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第七十八話:到着

「アシュリー嬢、もう少しで着きますよ。」


「は、はい!」


「そう緊張しないで。」


アルクエイド一行はロザリオ侯爵領に入部してから数時間が経った。道中で領民たちから歓迎を受けつつ、ロザリオ侯爵邸へ向かっていたのである。馬車窓を開け、アルクエイドはアシュリーにロザリオ侯爵邸を見せた


「アシュリー嬢、あれがロザリオ侯爵邸です。」


「まあ・・・・立派な御城ですわ。」


アルクエイドのいうロザリオ城【ロザリオ侯爵邸】というのは石造りの中世ヨーロッパ風の巨大な城であり、城は台地の先端部に位置しており周囲は断崖絶壁と小さな河川で作った3重の水堀、大手門へ行く道は狭く、まさに自然に囲まれた天然の要害といえるほどの要害堅固の平山城であった


「ロザリオ家は元々は独立領主として活動していましたが当時は四方八方に異民族の襲来とかがあって困っていたそうです。当時のロザリオ家当主は度重なる異民族の襲来に耐えかねてガルグマク王国の支援を要請したそうです。支援を得る代わりに臣従するよう通達が来たそうです。背に腹はかえられぬ思いでガルグマク王国に臣従し伯爵位を得てロザリオ伯爵家が誕生したそうです。」


「へぇ~。」


「まぁ、今ではロザリオ侯爵家に昇格していますから人生何があるか分かりませんけどね。」


「ん、閣下、あれを。」


アシュリーが指さす方向にロザリオ城の大手門前に大勢の人だかりができていた。よく見るとアルクエイドの母であるユリア・ロザリオと従者たちと領民たちが出迎えていた


「あれは母上だ。」


「私たちを出迎えてくれたのですね。」


「アシュリー嬢、そろそろ馬車窓を閉めましょう。」


「はい。」


それから数分して馬車は大手門近くに止まった。外にいる従者から「到着致しました」と返事がして馬車扉が開かれた。先にアルクエイドが外へ出て、後にアシュリーが出た。大手門にいたユリアと従者と領民たちは2人を温かく出迎えた


「お帰りなさい、アルクエイド。」


「お久しゅうございます。」


「アシュリー嬢、ようこそいらっしゃいました。」


「御無沙汰しておりますわ。」


「「「「「主様(御領主様)、お帰りなさいませ!」」」」」


「うむ、皆も元気そうで何よりだ。」


「「「「「はい!」」」」」


「皆に紹介せねばな、私の婚約者のアシュリー・ゴルテア侯爵令嬢だ。」


「ごきげんよう、皆さん。」


「「「「「ははっ!」」」」」


アシュリーが挨拶をするとロザリオ侯爵領の従者&領民が一斉に平伏した。アシュリーは突然、平伏する従者や領民たちに戸惑っているとユリアが「次期侯爵夫人の御目見えだから畏まっているのよ」と説明するとアシュリーは納得せざるを得なかった


「アルクエイド、アシュリー嬢、貴方たちが領地へ訪れると知って領民たちがシシオドリを披露したいそうよ。」


「シシオドリ?」


「あぁ、この地に伝わる祭りですよ。あらゆる邪気を払う伝説の生き物であるシシの被り物を被って舞踊を披露するのですよ。」


「伝統民謡のようなものですか?」


「そうなりますね。」


「面白そうですわね♪」


アシュリーもシシオドリに興味を抱き、鑑賞してみたい欲求が芽生えた。アルクエイドも領地にて1泊する予定だったのと久し振りにシシオドリを見たかったので了承した


「うむ、では早速披露せよ。」


「「「「「ははっ!」」」」」


領民たちがシシオドリの準備をする一方でアルクエイドはシリウス・マンゼンを呼んだ。今まで影の薄かったシリウスがようやく出番が・・・・・ゲフンゲフン、呼ばれたシリウスは神妙な面持ちでアルクエイド等の前に平伏した


「シリウス、今日はロザリオ侯爵領にて1泊する。そなたにも部屋を貸すから安心しろ。」


「ははっ、有り難き幸せ。」


「あらら、誰かと思えば元婚約者の夫ね。貴方もラーナに振り回されて牢に入れられたそうじゃない?」


ここぞという時に辛辣な口調で接するユリアに対して、シリウスは「申し訳ありません」と平伏したまま謝罪した


「謝る相手が違うわよ、全く。」


「大奥様、準備が整いました。」


「うむ、アルクエイド、アシュリー嬢、シシオドリが始まるわよ。」


「「はい。」」


「そこの貴方も見ていきなさいな。恋女房と子供たちの事は今は忘れて楽しく鑑賞しなさいな、これは命令よ。」


「・・・・有り難き幸せ。」


ユリアからの棘のある親切心に側で聞いていたアルクエイドとアシュリーは我関せずの態度を貫いた。アルクエイドとアシュリーからしたら元婚約者(ラーナ)の事なんか正直どうでも良かったが、此までの仕返しも兼ねて向かっているのだから。シリウスはというと妻の子供たちの元へ行きたいのは山々であったが向こうは貴族、自分たちは平民、しかも自分たちは不義理をした立場なので強く言えず唯々従うしかなかった





「では始めてちょうだい。」


「「「「「ははっ!」」」」」


ユリアが開始の合図を送るとシシに扮した領民たちが動き出した。まず笛と太鼓等の楽器を鳴らし、そこからシシに扮した領民たちが「はっ!」と掛け声を出しながらバク転やらタップダンスならアクロバティックな動きを披露した


「スゴいですわね、閣下♪」


「えぇ、私も初めて見た時は魅入ってしまいました。」


アシュリーは初めて見るシシオドリの派手なパフォーマンスに夢中になり、アルクエイドも久し振りに見るシシオドリに目が離せなかった。ユリアも息子と息子の婚約者と一緒にシシオドリを見るのを楽しみにしていた。息子との婚約を避け、駆け落ちしたラーナに対して気に入らないところがあったが今回ばかりは感謝した。そしてラーナの夫であるシリウスはというと重病の妻と帰りを待つ子供たちが心配でシシオドリを見る余裕がなく、心ここにあらずの状態であった


「シリウス。」


「は、ふぁい!」


アルクエイドに呼ばれたシリウスは上擦った声で返事をした


「心ここにあらずのようだな。」


「し、失礼致しました。」


「妻子の事が心配か?」


「い、いいえ。」


「心配なら先に行っても良いぞ。」


「えっ!」


「ロザリオ侯爵領からアポロ山脈は3日でいける距離だ。それにお前が無事である事を知れば妻子も安心するであろう。勿論、護衛はつけるぞ。」


道案内は不用だと告げるとシリウスは「お気遣い感謝致しますが御無用にございます」と辞退した。アルクエイドは「そうか、なら仕方ない」とそれ以上、追及しなかった。そんな中、シシオドリは終盤になり、領民たちのシシオドリに対する熱が最骨頂に達していた。笛の音色と太鼓の音が力強くそして激しくなった。そして終盤になり・・・・


「「「「「はっ!」」」」」


領民たちが胴上げをするポーズになるとパンと音がなり紙テープや紙吹雪が舞った。アルクエイドとユリア等がパチパチと拍手をした。アシュリーも合わせてパチパチすると領民たちは平伏した


「うむ、いつ見ても見事だ。」


「「「「「ははっ!」」」」」


「そなたらには後で酒を送ろう。」


「「「「「ははっ!有り難き幸せにございます!」」」」」


「うむ、下がって良い。」


領民たちか下がった後、アルクエイドはアシュリーの方へ目線を変えてシシオドリの感想を尋ねた


「どうでしたか、アシュリー嬢。」


「えぇ、本当にシシが乗り移ったかのように圧巻にございます♪」


「気に入って貰って良かったわ。」


「はい♪」


隣で聞いていたユリアもシシオドリを見せて良かったと内心、ホッとしたのである


「ところでアシュリー嬢。」


「はい、何でしょうか?」


「貴方はアルクエイドと一緒の部屋で寝るのかしら?」


「「へっ?」」


ユリアからの質問にアルクエイドとアシュリーは呆気に取られた


「あら、貴方たちは夫婦になる間柄なんだから。」


「いや、いや、いや、いや、いや、いや母上。流石に未婚の令嬢に手を出すわけにはいきませんよ。」


「あら、貴方たちまだデキてなかったの?」


「母上、下品です!」


ユリアの発言にアルクエイドは嗜め、アシュリーはというと顔を真っ赤にしていた。とうのユリアは不敵な笑みを浮かべていた


「アルクエイド、女遊びをしている貴方がアシュリー嬢に手を出さないなんて、随分と紳士的になったじゃないの?それともヘタレになったのかしら?」


「それとこれとは別ですよ!」


「因みに私はトーマスと結婚前に既に済ませてるわよ♪」


「アシュリー嬢の前で何を言っているのですか!」


「あわわ(焦)」


ユリアは一度火がついたのかアルクエイドが止めるのを聞かずにまくし立てた


「実に情熱的だったわ♪因みに結婚前に貴方を身籠ったわ♪まさにできちゃった婚というやつね♪」


「知りたくなかったよ、自分の出生!」


「で、できちゃった・・・・婚。」


「大奥様、お控えくださいませ。人前でございます。」


「あら、そうだったわね、ホホホホ♪」


下品極まりない爆弾発言を繰り返すユリアに側で控えていたジュリアが待ったをかけた事でその場は終わった。アルクエイドとアシュリーはユリアに振り回された事に気まずい思いをしつつロザリオ城に入城するのであった


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