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第六十話:絶縁状

「何?オルビア伯爵が参っただと?」


「はい。」


ジュードから知らせを聞いたアルクエイドは例の件が漏れたのか心配になった


「・・・・まさか企てが漏れたのか?」


「それはありませぬ。現に商業ギルドからは特に報告もなく、エルマンド子爵からはオルビア伯爵に漏らしていないと御報告がございました。」


「うむ(という事は藁にも縋る思いで来たってわけね。危なかったわ、アンを買い物に行かせて良かった。)」


「如何なさいますか?」


「会うだけ会うか。」


「ははっ。」


取り敢えずとっとと用事を済ませてお帰り願う事にしたアルクエイドはエドワードを客間へと入れた


「突然押しかけてしまい申し訳ございません。」


突然押しかけたのを理解してかエドワードはすぐに謝罪をした。アルクエイドは見せかけの謝罪等を意にも返さず用件を尋ねた


「それで何用で参られたのか?」


「はい、是非ともロザリオ侯爵閣下の御力をお借りしたく存じます。」


「ほお~。」


エドワードは今置かれている状況を説明した。アルクエイドは「やはりか」と内心、思いつつ聞く振りをしていた。用件を話し終えた後、エドワードはアルクエイドに商業ギルドへの口利きをしてほしいと頼み込むがアルクエイドの返答は冷たかった


「お断り致す。」


「な・・・・何故!」


「オルビア伯爵殿、飢饉が起きている地域に商団が派遣されるのは当然の事であろう。飢饉は国難にも等しく放っておけば死者が出るだけではなく食糧を求めて反乱が起きてもおかしくない。」


「お、仰る事は最もだがエルマンド子爵は商団を派遣されたと聞いたぞ!」


「エルマンド子爵領は飢饉が起きた地域と距離が近い。場合によってはエルマンド子爵領にも飛び火する可能性がある。それに比べ貴殿の御領地は飢饉とは無縁の場所、さほど困らぬではないか?」


「し、しかし、領民たちが不満を・・・・」


「商団にばかり頼っているからそうなったのではないのか、貴殿の御領地は農業や畜産業や漁業以外の物資は全て商業ギルドに依存しきっていた結果ではないか、違うか?」


アルクエイドの問いにエドワードは閉口した。アルクエイドの言う通り、商団が運んでくる物資に依存しきっていた事は言うまでもない事実であり、今回の事で顕著に表れたのである。だからといってこのまま引き下がるわけにもいかずにいたエドワードはある事を思いついた


「ロザリオ侯爵閣下、アンは元気にしていますかな?」


エドワードの口からアンの名前が出た途端、アルクエイドは益々警戒感を強め、尋ねた


「・・・・それが何か?」


「いやあ・・・・絶縁したとは申せ、私の娘である事には変わりはありません。行儀見習いとして役にたっているかどうか心配でしてな・・・・」


「・・・・何が言いたい?」


「もし御望みとあれば・・・・夜伽をしてもよろしいかと・・・・」


夜伽という言葉にアルクエイドの眼光が殺気立ち、エドワードを睨み付けた。エドワードは物凄い形相で睨み付けてくるアルクエイドに背筋がぞくっとなり、それ以上は何も言えなかった


「(くそ!虎の尾を踏んでしまったか!)」


「オルビア伯爵殿・・・・私は女性は大好きだ。女性を口説く時も抱く時もちゃんと合意を得てからやっているものでな。合意なく関係を結び、望まぬ妊娠をさせられては叶わぬからな。」


アルクエイドの発言にエドワードは鈍器で殴られたような衝撃を受けた。そうかつて自分がアンの母親にした事をそのまま言い当てられたような心地だったからだ。今すぐにも反論したかったがアルクエイドから放たれる鬼気迫る雰囲気にのまれ、何も言い出せずにいた


「オルビア伯爵殿、もう貴殿とアンは赤の他人だ。赤の他人が余所の事に口出すとは何事か・・・・無礼であろう!」


アルクエイドの一喝にエドワードは雷が落ちたような衝撃で椅子から転げ落ち、腰を抜かしてしまう。あそんなエドワードを養豚場の豚を見るような目で眺めた後、一言・・・・


「失せろ。」


鬼気迫るアルクエイドの発言にエドワードは慌てて屋敷から立ち去った。アルクエイドはジュードに命じて塩を撒くよう命じた


「くっ、いけ好かない奴め。」


アルクエイドはオルビア伯爵家に対して絶縁状を叩きつける事にした。そうかつてアルクエイドがナミリヤ伯爵家等の親戚筋の家々に対して絶縁状を送り、完全なる没落&極貧生活まで追い詰めたのである。今度はオルビア伯爵家に対して行う番であった。勿論、ガルグマク王国中に絶縁の理由「絶縁したにも関わらず娘を出汁に甘い汁を吸おうと利用した事」等も含めて発表するつもりである


「お前たちに生き地獄を味合わせてやる。」


次の日にオルビア伯爵家に対して絶縁状を叩きつけると同時にガルグマク王国王都にオルビア伯爵家との絶縁理由について公表した。絶縁状を叩きつけられたオルビア伯爵家はというとアルクエイドの怒りを買ってしまった事に誰よりも絶望感を感じていたのは他ならぬエドワードである


「(恐れていた事が起きてしまった!)」


「貴方、どうするのですか!ロザリオ侯爵閣下を敵に回して没落したお歴々がいるのですよ!」


「そんな事は分かっている!」


エドワードは何とか打開策を探そうとしたが、堰を切ったように親戚筋の家々から絶縁状を叩きつけられたのである。その中にはニカ・オルビアの実家も含まれており実家に帰ることすらままならなくなったのである


「貴方、どうしてくれるのよ!私まで実家に返れなくなったじゃないのよ!」


「五月蝿い!」


「何が五月蝿いよ!そもそも貴方があの阿婆擦れ(アンの母親)を手篭めにしなかったらこんな事にならなかったのよ!」


「何だと!」


連日のように続く両親のいがみ合いにマリとモニカは自分の部屋に入り浸るようになった。食事も自分の部屋で取る事が多くなり、外出もしなかった。アルクエイドから絶縁状を叩きつけられた後に友人たちから総スカンされ、孤立したのである


「きっとあの女がロザリオ侯爵に色目を使ったに違いないわ。」


「そうよ、出ないと私たちがこんな目に合う事もないのに!」


マリとモニカはロザリオ侯爵家に行儀見習いとして追い出したアンに対して恨みつらみを述べるようになった。外に出ずにストレス発散のために食べてばかりの生活を送ったせいか見た目はすっかり肥えてしまい、美貌も消え失せた


「「あの女さえいなければ・・・・・」」


マリとモニカは密かにアンへの復讐を企てるのであった



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