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第五十六話:愚王とその息子の終焉

「だから私はサンドラ王国第3王子だと言っているんだ!」


「ハイハイ。」


警備隊に捕らえられたジオルドは警備局の留置場の中で喚き散らしていた。警備隊はうんざりしながら適当に相槌をうちながら取り調べを行っていた


「宿舎にいる副使のサルドバ・ソルトレイク公爵を呼んできてくれ!」


「心配するな。今、確認しているところだ。」


一方、宿舎に滞在していたサルドバ・ソルトレイクはというと警備隊の最高責任者からジオルドを捕縛した事を告げるとサルドバは責任者に対し、こう告げた


「亡くなられた。」


「い、今、何と仰いましたか?」


「ジオルド殿下は急な病にて亡くなられたのだ。」


「は、はい?病?」


「そうだ、殿下は此度の事が余程、堪えられたのかその場で倒れられ、そのまま帰らぬ人となった。」


「は、はぁ~。」


「よってジオルド・サンドラ殿下と名乗る不届き者は当方とは全く関係がない故、そちらにお任せ致す。」


「わ、分かりました。」


責任者が帰ると、サルドバは深く溜め息をついた後、「国のためです」とジオルドを見捨てたのである。後にサルドバ・ソルトレイク公爵は帰還後、任務を果たせなかった責任を取り自害したという






「そ、そんな馬鹿な!」


「本人から聞いたんだ、間違いない。」


「さ、サルドバが、私を裏切るなんて・・・・」


「さてと、ジオルド殿下を名乗る偽物野郎。もう遠慮する必要が無くなった。貴様はロザリオ侯爵閣下に刃を向けたんだ。貴族に歯向かうとどうなるか偽物野郎で分かるよな?」


声色を変え、険しい表情で凄む警備隊の人間にジオルドは「無礼だぞ!」と言い返したが偽物と断定されたジオルドに警備隊は容赦はしなかった


「無礼だ?それはこっちのセリフだ、偽物野郎・・・・連れていけ!」


警備隊が続々と留置場の中へ入り、ジオルドを取り押さえた後、罪人が収容する牢屋に運ばれた


「おら、入りやがれ!」


「ぐっ!」


牢屋に入ったジオルドは見た目がおっかない先輩方が出迎えた。警備隊は牢屋にいる罪人たちにジオルドの事を紹介した


「こいつは貴族に刃を向け、更に一国の王子だと嘘をつく罪人だ。牢屋での生活についてミッチリと教えてやれ。」


「「「「「へい。」」」」」


「くそ!出せ!」


ジオルドは何度も牢屋の鉄格子を蹴ったがびくともしなかった。すると先輩方が背後からジオルドの首根っこを掴み、牢名主(ろうなぬし)の前に引き据えた


「ぐっ!何をする!」


「喧しい、新入り。」


目の前にいる顔中、傷だらけで厳つくただ者ではないオーラを放つ牢名主にジオルドは僅かに怯んだ


「ぶ、無礼だぞ!わ、私はサンドラ王国第3王子・・・・」


「喧しいわ!【グーパン】」


「ぶはっ!」


牢名主に殴り飛ばされた途端、近くにいた罪人たちがジオルドをリンチし始めた。ジオルドは顔や腹や足等を罪人たちによって殴られ、蹴られたりした


「新入りの分際で生意気だぞ!」


「このクソガキが!」


「おらっ!」


「ぐほっ、や、辞めてくれ。」


「クソガキ、ここでは牢名主である俺の命令に従え。でないと・・・・分かってるだろうな?」


罪人たちからの苛烈な洗礼にジオルドは早々に根を上げた。牢名主からはここのルールに従わないとどうなるかを言葉と体で教えた。ジオルドは凶悪な罪人たちの暴力にすっかり心が折れてしまい、ガクガクと震えていた。他の罪人たち連れられ、案内されたのは集団用の便器(1つ)だった


「ここではトイレは1つ、新入りはこの便器を掃除するのがここのルールだ。勿論、掃除する時が手でやるんだ、いいな!」


「な、何故、私がそんな事・・・・」


「いいからやれや!」


ジオルドの腕を掴み、強制的に便器を手で洗う事になった。ジオルドは明らかに屈辱にまみれた顔をしていた。第3王子である自分が奴隷同然の扱いを受けねばならないのかと自問自答をし続けた


「(私はサンドラ王国第3王子だ!罪人なんかじゃない!)」


「おら!丁寧にやれや!【グーパン】」


「ぐはっ!」


罪人の1人に殴り飛ばされ再びリンチを受ける嵌めになったジオルドはひたすら耐えるしかなかった。どれくらい時間が経ったか分からない頃、警備隊の人間がジオルドにある事を教えた


「わ、私が・・・・死んだ・・・・だと。」


「あぁ、サンドラ王国で盛大な葬儀が行われたらしいぜ。まぁ、偽物野郎には全く縁のない話だけどな(笑)」


「ち、父上が・・・・」


「残念だったな(笑)」


警備隊の人間が去った辺りからジオルドの心は完全に死に生きる屍と化したのである。警備隊をはじめ、牢名主や他の罪人たちもそんなジオルドを気味悪がり、近寄ろうとしなくなった。そして皆が寝静まったある日、ジオルドは就寝中に「(う、苦しい)」と胸を押さえた


「(だ、誰かた、助け・・・・ぐふ)」


ジオルドは心臓麻痺を起こし、誰にも知られる事なく1人寂しくこの世を去るのであった





一方、ジオルドの故郷であるサンドラ王国では謀反が発生していた。謀反を起こしたのはサンドラ王国第1王子にして王太子であるザクルド・サンドラ【年齢25歳、身長182cm、褐色肌、漆黒の短髪、碧眼、気品漂う彫りの深い端整で聡明な顔立ち、豪胆で思慮深く賢明な人柄、ジオルドの異母兄】と第2王子のゼケルド・サンドラ【年齢23歳、身長181cm、褐色肌、ローポニーテール、碧眼、気品漂う彫りの深い端整でキリッとした顔立ち、知勇に優れ温厚な人柄、ザクルドの同母弟、ジオルドの異母兄】である。その兄弟がサンドラ王国国王であり父でもあるザオリク・サンドラ【年齢52歳、身長178cm、褐色肌、肩まで伸びた漆黒の黒髪、碧眼、気品漂う彫りの深い神経質な顔立ち、ジオルドを溺愛する親馬鹿な暗君】に刃を向けていた


「ザクルド、ゼケルド、これは何の真似だ!」


「畏れながら父上、貴方には王位を明け渡していただく。」


「し、正気か、お前たち!実の親に譲位を迫るなどと!」


「兄上も私も家臣、国民たちも皆、不満が爆発しております!父上が国王である限り、誰1人安心して暮らせないと!」


「父上、貴方はジオルドを殊の外、大切にしておられた。亡き寵妃から生まれたジオルドに対して誰の目から見ても分かるほど溺愛しておりました。それをいいことにジオルドは我儘勝手に振る舞い、挙げ句の果てには私を廃嫡し国王の座まで譲ろうとする始末です。」


「な、何が悪いのだ!息子に王位を譲りたいと思うのは親心だろう!」


「その親心のせいで貴方はこうして刃を突き付けられているのです。これ以上、粘るというのなら、我等とて容赦しませんぞ。」


「黙れ!お前たちに王位を譲るくらいなら死ぬまで留まるわ!」


「・・・・やむを得ないな。」


「構え!」


ザケルドが命じた途端、弓隊がザオリクに向けた


「ま、待て!私を殺したらお前たちは謀反人だぞ!親殺しの汚名を着ていいのか!」


「それも覚悟の上です。父上、どうか我等の行く末をあの世にて御覧くださいませ。」


「ザクルド、ゼケルド!」


「父上、おさらばにございます・・・・放てええええ!」


ゼケルドが号令を出した瞬間、一斉に矢が放たれ、矢はザオリクの身体中に貫通した。ザオリクは額に矢が刺さり、意識が朦朧する中で愛息であるジオルドの事を思い出した


「(ジオルド・・・・)」


ザオリクはそのまま絶命しクーデターは成ったのである。父の最期を間近で見たザクルドとゼケルドは涙を流しながら、父の遺骸を丁重に葬ったのである。そしてザクルドは正式にサンドラ王国の国王に就任し、ジオルドは正式に王籍から除名され墓も取り壊された事でジオルドに関するあらゆる物がサンドラ王国から消えてなくなり、人々から忘れ去られるのであった


「ここからですね、兄上。」


「あぁ、まずはガルグマク王国との国交を樹立せねばな。」


この後、ザクルドが正式に国王に就任してから数年の歳月が経ちガルグマク王国と正式に同盟を結んだのは先の話である


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