第六十九話:内応
ここはハルバード王国王宮の国王寝所、寝所のベッドで王妃のアルルと急遽、宰相のベネトン・ラングリー【年齢25歳、身長184cm、色白の肌、金色の短髪、翠眼、彫りの深い眉目秀麗な顔立ち、ウルザの右腕、独身、上に媚び、下を軽んずる嫌な性格、プレイボーイ、ラングリー子爵家当主、宰相になった途端に他の貴族を対して傲慢な態度を取る】は夫(主君)がいない事を良いことに不倫の真っ最中であった
「いいのか、アルル。ウルザが戦争している間に不倫なんて。」
「いいのよ、父上を殺した奴の妻になる事自体が失敗だったのよ。」
「まぁ、俺はどっちでもいいけどさ♪」
アルルとベネトンはウルザの目を盗み、逢引を繰り返していた。アルルはベネトンの眉目秀麗の容貌と女性に対する扱いの上手さに惚れ込み、寝室に招き入れた。ベネトンも人妻、しかも王妃を抱ける背徳感がスパイシーになって互いに夢中になった。勿論、露見しないように何人かの女官たちを買収【金&肉体関係】したのである。アルルとベネトンが楽しんでいるところ、買収した女官な慌てた様子で入ってきた
「何事よ、失礼じゃない!」
「申し訳ございません、陛下がハルバード港に到着、王宮へ御帰還なさいます!」
「何だと!」
アルルとベネトンは突然、戻ってきたウルザに驚きつつ着替えを済ませ、何事もなかったように出迎える準備をしていた。ウルザが帰還したと知らせを聞いたアルルとベネトンと他の家臣や女官が出迎えると、そこには僅かな側近だけを連れて、ヘトヘトした状態のウルザが帰還した
「へ、陛下、お帰りなさいませ。」
「「「「「お帰りなさいませ。」」」」」
アルル等が出迎えの挨拶をするとウルザは返事をせずにアルルたちを無視して王宮へ入っていった。アルル等も後を追うとウルザは近くにあった椅子に腰掛け、「はぁ~」と溜め息をついた。何かあったのかと思い、ベネトンが話し掛けた
「陛下、如何なさいましたか?」
ベネトンが尋ねたが、うんともすんとも言わなかった。アルルは「戦争の方はどうでしたか」と尋ねるとウルザは「その話はするな!」と大声で叱責した。突然の叱責に周囲が驚くと我に返ったアルルがウルザと一緒にいた側近の1人に勝敗を尋ねると側近は恐る恐る「御味方の惨敗にございます」と答えた
「ざ、惨敗・・・・」
「それは本当なの!」
ベネトンとアルルは側近に尋ねると頷くしかなかった。ウルザはというとすぐに立ち上がり、飾ってあった壺等を破壊しまくった
「くそ!くそ!何故だ!何故だ!何故、天は余の味方をしなかった!」
ウルザは自分が惨敗の原因だと認めず、ひたすら天を恨んだ。そんなウルザにベネトンがこう進言した
「畏れながら此度の敗因はサイ・ボーンヌとチョウ・リキンが陛下を勝利に導かなかったのが原因にございます。」
「・・・・サイとチョウが?」
「はい、水軍を纏める2人が敵の攻撃を見抜けなかった時点で御味方が敗北したのです。そもそも船同士を鎖で繋ぐ事自体がありえぬ話にございます。まるで火攻めをしてほしいと敵にお願いしているかのような振る舞いにございます。」
「・・・・そうだ、あやつらを信じたのが間違いであった!」
ベネトンは戦死したサイとチョウに責任を覆い被せ、ウルザの怒りを2人に向けさせる事に成功した。ウルザはサイとチョウがしっかりと補佐をしなかった事を恨み、処罰する事にした
「よし、決めたぞ!ボーンヌ侯爵家とリキン伯爵家の屋敷と財産と領地を全て没収致せ!」
「畏まりました。」
「奴の一族も連座の上で処刑せよ!」
「御意!」
ウルザの命令の下、ボーンヌ侯爵家とリキン伯爵家は断絶し、一族関係者は1人残らず処刑された。官民問わずこの処置に恐怖を抱くと共にウルザへの不満と不審と怨恨を抱いたのである
「自分が起こした戦争なのに関係のない人まで巻き込んで。」
「結局、俺たちがやったのは全て無駄じゃねえか。」
「無理矢理、出資させられた挙句、大損だ。」
「この国も終わりだな。」
官民問わず怨嗟の声がウルザの耳にも届き、自分の悪口を言った者を取り締まるために秘密警察【ハイエナ】を組織した。【ハイエナ】を統率するのは宰相のベネトンである
「ベネトンよ、余の悪口雑言を言う輩は一人残らず取り締まれ。」
「畏まりました。」
ベネトン主導の下、秘密警察【ハイエナ】は国王ウルザに不満を抱く身分を問わず相手が貴族であっても容赦なく取り締まった。例えウルザの悪口は言っていなくてもベネトンが気に入らない相手であればこれも罪をでっち上げたのである
「もう一度、ネマール征伐を行う。ベネトン、準備せよ!」
「お待ちください!その前にネマール国にスパイを放ち、こちらに味方をするよう仕向ける方が先にございます!」
「内応か?」
「御明察にございます!」
ベネトンは二度目のネマール征伐に内心、反対であったが真っ向から意見して処刑される未来しか見えないのであえて遠回しに言った。ベネトンの考えを聞いたウルザは先の戦争で何の対策をしていなかった事を思い出し、ベネトンの言う事も一理あると考えた
「それで誰を内応するのだ?」
「ネマール国総帥のプロイア・ヴァルカンにございます。」
プロイアの名を聞いたウルザは首を傾げ、ベネトンに尋ねた
「何故、奴なのだ。奴はネマール国の忠臣といえるほどの男だ。そう簡単に裏切るわけがない。」
「普通ならそうでしょう。ですが奴の旧友が我が国におり、その者を使って説得させましょう。」
「それで誰なのだ?」
「はい、ロッキード・プレミアム侯爵です。その者をスパイとして派遣しましょう。裏切らぬよう、あの者の家族と親類縁者を牢に入れます。」
「なるほど、人質か。」
「御意にございます。」
「よし、直ちに取り掛かれ!」
「ははっ!」
ウルザの命の下、プレミアム侯爵一家とその一族は全員牢に入れられた。ロッキード・プレミアム【年齢55歳、身長180cm、色白の肌、碧眼、銀色の短髪、彫りの深い柔和な顔立ち、プレミアム侯爵家当主】はすぐさま、国王ウルザに対面を求めるとウルザは対面を許した
「畏れながら陛下、何故私の一族を牢に入れたのですか?」
「ロッキード、心配致すな。牢に入れたのは保護するためだ。」
「保護?何故、そのような事を?」
「うむ。ベネトン、説明せよ。」
「ははっ、ロッキードよ。よく聞け、お前にはネマール国にいるプロイア・ヴァルカンをこちらへ寝返るよう説得するのだ。」
ベネトンの説明にロッキードは眉を潜めつつ、突然の寝返り工作に困惑した。この時期、しかも惨敗したばかりで説得に応じるわけがないと誰の目から見ても明らかであった
「も、もし向こうが応じなければ如何致しますか?」
「その時はプロイアに泣きつけば良いではないか。家族のために裏切ってくれとな。」
自分の一族の命を屁とも思わないベネトンの発言にロッキードは腸が煮えくり返るような気分で会ったが真っ向から断れば自分もろとも殺される未来が待っているので受け入れざるを得なかった
「・・・・畏まりました。」
「うむ、吉報を待っておるぞ。」
「ほら、さっさと行け!」
「・・・・ははっ。」
ロッキードは家族を人質に取られ、嫌々ながらも任務に赴くため敵国であるネマール国へ向かうのであった




