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第五十九話:混乱

【ロザリオ侯爵邸客間】 


「閣下、マリアンヌ嬢に続いて新しい行儀見習いを雇われたとか?」


「御耳の早いこと。」


ロザリオ侯爵邸にアシュリーが訪れた。アシュリーはアルクエイドがオルビア伯爵家の令嬢を行儀見習いとして雇った事は社交界でも知られるようになり真偽を確かめるために訪れたのが理由である


「やはり本当だったのですね。」


「ええ、まあオルビア伯爵家から厄介払いされた形で引き受ける事になりましたけどね。」


「厄介払いとは・・・・」


「そうですね・・・・噂をすれば。」


「失礼します。」


そこへアン・オルビア改め、アン・フレイヤが御茶と菓子を運んできた。アシュリーは早速、アンに話し掛けた


「貴方がアン・オルビア嬢ね?」


「は、はい。御初に御目にかかります。」


「アシュリー嬢、今はオルビア伯爵家とは絶縁し今はアン・フレイヤとして当家で行儀見習いをしていますよ。」


「え、それはどういう・・・・」


困惑するアシュリーにアルクエイドはアンに理由を説明するよう指示した。アンは迷いつつもアシュリーにここへ来た経緯を話し始めた。アンの母親、オルビア伯爵家での暮らし、そしてロザリオ侯爵家に行儀見習いとして来た事をありのままを説明した。経緯を聞いていたアシュリーの表情が段々と真顔になり、誰が見ても分かりくらい怒りに満ちた表情を浮かべた後、一言・・・・







「許せませんわ!!」





アシュリーは激高し勢い余って机を叩きつけた。その後、「痛い」と拳を痛めるアシュリーをアルクエイドはアンに医師を呼びよう命じた。アンはすぐに医師を連れてきた後、アシュリーの手当をした


「アシュリー嬢、怒る気持ちも分かるが怪我をしたら元も子もないですよ。」


「ご、ごめんなさい・・・・」


「も、申し訳ありません、私がお話したばかりに・・・・」


アシュリーに怪我をさせた事を悔やむアンにアシュリーは「気にしなくてもいいわ、私の不注意だったのです」とアンを気にかけたが、アンの表情は一層曇った。そんな状況を見ていられなかったアルクエイドは一旦、アンを下がらせた


「アン、ここはいいから仕事へ戻りなさい。」


「はい・・・・失礼しました。」


アンはアルクエイドとアシュリーに一礼した後、客間を出た


「まあ、そんなところですね。」


「それでオルビア伯爵家との関係は?」


「絶縁された後は音沙汰なしですね。まあ、それどころじゃないのですが・・・・」


「それどころじゃない?どういう事ですか?」


「ああ、実は・・・・」


アルクエイドは例の飢饉の事を説明した。ガルグマク王国内で起きた飢饉に対して商業ギルドは優先的にそちらへ物資を運ばねばならず、辺境にあるオルビア伯爵領への商団の派遣は無期限の停止となったのである。勿論、裏でアルクエイドが根回ししていたが、この事は伏せながら説明をした。それを聞いたアシュリーは身体を震わせながら笑いを堪えていた


「ふふふwwww、そ、そうですかwwwww」


「アシュリー嬢、流石に不謹慎ですよ。」


「も、申し訳wwwwございませんwwwww」


「(私としてもいい気味だけどね♪)」







一方、オルビア伯爵領では代官が領民たちに例の飢饉の影響で商団の派遣が無期限停止を通達したが領民たちは不満タラタラであった


「何だよ!無期限停止なんて聞いてねえぞ!」


「そうよ!何もない辺境で商団の派遣しか物資が買えないのに!」


「こんな時に領主様は何をやってるんだ!」


「鎮まれ!鎮まらんか!」


代官側も突然の商団派遣を急報を聞き、まさに寝耳の水状態であった。オルビア伯爵領の民政を預かる代官としては何とか再開するよう何度も上申書を送ったが梨の礫であった。代官や役人たちは領民たちを説得し続けたが最早、限界が来ていた


「はぁ~、何時になったら再開するんだ。」


「早く再開しないと暴動が起こるぞ!」


「伯爵閣下は何をしておられるのだ!」






その頃、エドワードはエルマンド子爵邸を訪れていた。エルマンド子爵家当主のヒルズは突然訪ねてきたエドワードに内心、何事だと思ったが客間へ通し応対する事にした


「オルビア伯爵閣下、今日は何用で参られたので?」


「エルマンド子爵殿、貴殿の領地に商団が派遣されたというのは本当か!」


エドワードから尋ねられたヒルズは戸惑いつつも正直に答えた


「え、えぇ。私は商業ギルドの伝手で特別に派遣を許されたもので・・・・」


ヒルズの口から伝手という言葉を聞いたエドワードは「その伝手とは」と噛み付かんばかりに問い詰めた。流石のヒルズもこればかりは教えるわけにもいかなかった


「そればかりは流石に教えられない。」


「金か!金ならいくらでも・・・・」


「そういう問題ではないですよ!」


ヒルズが喋らないのには理由があった。この伝手というのはアルクエイド・ロザリオに懇願して得る事ができた伝手なのである。おまけにアルクエイドはエドワード・オルビアの事が大嫌いである事を事前にヒルズに伝えており、もしエドワードに話せば商団の派遣を中止すると親切に教えてくれたので頑として喋るわけにはいかなかったのである


「こればかりは教えるわけにはいきません!どうぞお引き取りくだされ!これ以上、居座るのであれば警備隊を呼びますよ!」


頑として拒むヒルズにエドワードは項垂れるようにエルマンド子爵邸を後にした。エドワードは次なる手を考え続け、ふとある事を思い出した


「そうだ・・・・ロザリオ侯爵に頼めば。」


エドワードはアルクエイドが商売を通じて今の地位【ロザリオ侯爵家】に登り詰めた事を思い出した。エドワード自身、アルクエイドを【成金貴族】という色眼鏡で見ており、絶縁前のアン・オルビアを寄越すだけで自分は挨拶に訪れなかったくらいの偏見を抱いていた。幸いアンを行儀見習いとして受け入れている辺り、もしかしたらという思いもあった


「あの汚点(アン・オルビア)でも役に立つ事もあると言うものだ(笑)」


しかしながらエドワードは知らなかった。アルクエイドが此度の商団派遣を差し止めた黒幕である事を知らずにいたのである


「これよりロザリオ侯爵邸に参る!」


エドワードは馬車に乗り、堂々とロザリオ侯爵邸に乗り込むのであった


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