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第七十九話:後悔

「アシュリー嬢、当地の料理は如何かした?」


「は、はい、大変美味にございます。」


「ふふす、そんな緊張しなくていいのよ、いずれ私の娘になるんだから♪」


「は、はい。」


アルクエイド、アシュリー、ユリアは食卓にてロザリオ侯爵領の料理【ご当地グルメ】を堪能していた。アシュリーが緊張のあまり食事の味が分からずにいるとユリアから気遣われ、少しだがホッとしたのも束の間・・・・


「アシュリー嬢、初孫を楽しみにしているわ♪」


「は、はい!」


ユリアからの初孫の催促にアシュリーは思わず「はい!」と返事をした。傍から見ていたアルクエイドは・・・・


「(本当に強引なんだから、このババアは・・・・)」


「アルクエイド、何か言ったかしら?」


「いいえ。」


「アルクエイド、初孫楽しみにしているわよ。なんなら今日から子作りに励みなさい。」


「こ、子作り!?」


「母上、下品極まりないですよ。アシュリー嬢が困っている。」


「あら、ごめんあそばせ(笑)」


「アシュリー嬢、年寄りの戯言は無視しても構いませんよ。」


「あ、ははは。」


「誰が年寄りよ、失礼ね。」


ユリアの度重なる下品な発言にアルクエイドは顔をしかめながら毒を吐き、アシュリーは苦笑いを浮かべた。食事を終えて先にアシュリーが風呂へ向かったのを確認した後、アルクエイドとユリアは食後のお茶を飲みながら、ラーナの事で話し合っていた。側にはジュリアのみが控え、部屋には3人だけである


「アルクエイド、改めて確認はするけど本当に会いに行くのかしら?」


「えぇ、スリザリン伯爵家が没落した事も話さねばなりませんからね。」


「はぁ~、全くどこかで野垂れ死にしていれば良かったものの、本当にしぶといわね。」


「その点については同意します。」


「それであの男はどうしてるのかしら?」


「はい、監視付きでベッドと机と窓以外、何もない部屋に大人しくしています。」


「そう・・・・アルクエイド。」


「何でしょうか?」


ユリアが茶を一服した後、神妙な顔でこう呟いた


「あの男、ラーナの事を快く思っていないようね。」


「・・・・と言いますと?」


「貴方が護衛付きで先に行くようと命じたにも関わらず、あの男は残る事を決めた。まるでラーナが死ぬのは待っているみたい。」


「それはどういう事ですか?」


アルクエイドは疑問に思った。何故、シリウスがラーナの死を願っているのかが理解できずにいるとユリアはある事を告げた


「アルクエイド、貴方には黙っていたんだけれど・・・・ラーナの行方を探っていたのよ。」


「は、はい?」


アルクエイドは耳を疑った。(ユリア・ロザリオ)がラーナを探していたとは如何なる了見なのかと、何故今日まで秘密にしていたのかとアルクエイドは感情に身を任せて問い詰めようと思ったが一旦冷静になり、感情を押し殺しつつ真意を尋ねた


「・・・・理由をお尋ねしてもよろしいですか?」


ユリアはもう一服、茶を飲んだ後、静かに語り始めた


「貴女に黙っていた事は謝るわ・・・・トーマス、貴方の父上と一緒にラーナとあの男を探ったのはロザリオ伯爵家の面目を潰した報復よ。」


「・・・・報復にございますか。」


「えぇ、貴族の世界では面目は大事ですもの。それを潰したあの2人を許すと思うかしら?」


「確かに・・・・ですが何故、今日まで生かしておいたのですか?」


「そうね。確かに見つけ次第、その場で亡き者にする事もできたわ。でもある事がきっかけで私もトーマスも亡き者にする事を辞めたわ。」


ユリアの言うある事が気になり尋ねてみた


「畏れながら・・・・あの2人に何があったのですか?」


「・・・・2人はアポロ山脈付近に居を構えてからは色々と苦労したそうよ。まぁ、ラーナは貴族の暮らししか知らないから尚更ね。シリウスが必死で働いている間にラーナは何をしていたと思う?」


「質問に質問で返さないでくださいませ。」


「もう、せっかちね・・・・ラーナはその土地に住む地主とデキていたそうよ。」


「はい?」


アルクエイドは再び耳を疑った。ラーナがその土地に住む地主と肉体関係を結んでいたとは正直信じられなかった。実家を没落させてまで駆け落ちしたにも関わらずである


「まぁ、愛だけでは食べていけない事を実感したのでしょうね。ラーナは貧乏暮らしに嫌気が差して地主に泣き付いたそうよ。若く美しく教養のある娘ともなれば愛人になる可能性は高いわね。案の定、地主の愛人になり子供を作ったそうよ。」


「な、何ですと!?」


それを聞いたアルクエイドは驚きを隠せなかった。子供2人がシリウスの子供ではない事を知り、愕然としたのである


「は、母上、つまり子供2人の父親は・・・・」


「十中八九、シリウスではないわね。」


「その事をあの者は・・・・」


「どうかしらね。仮に知っていたとしても逆らえなかったでしょうね。調べによるとかなりの恐妻家だと専らの評判らしいわよ。」


アルクエイドはシリウスに対して同情を抱いた。真実の愛に目覚め、共に駆け落ちしたにも関わらず貧乏暮らしに耐え兼ねてラーナが地主と不倫しただけではなく、地主との間に子供まで作ったのである。シリウスは血の繋がらない子供を今日まで育てていたのである


「シリウスは女を見る目がなかったようね。まぁ、婚約者のいる相手に手を出す時点で自業自得だけどね。」


「は、はぁ。」


「その地主も去年頃に病で亡くなり、すぐさま地主の一家から縁を切られ再び貧乏生活に逆戻りしたわ。その上、不治の病にかかって今日に至るわけよ。」


「左様にございますか。」


アルクエイドは改めてラーナと一緒にならなくて良かったと心底、ホッとした心地であった。もし結婚していたとして間男と不倫をし子供まで作り、財産を持ち逃げされる可能性があったからである


「私もトーマスも、あの娼婦の如き小娘を殺すのも馬鹿馬鹿しくて、放ったらかしにしたけどまさかこんな事になるんだったらあの時、亡き者にすればと後悔しているわ。」


「本当にそう思います。」


「なんならシリウスの前で子供たちの事も話したらどうかしら?」


「それこそ血の雨が降りますよ、母上。」


「冗談よ♪」


「・・・・あれ?」


「ん、どうしたのかしら?」


ふとアルクエイドはある事に気付いた。シリウスがラーナにスリザリン伯爵家が没落した事を伝えなかった事である。(ユリア・ロザリオ)からの話を聞いた直後、シリウスがラーナにスリザリン伯爵家没落の事を伝えなかった事に合点がいったのである


「はい、実はシリウスがラーナにスリザリン伯爵家没落の事を伝えなかった事に疑問を抱いていました。本人はラーナに気を遣って伝えなかったらしいですが母上の話を聞いて合点がいきました。」


「へぇ、そうなの・・・・あの男、相当な食わせ者ね。」


アルクエイドの話を聞いたユリアは改めてシリウスとラーナを始末しなかった事を後悔した。するとユリアはジュリアを呼び出した


「御呼びにございますか?」


「ジュリア。シリウスを捕らえ、尋問にかけなさい。」


「畏まりました。」


ジュリアが退出するとユリアはアルクエイドに視線を向け、「今日はゆっくりと休みなさい」と伝えた。アルクエイドは「ありがとうございます」と礼を述べた後、その場を退出した。アルクエイドが自分の部屋へ戻る途中で従者付きで風呂上がりのアシュリーとばったり会った


「閣下。」


「湯加減はどうでしたか?」


「はい、良い湯加減にございました。」


「それは良かった。」


「閣下もどうぞ、お入りください。」


「そう致します。」


「ではまた後ほど。」


「えぇ。」


その後、アルクエイドは体を洗った後、湯船に入って旅の疲れを癒した。湯船に入ったアルクエイドはシリウスとラーナについて考えていた。あの2人は真実の愛に目覚め、アポロ山脈に向かって駆け落ちをした。一見すると純愛を貫いたかに見えたが実際は貧乏生活に2人の距離が徐々に離れ、ラーナは地主の愛人となり子供を生んだ。シリウスはそれに気付きつつも弱味を握られていたのか黙って従うしか道がなかった。愛憎にまみれた関係が今日まで至った


「結局、私たちはあの2人に振り回されたのね。」


アルクエイドは湯船からあがり、自分の部屋へ向かう途中でジュリアと会った


「ジュリアか。」


「御報告致します。旦那様の読み通りにございます。」


「そうか。」


「それと旦那様の御部屋にてゴルテア侯爵令嬢様が御待ちにございます。」


「アシュリー嬢が?」


「では此にて失礼致します。」


ジュリアがその場を離れた後、アルクエイドはとりあえず自分の部屋へ戻った。アルクエイドは何だろうと思いつつ、部屋に到着し入室するとベッドの上に寝間着を身に付けたアシュリーが座っていた


「どうされましたか、アシュリー嬢?」


「アルクエイド様、今は2人きりですよ。」


「・・・・どうしたの、アシュリー?」


「・・・・御母堂様から話を聞きました、例の2人の事を。」


「・・・・そうか。」


「申し訳ありません。」


突然、謝罪するアシュリーにアルクエイドは何故、謝罪するのか分からず、尋ねた


「何故、謝る?」


「はい、私がアルクエイド様の元婚約者に見せつけようと言い出した事がきっかけであの2人に利用された事です。」


「あぁ、その事。別にアシュリーが謝る事ではない。私もあの男の思惑に気付かなかった私にも落ち度があった。」


「・・・・アルクエイド様。」


「アシュリー、ここまで来たからには、あの2人にガツンと言ってやろう。」


「お優しいのですね。」


「それほどでも。」


「あ、あの・・・・アルクエイド様!」


「ん、如何した?」


「あの・・・・その・・・・」


アシュリーの頬は夕焼けのように真っ赤に染まり、しどろもどろになっていた。アルクエイドは何も言わずに待っているとアシュリーは意を決して話し始めた


「き、今日は・・・・い、一緒に・・・・寝ても構いませんか?」


アシュリーの寝てもいい発言にアルクエイドは耳を疑った


「アシュリー・・・・一緒に寝るって言ったの?」


アルクエイドが尋ねるとアシュリーが頷いた


「まさか母上の戯言を鵜呑みにしたのか?」


「・・・・だ、だって、だって、私はアルクエイド様の婚約者ですよ。キスはしたけど、それ以上の関係を結んでいないではありませんか!」


「アシュリー、一旦落ち着いて。」


「私ってそんな魅力がないのですか?」


「いいや、十分魅力的だよ。」


アシュリーを落ち着かせようとアルクエイドは説得を重ねたがアシュリーの意志は固かった


「あ、アルクエイド様は私と・・・・寝るのはお嫌なのですか。」


「いや、嫌ではない・・・・」


「私に遠慮は必要ございません。アルクエイド様、据え膳食わぬは男の恥ですよ!」


「そんな言葉、どこで覚えたの?」


「どこでも良いです!」


するとアシュリーはアルクエイドに接近しそのまま抱き付いた


「あ、アシュリー。」


「これでも・・・・ダメですか?」


「ダメ・・・・大歓迎よ。」


アルクエイドはそのままアシュリーを優しくベッドに押し倒した。アシュリーは顔を真っ赤にさせ、アルクエイドを見つめた。アルクエイドは「アシュリー、良いんだな。」と尋ねるとアシュリーは・・・・


「優しく・・・・してください。」


「・・・・アシュリー、好きだ。」


アルクエイドとアシュリーはそのままキスを交わした後、そのまま2人は本当の意味で結ばれたのであった









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