愛人たちに貢いでいたらしく、ラーナの他にも愛人たちとの間に子供が沢山いたことが発覚したという。それを聞いたアルクエイドはほとほと呆れていた


「何故、そうなるまで放置したんだ。」


「・・・・こ、怖かったのです。幼少の頃より横暴な振る舞いをする父に誰も逆らえなかったのです。」


「はぁ~。」


アルクエイドは呆れつつも、少しばかりオルコ等に同情した。地主が死んだ事でようやく開放されたと思いきや愛人との間にできた腹違いの兄弟の存在が明らかになったのである。財産は父である地主が散財したおかげで残り僅かであり自分達が食っていくだけしか出来なくなったのである


「それで愛人とその子供はどうした?」


「は、はい!他の愛人たちには僅かな手切れ金と就職先を紹介しました。ただ・・・・」


「ラーナとその子供たちか?」


「はい。」


力なく返事するオルコにアルクエイドは頭を抱えた。頭に過ったのは確実にラーナ亡き後の子供たちの行く末である。オルコは引き取る気配はなく、表向きは父親であるシリウスは座敷牢にて大人しくしているのが素人目線から見ても精神状態はハッキリいって良いとは言えず、子供たちを育てるとは思えない。間違いなく虐待間違いなしの状態である


「オルコとやら。」


「は、はい。」


「子供たちは私が引き取ろう。」


アルクエイドが子供たちを引き取ると耳にした瞬間、オルコは顔を見上げた


「ほ、本当でございますか!」


「あぁ、2人くらいなら問題はない。」


「ありがとうございます!」


オルコは平伏し何度も頭を下げ続けた。アルクエイドはここが正念場だと覚悟したのである。アシュリーと共に病身のラーナに会いに行く事にしたのである


「準備ができ次第、そちらへ行く。先に帰っていろ。」


「はい!ありがとうございます!では失礼致します!」


オルコは何度も頭を下げた後、そのまま故郷へと帰ったのである。オルコが帰ったのを確認したアルクエイドはユリアとアシュリーのいるテラスへと向かった






「アシュリー嬢はアポロ町へ向かうのかしら?」


ロザリオ城のテラスにて女子会をしていたユリアはアシュリーにアポロ町へ行くかどうか試すように尋ねていた


「はい、元婚約者に見せつけるために行きます。」


「ふっ、見せつけるとは貴方、なかなか度胸があるじゃない。」


「人を見る目のない御方には良い薬だと思いまして。」


「薬は薬でも毒薬の間違いじゃないのかしら?」


「滅相もありませんわ、苦しみから開放するための妙薬ですわ。」


「まぁ、恐ろしい♪」


「元婚約者をずっと見張っていた御母堂様には叶いませんわ。」


「言うじゃない、気に入ったわ♪」


「畏れ入ります。」


「母上、アシュリー嬢。」


ユリアとアシュリーが談笑しているとそこへアルクエイドが現れた


「そちらの用事は済んだのかしら?」


「えぇ、いよいよ正念場ですから。」


「閣下、それじゃあ!」


「アポロ町へ向かいます。」


アルクエイドの宣言にユリアは「まぁ、頑張って」と軽めの激励をし、アシュリーは「元婚約者に見せつけましょう」と鼻息を荒くしていた。その2人の姿にアルクエイドは苦笑いを浮かべつつ、準備を進めた。アルクエイドとアシュリーを呼んで改めて行くかどうか尋ねた


「アシュリー、改めて尋ねるけど本当に付き合うつもりか?」


「旅は大好きですわ、アルクエイド様♪」


「よし!」


「あらら、2人きりの時は名前で呼び合うのね♪」


「「母上(御母堂様)!」」


気配もなくスッと現れたユリアにアルクエイドとアシュリーはギョッとした表情で注視した


「偶然、見掛けたから後を着いてきちゃったのよ。」


「後を着けたって・・・・」


「どうやらお邪魔だったようね。では、ごめん遊ばせ♪」


ユリアは2人を茶化しつつ、そのまま退散した。母親の茶目っ気に呆れていたアルクエイドはジト目をし、アシュリーは「あはは」と苦笑いを浮かべユリアを見送るのであった






「俺は何のために・・・・」


アポロ町の座敷牢にて大人しくしていたシリウスは自分の人生が何だったのか自問自答をしていた。元婚約者であるアルクエイド・ロザリオとの婚約を嫌がったラーナは自分と一緒に駆け落ちした。最初は苦労の連続であったが手に手を取って慎ましくも幸せに過ごそうと考えた矢先にラーナは貧乏な生活に耐えきれず、その地に住む地主の愛人になり、子供まで儲けた。地主に仕える使用人から告げられた事で何かが壊れた。それ以降、シリウスは感情をどこかに置き忘れたかのように虚無感に浸りつつ黙々と働き続けた。子供たちは自分が父親だと思っているようで、正直吐き気がしたが人の目もあって父親として振る舞った。ラーナに対しては愛想を尽かしていたが、いずれ復讐しようという想いが芽生え始めた。それが天に通じたのかラーナの実家であるスリザリン伯爵家が没落した事を知った。更に愛人である地主が死んだ事やラーナが不治の病にかかった事で天は自分を見放していなかったと心の底から感謝した。死ぬ前にラーナは子供たちの行く末をアルクエイド・ロザリオに託そうとシリウスに頼んだ。シリウスは復讐する機会を得たとばかりに了承しアルクエイドを利用した復讐をしようと実行しようとしたがどこで歯車が狂ったのか、ロザリオ侯爵家にばれて計画は頓挫した。スリザリン伯爵家が没落した事がラーナの耳に入り、復讐は達成したた思っていたが、何も感じず再び虚無感が支配した。その後、ラーナと口論になり、ラーナを怒りのままに殺そうとしたが露見しここにいた


「もう終わりだな。」


シリウスは最早、生きていくのに飽きたのかベッドのシーツをネジネジに巻きつつ、それを自分の首に巻き付けた


「次はマシな生き方をしたい。」


シリウスはそう言い残した後に自殺した。その後、町民が自殺したシリウスを見掛けたのはいうまでもなかった

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