第七十六話:準備
「頭、獲物がなかなか来やせんね。」
「そう簡単にかかるかよ。」
山道にて待ち伏せをしていた山賊たちは獲物となる旅人を待っていた
「兄貴、もし若くベッピンな娘や人妻が来たらどうしやしょう!」
「馬鹿野郎!女は殺す、男は犯すのは相場が決まっているだろう!狙うのは若く美しい男と筋骨逞しい良い男だ!」
「流石ですぜ!頭!」
「「「「「良い男、カモンカモン♡」」」」」
どうやらこの山賊たちは見目麗しい女よりも若く美しい男と筋肉質の良い男が大好きなようである。そんなこんなでウキウキしながら待っていると辺りに煙が立ち込めた
「ん、何だ?」
「ケホッ、ケホッ!」
「おい、誰が・・・・ぐふっ!」
「か、かし・・・・ごふっ!」
山賊たちは次々とその場に倒れた。煙も晴れてその場には全身に飛び道具が刺さった状態で山賊たちは絶命していた
「・・・・任務完了。」
「旦那様、峠に潜む賊を始末致しました。」
「うむ、御苦労。」
隠密からの報告を受けたアルクエイドは宿泊先の高級宿にいた。アシュリーは多数の従者たちと共に街の散策に出掛けていた。隠密の知らせによるとアシュリーは生まれて初めて王都から出た外の世界が新鮮さを感じており、眼を輝かせながら散策していたという
「まぁ、アシュリー自身が楽しければそれでいいか。」
「旦那様。」
「ん、どうした?」
「ゴルテア侯爵令嬢様がお帰りなられました。」
そこへ別の隠密が現れ、アシュリーが戻ってきた事を伝えた。それと同時に扉からノック音がした。入室の許可を出すと、「失礼します」とアシュリーが声をかけて入ってきた
「ただいま戻りました。」
「お帰りなさい、アシュリー嬢。どうでしたか?」
「えぇ、王都では味わえないほど新鮮でした♪」
「それは良かった・・・・そうだ、アシュリー嬢が外出している間に母上から知らせが来ましてね。領地にてお待ちしているとの事です。」
「あ、ああ・・・・そうでしたわね。」
話を聞いたアシュリーは先程の楽しげな雰囲気から静寂な雰囲気に変わった。表情も強張っており、緊張した面持ちである事が誰の目から見ても分かった
「アシュリー嬢、母上は別に取って食ったりはしないから安心しなさい。」
「け、決してそのような事はありません!ただ・・・・」
「ただ・・・・何ですか?」
「わ、私、お義母様と上手くやれるかどうか・・・・」
「あ、ああ~、そういう事ですか。大丈夫ですよ、母上は王族と縁が深く由緒正しいゴルテア侯爵家との婚約に賛成していましたからアシュリー嬢の事を温かく迎えますよ。」
「で、でも・・・・」
「心配いりませんよ。息子である私から見て、面倒事を押し付ける些か困った御方ですが根は慈悲深い御方ですから。」
「は、はあ~(大丈夫なのかしら)」
「ハックシュ!ハックシュ!」
「大奥様、御風邪にございますか?」
「いいや、多分だけどアルクエイドが私の悪口を言っていたような気がするわ。」
ここはロザリオ侯爵領のロザリオ侯爵邸、この屋敷の主であるユリア・ロザリオは自分の悪口を言っている実の息子であるアルクエイドを小憎らしく思いつつも、義理の娘となるアシュリーが来るのを首を長くして待っていた
「あの子はどうでもいいけどアシュリー嬢が来るからには盛大に出迎えよ。準備はいいわね、ジュリア。」
「御意にございます。」
ユリア・ロザリオの右腕であるジュリア・ビアンカ【年齢50歳、身長165㎝、色白の肌、碧眼、細身、美乳、胡桃色の長髪、彫りの深い端整で思慮深い顔立ち、ロザリオ侯爵家の女家令】は主の命に淡々と従った。ユリアはジュリアに命じた後、自室に戻った。「ふう~」と一息をついた後、ある肖像画に目を向けた。その肖像画とはユリアの夫でありアルクエイドの実父である前ロザリオ伯爵であるトーマス・ロザリオ【享年41歳、身長180㎝(推定)、色白の肌、漆黒の短髪、口髭、碧眼、彫りの深い精悍な顔立ち、冷静沈着かつ豪胆な性格、国王グレゴリーの右腕】である
「トーマス、アルクエイドが婚約者を連れて帰ってきます。私もようやく肩の荷が下りた心地ですわ。」
亡き夫の肖像画を眺めながらそう呟いた。夫亡き後、アルクエイドがロザリオ伯爵家(後のロザリオ侯爵家)を継ぎ、突然商売をし始めた。親戚筋からはキチガイのやる事だと馬鹿にしていたけど、アルクエイドは優れた商才の持ち主だったようで幅広く商売を展開し大成功を収め、ガルグマク王国で有数の大富豪となった。領地においても税金を下げるだけではなく領民に副業として特産品の生産を推奨し、それが莫大な利益を得た事で領民たちの暮らし向きが良くなり、アルクエイドが家臣・領民に慕われるのは母としては誇らしかった。当のアルクエイドは独身なのをいいことに女遊びをしている事に頭を抱えたが婚約者ができた事でようやく落ち着き、ほっと一息ついた心地であった。一方でゴルテア侯爵領の主であるアルクエイドが来訪すると知らせを役人たちから聞いた領民たちは早速、会議を開いた
「皆も聞いただろう。ゴルテア侯爵様が御帰還される事を。」
「あぁ、御領主様がお帰りになられるのは何年ぶりだろうな!」
「しかも婚約者も連れての御帰還だ!」
「お越しになられた際はお祭り騒ぎだ!」
領民たちはアルクエイドの善政による恩恵を受けた者たちが非常に多く、老若男女問わずアルクエイドの帰還を待ち望んでいた
「御帰還の際にはシシオドリを披露しよう!」
シシオドリとロザリオ伯爵領(後のロザリオ侯爵領)で行われた伝統的な祭りであり、伝説上の生き物であるシシ(日本&中国でいう獅子)の被り物を被った複数の人間が楽器を奏で、派手なパフォーマンスを見せる。そのためシシオドリの踊り手は運動神経が抜群の者が選ばれるのである
「御領主様が御帰還するまでにシシオドリをマスターするぞ!」
「「「「「オオオオオオオオオオ!」」」」」
アルクエイドが知らぬ間にロザリオ侯爵領は大盛り上がりであった




